レビュー
小型・軽量のWiMAXモバイルルーター「Aterm WM3800R」
小型・軽量のWiMAXモバイルルーター「Aterm WM3800R」
スマートフォンからのリモート起動や給電機能など新機能を搭載
(2013/3/5 09:00)
NECアクセステクニカの「AtermWM3800R」は、スマートフォン対応の強化や小型な本体が特徴のWiMAXモバイルルーターだ。2月7日より販売開始しており、価格は1万8000円前後、別売りの専用クレードルは3000円前後。UQコミュニケーションズの年間契約プラン「UQ Flat年間パスポート」を契約すると本体のみで4800円、クレードルセットで6800円で購入できる。
前モデルから大幅に小型・軽量化。通信時間は下がったが待機時間は向上
本体サイズは89.6×52×12.8mmと、前モデル「AtermWM3600R」と比べて体積で約70%まで小型化。重量も約80gと、前モデルから約30gの軽量化を実現した。手に持ったときの大きさも名刺より小さい程度と非常にコンパクトで、鞄やポケットに入れても気にならないサイズだ。ただし、小型化のためにバッテリー容量は2500mAhから2000mAhへと少なくなっており、それに伴い連続通信時間はWM3600Rと比較して約10時間から約8時間へ、連続待受時間は約25時間から約20時間へと短くなっている。
一方で待機時間はWM3600Rの170時間から250時間へと80時間近く向上したほか、WiMAXと無線LANの両方が一定時間通信されない場合にWiMAX通信を自動でオフにするウェイティング状態に移行することで、実際の駆動時間もより高めることができる。移行するモードは設定によりウェイティングモードのほか、より省電力性を高める休止状態への移行や電源オフにすることも可能だ。
実際にスマートフォンを接続して常に通信し続ける状態で外出したところ、公称の8時間を過ぎても10%近くバッテリーが残っており、8時間30分程度でバッテリ-が空になった。
状況や設定を確認しやすい有機ELディスプレイ
本体前面には電源ボタンと設定ボタンに加え、新たに小型の有機ELディスプレイを搭載。電波状況やバッテリー残量、無線LANの状態などをディスプレイで確認できる。前モデルのWM3600Rも前面のLED表示でバッテリーや電波状況などを確認できたが、ディスプレイではバッテリー残量をパーセンテージで確認できるためよりわかりやすい。
本体左側面にはMicro USBポートとクレードル接続端子、右側面にはストラップホールを搭載し、充電は付属のACアダプタを利用して最大3.5時間でフル充電が可能。Micro USBケーブル経由での充電にも対応している。背面にはSSIDと暗号化キーが記載されており、手動で接続設定を行う場合はこの背面の情報を入力すればいい。
手動設定のほかにも接続をサポートする機能が多数用意されているのが、据え置き型ルーターも含めたAtermシリーズの特長。スマートフォンの場合は同梱のQRコードを読み取るだけで接続できるアプリ「らくらくQRスタート」がiOS、Androidともに用意されているほか、PC向けにはボタン操作のみで接続設定が完了する「らくらく無線スタートEX」がWindows XP/Vista/7/8とMac OS X 10.5/10.6に対応している。Mac OSの最新バージョン10.7/10.8に対応していないのは残念だが、対応PCであれば手動で暗号化キーを入力することなく手軽に設定が完了するのが嬉しい。
スマートフォンから休止・起動のリモート操作が可能に
WM3800Rならではの新たな機能として、本体に触れることなくスマートフォンからWM3800Rを休止状態に移行したり、休止状態から起動するリモート操作が可能になった。なお、利用には本体の管理面からリモート起動をオンに設定しておく必要がある。
休止状態への移行と休止状態からの復帰はそれぞれ動作が異なる。休止操作についてはiOSとAndroid向けに提供されているアプリ「Aterm WiMAX Tool」から利用が可能。Aterm WiMAX Toolでは電波状況や電池残量も確認できるほか、本体の再起動、後述する公衆無線LANへの切り替えといった操作も可能だ。
休止状態からの復帰はBluetoothで行なう仕組みになっており、Androidの場合は休止と同様にAterm WiMAX Toolから「リモート起動」を選択すると自動でBluetoothがオンになり、WM3800Rを起動する。iOSやPCなどAndroid以外の端末はBluetoothの設定画面に表示されるBluetoothのペアリングを選択することで、端末を問わず起動できる。
Bluetoothをペアリングではなく起動のトリガーに使うという面白い機能だが、周辺にあるBluetooth機器であれば誰でもリモート起動できてしまうことになる。とはいえ、管理画面に入ることができるわけではなく、無線LAN経由でWiMAXを勝手に使われることもないので、実利用上はさほど問題ないだろう。
リモート操作機能は便利であるものの、スマートフォンでの接続は多くの場合常に通信が続いているため自動で休止状態へ移行する可能性は低く、バッテリーを維持するのであれば手動での休止操作が必要になるだろう。とはいえ休止状態へ移行する際にわざわざ鞄から取り出す必要がないのはありがたい。また、電源を常に入れているわけではないPCを持ち歩く際こそ、自動での休止移行設定とBluetoothによるリモート起動を組み合わせることで便利に使える機能ではないかと感じた。
スマートフォン給電は予備バッテリー程度の利用が実用的
