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使えるアプリレビュー

使えるアプリレビュー

いつでもどこでもアクセスできる「マイポケット」

大事なデータをなんとかして守りたい……

自分ではどうすることもできなくなってしまったハードディスク

 これまでパソコンを使ってきて、ハードディスクのクラッシュはつきものだと学んだ。その瞬間は、ある日突然やってくる。安心のつもりで導入したNASも、突然アクセスできなくなったことが何度もあった。バックアップはもちろん、パソコンのハードディスクに置ききれないファイルも保存していたが、一瞬にしてすべてを失った。一度に失うデータ量は、ハードディスクの容量に比例して増えていく。そうして、これまでどれだけのデータを失ってきただろうか。

 特に、近年ではデジタル一眼やスマートフォンで写真撮影する機会が増え、気軽にシャッターが切れる分、写真や動画データがものすごい勢いで溜まっていく。また、仕事では、資料のほとんどがデジタル化されてきており、メールやクラウドサービス経由で、データを受け取ることがほとんどだ。こうして書いている原稿も、テキストファイルであり、画像データであり、もはやデータ保存なくして語れない状態。これが、ある日突然、ディスククラッシュやシステムクラッシュで消えてしまうのである。

 想い出の写真も、大事な資料も、データが消失したら最後だ。残せるかどうかは自分次第となってくる。それゆえ、バックアップが大事なのは十分知っている。しかし、使っているハードディスクと同じサイズ、もしくはそれ以上のハードディスクを用意し、貴重なコンセントを埋めてしまうのがいやなのだ。

 前にバックアップしたのはいつだろうか? ちゃんとバックアップできているだろうか? バックアップ先が一杯になってしまったらどうしよう? バックアップ先のハードディスクだって壊れるよね? 安心してパソコンの中のデータを消したら、バックアップ先が壊れてたなんてことはない? そしたらまた買うの? 前のはどうするの? そんな心配が渦を巻いていく。

そして選んだ「クラウドストレージサービス」

 自力では二度とアクセスできない、裸のハードディスクが溜まっていくうちに、突発的なハードディスクの購入などは考えずにいたい、お金を払ってでも管理はプロに任せたいと思うようになり、保存先に「クラウド」を選ぶようになっていた。ハードウェアにお金を払うだけなら安く済ませられるが、いざというとき、自力で対処できなければ意味ない。その点、外部サービスを活用すれば、バックアップの心配はほぼ解消され、急に容量不足になっても、お金さえ払えば即増量できるというメリットがある。翌日配達よりも早いわけである。

 何より、最近のクラウドストレージサービスは、パソコンのみならず、スマートフォンやタブレットといったモバイル端末からでも容易にアクセスできる、マルチデバイス対応だからありがたい。パソコンから資料を保存しておけば、外出先で参照したり、必要なときにすぐダウンロードできるので、急に必要になっても慌てなくて済む。

 もちろん、モバイル端末からのアップロードも可能だ。最近では、撮影した写真を自動アップロードする機能が標準的になってきている。これなら、万が一端末にトラブルが発生して、交換や初期化の憂き目にあっても、貴重な写真の多くは救える可能性が高い。守られ、使えて、なおかつ設定はユーザー側で気にしなくていいというのが、クラウドストレージサービスのメリットだと言える。

「マイポケット」なら、64GBが月額315円

マイポケット

 最近では、2~5GBまでは無料、それ以上は有料というサービスが多く、どうしても無料に目がいくかもしれない。しかし、しっかり活用するなら、やはり有料がおすすめ。海外勢のサービスが有名だが、実は機能やコストパフォーマンスで優れているのが、NTTコミュニケーションズの「マイポケット」なのだ。というわけで、最近使い始めた「マイポケット」の特徴やメリットなどについてお伝えしてみたい。

 現在、基本プランは1IDにつき、月額315円で32GB、増量プランが月額1039円で128GB利用できる。実は6月22日より、いずれの容量も倍に増量される予定で、64GBが月額315円、256GBが1039円で利用できるようになる。一度にアップロードできるサイズは現在1GBだが、こちらも2GBに増やされるという。

