iPhone駆け込み寺
「Apple Watch Series 7」は買い? これまでと何が違う?
2021年10月19日 00:00
9月にiPhone 13シリーズと同時発表されたApple Watch Series 7がようやく発売された。
筆者は予約開始直後にオーダーし、オーソドックスなモデルを選んだおかげか、発売日に無事届いたので、これまでのモデルと比較しての違いを中心としたファーストインプレッションレビューをお届けする。
さらに大きくなったディスプレイの存在感がハンパない
Apple Watch Series 7は同Series 6に比べ、サイズが少しだけ大きくなっている。サイズの表記としては、小型モデルは40mmから41mmに、大型モデルは44mmから45mmになった。
Apple Watchにおけるサイズの表記は、「本体の縦の長さ」に一致する。これまで小型モデルでは38mm - 40mm - 41mm、大型モデルでは42mm - 44mm - 45mmと大きくなってきた。
横幅も少しずつ大きくなっているが、実測で33.3mm - 34.5mm - 34.8mmと小さな差しかなく(筆者私物で実測)、バンドは共通のものが使われている。
その一方で、狭額縁化によりディスプレイを拡大してきた。今回のモデルは、本体の長さとしては2%強の拡大だが、アップルでは「Apple Watch SEより約20%大きなディスプレイ」としている。
額縁の幅のアップル公称値は、38/42mmモデルが4.5mm、40/44mmモデルが3mm、そして今回の41/45mmモデルが1.7mmと、かなり細くなった。
確かに使ってみると、ディスプレイが大きくなっていることがわかる。いや正直に言おう。今回のSeries 7、筆者は「ディスプレイがちょっと大きくなったくらいでセンサーもプロセッサーも進化してないし、仕事だけど買うのもなぁ」と思っていたが、ペアリングを終えて装着した瞬間に「あ、違う」と考えをあらためた。
Series 7のディスプレイは、前面パネルのエッジの曲面が始まるギリギリのところまで広がっている。
しかしそれは正面から見たときの話で、斜めから見ると、エッジの曲面の中にディスプレイがあるように見える。
とくにデフォルト設定のままだと、ディスプレイの端までを使う文字盤が設定されているため、Series 6に慣れているとこの文字盤が「でかっ!」と感じられる。
Series 7とSeries 6で同じデザインの文字盤を表示すると、そこまでの差は感じないのだが、しかしそれでも大きくなったことはわかる。もちろん、文字盤表示時だけでなく、ほかの操作でもこのディスプレイサイズが生きる。
通知確認やパスコード入力も楽だ。表示できる情報量を増やすこともできるし、文字のサイズを大きくしやすくもなる。どちらもありがたいが、とくに後者はややローガンな筆者(44歳児)にはありがたい。
画面サイズ拡大はほんの2割だし、そもそもが腕時計としての限られた大きさではあるのだが、しかし前面パネルの隅まで情報が表示されているのを見るだけで、情報端末としての機能性が大幅に向上したな、と感じてしまう。
バンドは初代から変わらず互換性あり。それどころか多分同じやで安心してな!