WiMAX対応モバイルルーターとしては初というスマートフォンへの給電機能も特徴の1つ。本体の電源がオフまたは休止状態となっている時のみ給電が可能で、本体のMicro USBポートを利用してスマートフォンを接続、充電できる。WM3800R本体のバッテリー残量が一定の値以下になった場合は自動で給電が止まる仕組み。期状態では20%に設定されているが、設定から40%または60%まで変更することもできる。
なお、WM3800R本体のUSBインターフェイスはMicro USBのため、給電機能を利用するためには同梱されているUSBへの変換アダプタが必要。充電機能を使う場合はこの変換アダプタを忘れないようにしたい。
モバイルバッテリーの機能を兼ねるという点では非常に興味深い機能だが、WM3800Rの容量自体が2000mAhしかなく、フル充電時でも利用できる容量は最大で80%程度のため、大容量化が進むスマートフォンのモバイルバッテリーとしては少々物足りない。また、出力は最大で5V/1Aのため、iPadなど高出力が必要なモデルは充電できない。あくまでいざというときの予備バッテリーという認識で使うのがよさそうだ。
セカンダリSSIDや公衆無線LAN対応など接続機能も充実
前モデルで搭載されている便利機能も引き続きサポート。端末から接続するためのSSIDはプライマリSSIDとセカンダリSSIDという2つのSSIDが用意されており、セカンダリSSIDは同一ネットワークに接続した他の端末へはアクセスすることができない。セカンダリSSIDは初期状態で暗号化キーがWEPに設定されているため、ニンテンドーDSなどWPAで接続できない端末でもWEPで接続できるが、インターネットへ接続する以上のことができないよう対策されている。
なお、セカンダリSSIDによるWEP対応はほぼニンテンドーDSに対応するための機能であり、ニンテンドーDSの後継機であるニンテンドーDSiやニンテンドー3DSはWPAをサポートしているため、ニンテンドーDSのソフトでネットワーク機能を利用しない限りはWEPの意味はないと言っていい。WEPはセキュリティ面で脆弱であるとも言われており、身の回りでWEPでしか接続できない機器が無いのであれば、設定からWEPをWPAに変更しておくといいだろう。
公衆無線LANサービスにも対応しており、事前に設定を行なっておくことで、公衆無線LANエリアではWiMAXの代わりに公衆無線LANを利用することができる。対応サービスはHOTSPOT、BBモバイルポイント、Wireless Gate、UQ Wi-Fi、Wi2 300、ケーブルTV Wi-Fiのほかに個別設定にも対応しているため、自宅やオフィスの無線LANを設定して使うことも可能だ。
USB経由でPCと接続する場合はゼロインストールに対応しており、Windows Vista/7/8、Mac OS X 10.5/10.6/10.7/10.8であればPCとWM3800RをUSBで接続するだけでWiMAX回線を利用できる(Windows XPは同梱のCD-ROMから定義ファイルのインストールが必要)。PC接続時は内蔵バッテリーを利用せず通信できるためバッテリーを節約することもできるため、PC1台で利用するのであればできるだけUSB接続を利用するのがいいだろう。
別売の専用クレードルを利用することで、家庭内ではよりWM3800Rを活用できる。クレードルは有線LANポートを搭載しているため、無線LANに対応していない家庭内の機器も接続できるほか、すでに家庭内にインターネット環境がある場合、WM3800Rをアクセスポイントとして利用することが可能だ。
WM3800Rをクレードルに装着すると接続回線がWiMAXから家庭のネットワークへ切り替わるため、WM3800Rに接続しているスマートフォンやPCなどの端末は回線の変更を意識することなく、自宅のネットワークを利用することができる。WM3800Rを自宅で活用するためには手に入れておきたい1台だ。
小型・軽量化に加えてリモート起動や給電機能など新機能が魅力
前モデルと比べて大幅に小型化されたほか、リモート起動や給電機能などを備えるなど新たな機能も充実したWM3800R。レビューで触れた通り、非常に便利というほどではないというのが正直なところだが、それでもいざというときに鞄から取り出すことなくリモートで起動したり、バッテリーとしても使えるというのは嬉しい。
以前から搭載している簡単設定やスマートフォンからの電波状況・バッテリー状況確認など使いやすい機能も充実しており、モバイルルーターとしても使いやすい1台だ。前モデルと比較して小型化された分連続通信時間が下がっているため、小型化プラス新機能を取るか、連続通信時間を取るかが選択のポイントになるだろう。なお、前モデルは NECアクセステクニカのオンラインストアですでに在庫僅少となっているので、前モデルを希望する場合は早めに入手しておくことをお薦めする。
機能が充実している一方、少々気になるのはマニュアル類。これはAtermシリーズ共通といってもいいが、接続に関する最低限の初期セットアップに関するガイドは充実しているものの、そのほかの機能を使おうとするととたんにマニュアル類が煩雑になる。今回もリモート起動機能をチェックしようとするとガイドには「詳しくはCDに」とあり、CDのマニュアルを読むと「詳しくは機能詳細ガイドに」とたらい回し状態に。機能詳細ガイドもどこにあるのかわからなかったが、CDマニュアルの冒頭にある説明でオンラインのガイドであることがわかり、やっと設定にたどりついた。
日常の運用に便利なAterm WiMAX Toolや、今回新たに追加されたリモート起動も同梱のガイドだけではほとんど詳細がわからないため、せっかくの便利な機能があまり使われないのでは惜しい。特にBluetoothからの起動はオンラインガイドを読まない限り知ることができない機能になっているのが残念だ。せっかくの機能を生かすためのガイド類の充実も今後は期待したい。