サービス名容量別の主な料金
マイポケット64GB:315円/月
256GB:1039円/月
auスマートパス50GB:390円/月
※拡張:10GB毎に105円
Dropbox2GB:無料
100GB:$9.99(約950円)/月
200GB:$19.99(約1890円)/月
500GB:$49.99(約4750円)/月
Evernote450円/月
※アップロード毎月1GBまで
ドコモクラウド5GB:無料
15GB:105円/月
30GB:262.5円/月
55GB:420円/月

 パソコンを利用するなら、Webブラウザで「http://cocoa.ntt.com/」にアクセスする。データは「ファイル」と「フォト」、および「グループ」に分類されており、「ファイル」には「ストックフォルダ」、「フォト」には「ストックアルバムというフォルダが用意されているので、特に分類を気にせずともすぐ使い始められる。(分類を気にする必要がない理由については後述)

 扱えるファイルタイプに制限はなく、写真、動画、文書ファイル、その他のファイル、なんでも保存できる。ドラッグ&ドロップによるアップロード、ダウンロード、閲覧、削除、移動、コピー、バックアップ、同期、送信、共有・公開が可能で、写真のプリントサービスとも連携しており、「マイポケット」に保存した写真をプリント注文できるほか、全国のセブン-イレブンの店舗に設置されたマルチコピー機から、24時間いつでもプリントできる。

「ファイル」を開くと、ファイル操作用のインターフェイスが現れる
「フォト」を開くと、写真の分類に適したインターフェイスが現れ、さまざまな条件で絞り込めるようになっている

 自動バックアップや同期が可能な専用のPCツールも用意されており、Windows 8/7/Vista/XPまたはMac OS V10.5以降で利用できる。このツールを使うと、パソコン内の任意のフォルダを10階層まで、指定した時刻に自動バップアップしてくれるからありがたい。

 バックアップ方法は、「追加」と「上書き」のいずれかが指定でき、PCデータの削除の有無も伴った「同期」指定もできる。できるだけパソコンと同じ状態を保ちたい、「マイポケット」にどんどん保存して、パソコン側でうっかり紛失したファイルを救い出したいなど、ニーズに合わせて設定できるのだ。

Windows用のPCツール。日時など細かい指定も可能
すぐバックアップすることができる
Mac OS用のPCツールもある

アプリを使うと、ファイルが探しやすい!

 スマートフォン用には、iOS用の統合アプリ「マイポケット」、Android用の統合アプリとして「マイポケット」が提供されているほか、Androidタブレット用としても、タブレット専用の「マイポケット(タブレット)」がダウンロードできる。

 統合アプリというだけあって、「マイポケット」の機能を十分に活用できる。他にもフォトやムービー、アドレス帳など、扱うファイル別に分けられたアプリも提供されているが、統合アプリがあれば、膨大なファイルを、常に手のひらの中に収めた状態を作り出せるからだ。

iPhone用の統合アプリ「マイポケット」
Android端末用の統合アプリ「マイポケット」
iPad用の「マイポケット」。メニューが消せるため、画面サイズをフルに生かした表示が可能
Androidタブレット用の統合アプリ「マイポケット(タブレット)」。ファイルを確認しながら操作できるので使いやすい

 統合アプリの主なメニューは、保存されているファイルを、タグ、作成日、更新場所ごとに分類して表示する「ファイル一覧」、目的のファイルを探せる「検索」、グループや友達の間でディスクや写真などのファイルを簡単に共有できる「共有・公開」、写真をさまざまな形で分類して楽しめる「フォト」、動画だけを絞り込んで表示できる「ムービー」、写真やURL付きのメモが保存できる「メモ」の6つ。このほか、ギャラリー(iOSではカメラロール)またはアルバム、連絡先のバックアップやダウンロード、プリンター・スキャナーの設定もサポートしている。

 感心したのは、単にアップロードされたフォルダ構造をそのまま表示するのではなく、目的のファイルを探しやすい工夫が凝らされている点だ。基本はもちろん検索だが、いろんな角度から絞り込みがしやすくなっているのである。

