Xperia arc SO-01C 石野 純也編

 振り返ってみると、2011年は、スマートフォンシフトが本格的に進んだ1年だった。国内さまざまななメーカーが進めてきた準備が、ようやく花開いたとも言えるだろう。おサイフケータイ、赤外線、ワンセグなどの“三種の神器”は昨年時点でスマートフォンに移植されていたが、コンテンツや決済などのプラットフォームまで含めて、トータルでフィーチャーフォンからの移行環境が整ったのも、今年のトピックだ。

 特に、Androidの躍進は目覚しかった。国内メーカーが本格参入したこともあり、バリエーションは急速に拡大。街中で、Androidスマートフォンを目にする機会も以前よりはるかに多くなった。このような状況の中、「俺のケータイ of the Year」の1台を選定するのは非常に難しかったが、今年は「Xperia arc SO-01C」をイチオシとしたい。理由は以下のとおりである。

 Xperia arcは、ソニー・エリクソンの反転攻勢を支えた2011年モデルの“ベース”とも言える1台。ここにおサイフケータイ、ワンセグなどの三種の神器を追加したのが「Xperia acro SO-02C/IS11S」、よりサイズをコンパクトにしたのが「Xperia ray SO-03C」、ゲーム用のキーパッドを搭載したのが「Xperia PLAY SO-01D」というわけだ。Xperiaブランドこそ冠していないが、イー・モバイルから発売された「Sony Ericsson mini S51SE」も、Xperia arcの派生モデルと言えるだろう。海外では、「Xperia neo」や「Xperia active」「Xperia mini pro」なども投入された。

 矢継ぎ早に端末を開発、発売してきた結果として、同社の売上高は、8割以上がAndroidスマートフォンからのものになった。2月のMobile World CongressでCEOのバート・ノルドベリ氏が掲げた「Androidの世界でリーダーになる」という目標はいまだ達成できていないものの、大きな前進をした1年であったことは確かだ。

 この試みが上手く機能したのは、Xperia arcの完成度が高かったからにほかならない。まず、Android 2.3への対応がとにかく早かった。メジャーなメーカーが軒並みAndroid 2.2の端末を出展していた1月のCESに、Android 2.3を搭載したXperia arcをぶつけてきたことからも、ソニー・エリクソンの並々ならぬ気合いや期待感がうかがえる。中身の作りも初代「Xperia SO-01B」の頃より素直になり、Androidの良さを上手く引き出している印象を受けた。もちろん、アニメーションやUIのデザインなど、細かな点でのソニー・エリクソンらしさは一切失われていない。

 Xperia acroやXperia rayにも受け継がれる、「Exmor R for mobile」の実力にも感心した。当時は「iPhone 4」も裏面照射型CMOSを採用していたが、スマートフォンの中で唯一その画質を超えたと思ったことを、今でも覚えている。その上で、デザインが美しい。背面は中央に向かって弧を描いており、手にしっかりフィットする。10.9mm(最薄部8.7mm)というスペック以上に薄く見えるのは、このカーブのお陰だ。グラデーションを駆使した塗装も、この端末のコンセプトに合致していた。

 「俺のケータイ of the Year」の原稿を執筆するにあたり、改めてXperia arcを取り出し使ってみたが、ここまで述べてきたような魅力はいまだ色あせていないように感じる。冬春商戦を迎えた今でも、“現役”と呼べるだろう。デュアルコアCPU/1GBメモリ搭載端末と比べると、重いサイトのスクロールなどがややもたつく印象も受けるが、ストレスを感じるほどではない。電池の持ちも、かなりいい部類に入る。

 一言でまとめてしまうと、バランスがいい端末――これが、Xperia arcから受ける印象だ。2011年に発売されたXperiaシリーズの使い勝手がどれもよかったのは、この機種があってこそ。その意味で、「俺のケータイ of the Year」に推す価値は十分あると思う。個人的には、グローバル機のXperia arcをそのままおサイフケータイ対応にしてほしかったが、楽しみは来年以降に残しておこう。

 既報のとおり、ソニーはソニー・エリクソンの株式を100%取得し、完全子会社化する予定だ。ソニー・エリクソンの端末が、グループの資産をより活かせるような体制になることも期待できる。ここにXperia arcで培ったノウハウを合わせ、ぜひ今後も魅力的なスマートフォンを作り続けてほしい。

 

2011/12/27/ 17:30