本体の幅はあまり変わっていないので、バンドは従来製品と互換性がある。なお小型モデルと大型モデルでは互換性はない。
筆者の買った41mmモデル付属のバンドには「41mm」とプリントされているが、40mmや38mmのバンドと形状の差は見られない。なんなら同じ金型で作っていそうである。
Apple Watchはバンドの付け替えが簡単にできるのが特徴だ。根元にあるロックを爪などで軽く押し、横にスライドさせるだけで取れる。このスライド、そこそこ硬いので、普通に装着してて取れることはまずないが、毎朝晩に付け替えるくらいの頻度でも苦に感じるレベルではない。
バンド製品は純正だけでもかなりの種類がある。シリコンやナイロンのものはカラバリが豊富なので複数揃えたくなるし、数万円する金属やレザーのバンドもフォーマルなシーンに備えて少なくとも1本は持っておきたい。
バンドだけに数万円かよ、と思ってしまうが、Apple Watchのバンドは初代からずっと共通なので、Apple Watch自体を買い替えても、バンドへの投資が無駄にならない。これ、けっこう重要なポイントなのだ。Apple Watchユーザーとしては、今後もバンドの互換性だけは維持していって欲しいものである。
アルミニウムの黒系カラー「ミッドナイト」は従来から変更あり
個人的に黒系のカラーのApple Watchが好きだ。というのも、Apple Watchの画面表示は基本的に背景が黒で、ケースまで黒だと「表示が浮き上がっている」ように見えるからだ。
そんなわけでSeries 6ではアルミニウムで黒系の「スペースグレイ」を買っていたが、Series 7にはスペースグレイはないので、同じく黒系の「ミッドナイト」を選んだ。
名称がただ変わったのではなく、色味がきちんと変更された。写真ではやや伝わりにくいのだが「ミッドナイト」の方がより濃い黒だ。この辺りは好み次第だとも思うが、前面パネルとケースとの「黒さ」の差が少なくなっているので、より一体感が増している。
個人的にはこの仕上げは好印象だ。ただし黒系のApple Watch、カラフルなバンドを合わせにくいかもしれないので、バンドで遊びたいならばシルバー系の「スターライト」なんかでも良いかもしれない。
Series 6からの中身の進化は小さい?
Apple Watch Series 7が搭載するメインのチップは「S7」。
「S5」を搭載するApple Watch SEに比べて最大20%高速とされているが、Series 6も発表時、前世代(S5搭載のSeries 5)と比べて最大20%高速としていた。実のところ、Series 6とSeries 7では、メインのチップに大きな性能差はない、と推測できる。
ここは少しだけ気になるポイントだ。
将来、watchOSのアップデートでApple Watch Series 6が対応機種から外れることがあれば、同時にSeries 7も外れるのでは、と思ってしまう。ただ、最近のiOS/iPadOS/watchOSのサポート対象は広がる傾向があり、今秋のアップデートでも対応機種は変わらなかった。5年は何の問題もなく使える可能性が高い。5年も使えば、バッテリーの劣化もあり、買い替えのちょうど良いタイミングとなるだろう。
メインのチップ以外、ワイヤレスチップの「W3」、超広帯域チップの「U1」もSeries 6とSeries 7は同じだ。あまり使う機会はないがストレージ容量が32GBというのも変わっていない(ちなみにSeries 5とSEも32GB)。
搭載されるセンサー類も変わっていない。血中酸素ウェルネスセンサー、電気心拍センサー、第3世代の光学式心拍センサーを搭載する。ちなみにこの3つはSeries 6から搭載された、比較的新しい世代のものだ。
センサー類は数世代ごとに進化するので、前世代で新たに搭載されたセンサーが引き続き搭載されるのは、いつも通りの進化ペースとも言える。
地味だが嬉しい防塵仕様や強化全面パネル、充電時間の高速化
大きさと「S7」チップ以外に何がSeries 6から変わったかというと、スペック上では「IP6X等級の防塵性能」や、「Apple Watch史上、最強の前面クリスタルがもたらす耐亀裂性能」、「より高速な充電時間」が変わっている。
防塵仕様については、筆者も今回スペック表を改めて確認して気がつき、「今まで対応してなかったんかい」と思ったポイントでもある。Apple Watchにはマイクやスピーカーの開口部があるので、その辺りが強化されたのだろう。ボタン類と逆側にあるスピーカー穴の形状がちょっと変わっている。
耐亀裂性能は、「前面クリスタル」とされているので、サファイアクリスタルを採用するステンレススチールとチタニウムケースのモデルのみの特徴のようにも読み取れるが、どうやら前面パネルが最大で50%厚くなりつつ、形状も変更して強度を高めたようなので、アルミニウムケースのIon-X前面ガラスも強度が上がってる可能性がある。
ただどちらにせよ、可能な限り強い衝撃は与えないようにするべきなことには変わりがない。そもそも腕時計が破損するような場面となると、腕も怪我をするような場面であり、そんな使い方はどちらにせよ避けるべきだろう。ただし、一緒に金属製ブレスレットなどを着用していると、細かい傷はつく。これは腕時計の宿命なので、避けようはないところかもしれないが、金属製ブレスレットと一緒に着用するのは避けたほうがいいかもしれない。
充電速度の向上は、素直にありがたい。Apple Watch、就寝中も睡眠トラッキングのために着用したいデバイスなのだが、就寝中に充電しないとなると、充電するタイミングがない。しかし充電速度が十分に早ければ、ちょっと長風呂の間に1日分を充電、くらいが可能になる。
人によっては起床時に充電100%であって欲しいと思うだろう。となれば就寝中に充電したいところだが、たとえば筆者は前モデルのSeries 6は今回は売却せず、睡眠トラッキングに使う予定だ。予備のApple Watchがあると、充電ミスなどにも備えることができる。Apple Watchの買い替えの際は、高く売れるうちに売ってしまうのも良いが、1本残しておくと便利な面がある。
既存Apple Watchのユーザーは買い替えるべき?