 たとえば「検索」で「日付」を選択すると、すべてのファイルを対象に、日付別にカレンダー表示できる。なんらかのログなど、作成日がキーになるものは非常に探しやすい。写真のサムネイルもカレンダーに表示されるので、過去が振り返りやすく、見ていて楽しめる。「週間表示」してみると保存件数も分かるので、アクティブだった日は一目瞭然なのだ。写真など、位置情報を持ったファイルなら、「場所」を選択すれば地図上ですぐ見つけられる。異なる端末で撮影した写真で、保存しているフォルダが違っても、位置情報さえあれば一覧で確認できるというわけである。

「検索」のメニュー。フォルダのツリー構造に縛られていないのが分かる
「日付」を選択すると、いつどんなファイルを保存したか、どんな写真を撮影したかなどが一目瞭然に。フォトダイアリーにもなる
「場所」を選ぶと、ファイルを作成した場所がわかる。特に写真で使える

 「検索」以外でも、メニューの「フォト」や「ムービー」にもこれらの絞り込み機能が用意されており、「タグ」「撮影日」「撮影場所」という名称で利用できる。特に「フォト」の「タグ」は必見だ。現在はAndroid端末に限った機能のようだが、「風景」「料理」「人・ペット」の3つのカテゴリが用意されており、選択するだけで自動付与されたタグで絞り込めるのである。中には黒い背景の画面キャプチャデータが「夜景」と判断されるなど、間違っているものも多数含まれるが、なかなかユニーク。花や料理はかなりの確率で識別されているようなので、活用してみる価値はありそうだ。

「フォト」のメニュー
Android版で、「フォト」の「タグ」を選択。すでにタグが付与されたもの以外でも、画面下のアイコンから「風景」「料理」「人・ペット」で絞り込める
「風景」の詳細メニュー
「風景」の「お花」を選んでみた。確かに花の比率は高そうだ
「料理」を選んでみた。こちらも料理の比率は高そうである

 ビジネスパーソンなら、「検索」の中の「ファイルの種類」を覚えておきたい。文書、表、プレゼンテーション、データベース、実行形式、圧縮、TEXT、PDF、画像、動画、HTML、AUDIO、その他の13項目があらかじめ用意されており、ユーザーが拡張子を意識しなくても、1タップで絞り込めるようになっているからである。

「検索」の「ファイルの種類」のメニュー
「表」を選ぶと、多数のExcelファイルがリストアップされた

 パソコンからバックアップしたなら、さまざまな形式のファイルを含むだろう。日頃ほとんど分類せず保存しているケースも多いはずだ。その中から、画面サイズの限られたモバイル端末で、ファイルを探すのは大変である。しかし、アプリのおかげで、スマートフォンやタブレットからサクサクとアクセスできるようになる。パソコンの中で管理するより便利といえるかもしれない。Office文書などは、対応アプリがあれば表示できるので、書類の持ち運びの苦労も軽減されるに違いない。

写真の自動アップロードはぜひおすすめ!

 「マイポケット」のアプリでぜひ試したい機能といえば、やはり写真の自動アップロードだろう。執筆時点ではAndroid用に限られているようだが、スマートフォンやタブレットで写真を撮影すると、「フォト」の「その他のアルバム」に自動的に保存されるのである。頻繁に撮影する方でも、無線LAN接続時のみ送信する設定にしておけば、外出時には負担がかかりにくい。確認してから送信する設定もあるので、うまく撮れたものだけ保存するという使い方もできる。

「カメラ撮影時の設定」で自動アップロードの設定ができる。アップロードするかどうか都度確認したいときは「撮影後に詳細を確認する」を有効に
自動アップロードにおける確認画面。ここで撮影場所やタグなどの設定ができる

 自動アップロードは、時間や手間の削減にも効果的だ。パソコンで「マイポケット」にアクセスしたときには、すでにモバイル端末の写真が取り込まれている状態なので、写真をコピーする手間をかけずに、写真をすぐ楽しむことができるからだ。

 パソコンからアクセスする「マイポケット」の「フォト」には、タグ、シーン、撮影日、撮影場所、カメラのメーカー名や機種名、ファイル名で絞り込める機能がある。おかげで、どんなカメラの写真が集まってもすぐ分類でき、必要に応じて、そのままプリントサービスに出したり、「共有・公開」機能を使って、友達や家族に見せられる。写真の取り込みというのは、ちょっとしたことだが、量が増えると案外面倒に思えてしまうもの。それが解消されるので、より楽しみやすくなるのである。

 なお、ギャラリーのバックアップとの併用はできないので、先にギャラリー全体をバックアップしてから、設定を自動アップロードに変更するといいだろう。iOS版はアプリ起動時のほか、手動でもバックアップできる。

自動アップロードされた写真は、「ファイル」の「アップロードファイル」に加えて、「フォト」の「その他のアルバム」にも保存される

「メモ」でライフログはいかが?

 地味な存在がらも、工夫次第でさまざまな活用方法が考えられそうなのが「メモ」だ。メモなんて……と侮るなかれ。写真やURL付きで、1日に何件でも保存できるので、思いついたことだけでなく、出来事を保存するのにちょうどいいのだ。

 単純に写真日記として使うこともできるし、今日会った人と一緒に撮った写真があれば、写真とともに相手の名前をメモしておく。これだけで、いつ誰にあったかが記録でき、いつでも見られるようになる。ダイエット中で、何を食べたか記録をしたいなら、メモの写真からもカメラを起動できるので、食事前にサッと写真を撮るだけで保存完了。いただいたもの、送ったもの、買い物のレシート、なんでもいい。写真とともに「メモ」に残せば、メモ用のカレンダーで確認できるので、振り返りやすくなるのだ。

 スマートフォンで日記を書きたいけれど、アプリ単体では消える可能性があって心配だし、他から見られないと困る。かといって、よく分からないサービスにプライベートのデータを預けるのも不安……そんな風に思っている方でも、安心して始められるに違いない。ブログサービス「ブログ人」を使っている方なら、パソコンからブログに公開できるので、下書きやネタのメモとしても活用できる。

ちょっとした記録に便利な「メモ」
思いついたときに保存すれば、ライフログにも
メモの作成画面。タイトルを入力するだけでもOK

「マイポケット」には安心感以上のメリットがあった

 大事なデータのバックアップ先という、いわば外部ハードディスク目的で使い始めた「マイポケット」だが、それ以上の機能を持っており、使いやすさと安心感の両立が可能なサービスだと感じられた。適当に放り込んでも、アプリを使えば整理された状態で見られるので、分類を気にせず保存できるところもいい。なんだかんだとバックアップしてみたところ、すでに16GBを超えてしまった。さらに保存すれば、あっという間に32GBに到達するだろう。しかし、22日から倍の64GBになるというからうれしい話だ。

パソコン、スマートフォン、タブレットからそれぞれバックアップしたところ、「ファイル」フォルダ内に端末ごとのフォルダが作成されていた

 特に最近、スマートフォンやタブレットを使い始めたという方には「マイポケット」おすすめしたい。まさかの事態に備えられるのはもちろんだが、パソコンから保存した資料を端末から閲覧したり、スマートフォンで撮った写真を、すぐにパソコンや別のタブレットで見られるというだけでも、何をしていいのか分からないという漠然とした不安から解放され、より実用的な活用方法を見いだしやすいからだ。

 唯一残念なのは、パソコンからのファイルアップロードで、フォルダが指定できないことだ。すでにフォルダに分類されている資料を保存したいとき、いちいちフォルダを作成しなくてはならない。PCツールを使って、手動バックアップとしてフォルダを指定すればアップロードできるが、ドラッグ&ドロップのほうがはるかに効率的だと感じる。このあたりはぜひ検討していただきたい。

 今年は「マイポケット」のサービス開始10周年だそうだ。そこで、2013年6月26日から、今話題のアニメ「進撃の巨人」とタイアップした「マイポケット10周年キャンペーン第二弾 進撃のマイポケット」を開始するという。この機会にチェックしてみてはいかがだろうか。

すずまり