今回のApple Watch Series 7、プロセッサーやセンサーの進化は小さいものの、ディスプレイサイズが大きくなった、というのが最大のポイントだ。
既存のApple WatchユーザーがSeries 7に買い替えるべきか。
まず昨年モデルのSeries 6からだと、買い替えにはまだ早いかな、と思う。
Series 5からも、まだ買い替えないでもいいかな、と思うものの、Series 6から搭載されている血中酸素飽和度センサーに興味があるなら、買い替えてもいいかもしれない。
Sereis 4からSereis 7に買い替えると、ディスプレイの常時点灯&大型化のインパクトが大きく、買い替えはおすすめだ。
Series 3ユーザーとっては、画面サイズが2段階も一気に大きくなるので、これは買い替え推奨である。Series 2以前のモデルは、もうwatchOSのサポートも終わっており、早めに買い替えよう。
初Apple WatchとしてSeries 7はどう?
いまApple Watchを持っていない人にはどうかというと、Series 7が選択肢の筆頭とはならない。というのも、エントリー向けにはApple Watch SEもあるからだ。
Apple Watchは使ってみないとその魅力が分かりにくデバイスだ。
何ができるかというと、たとえば時刻や通知、予定、天気などの確認、Apple Payでの支払い、健康管理、タイマーといった簡単なアプリの利用などで、やれることはそんなに多くもないし複雑なこともできない。
Apple Watchに慣れてしまうと、これらのことにいちいちiPhoneを取り出すのが時代遅れに感じられるようになる。
やれることはそんなに多くもないし複雑なこともできないが、手首に常時装着されているからこその利便性がある。
またApple Watchがあると、マスクを着用したまま、Face ID搭載iPhoneのロック解除ができるようになるので、このご時世では必携アイテムとも言える。
しかしApple Watchは、生活スタイルに合わない人にはなかなかマッチしない面もある。買ったけど使わなくなった、という話もよく耳にする。
なので初めてのApple WatchにはSeries 7(4万8800円~)ではなく、まずは安価なSE(3万2800円~)を選び、それでApple Watchが自分の利用スタイルにハマるかどうかを試す、という流れでも良いと思う。
一方、初めてのApple Watchに最安価モデルのSeries 3(2万2800円~)はおすすめしない。Series 3は世代として古いので、watchOSの対象外になる時期がそう遠くなさそうだ。また、今となっては、画面が小さい。
もちろん、いきなり初Apple WatchにSeries 7を選んでも良い。やはり画面の大型化と常時表示は魅力だ。
また、現行モデルでステンレススチールとチタニウムはSeries 7しかないので、そちらのデザインに惚れてしまったら、かなり高価ではあるが、Series 7を検討するべきだ。
なにしろ腕に巻かないと意味のないデバイスである、デザインは、下手な新機能よりもよほど重要な要素だ。
身も蓋もないことをいえば、Apple Watchはやれることがそんなに多くはないし、複雑なこともできない。かといって初心者がいきなり最新ハイエンドを選んでも良い。「どのモデルを買うべきか」という考え方としては純粋にコスト面が挙げられる。Apple Watchが生活スタイルに馴染んでしまえば、5万円という価格は安く感じる人もいるだろう。
まだ使ったことのない人も、興味を引かれたら1つ買ってみて、スマホを初めて手にしたときに近い、新しい世界がひらけていく感覚を味わってみてはいかがだろうか。