レビュー

「Nexus 10」ファーストインプレッション

「Nexus 10」ファーストインプレッション

超高解像度ディスプレイでサクサク動作の10インチタブレット

 ついに、いや、ようやくと言うべきか、Googleの10インチタブレット「Nexus 10」が日本国内で発売された。GoogleのAndroid端末のブランド「Nexus」を冠するこのタブレットは、OSにAndroid 4.2を搭載する最新型のリファレンス機ともいうべき端末。ストレージ容量の違いで、16GB(36,800円)と32GB(44,800円)の2つのモデルが用意される。

「Nexus 10」

 当初は2012年11月13日に発売予定となっていたところ、日本向けのみ当日になって発売が急遽延期。他国では予定通り販売され、その熱気が完全に過去のものになりつつあった2月5日になって、不意に日本国内での取り扱いも始まった。

 2月8日現在、Google Playでのみ販売されており、発送は注文から1~2週間以内となっている。筆者が発売開始日の2月5日に注文した際も同様の1~2週間以内に発送となっていたが、翌日には発送を知らせるメールが、さらにその翌日には早くも商品が届いた。「Nexus 7」の発売時は商品がなかなか届かないなどのトラブルがあったと聞くが、今回の「Nexus 10」については、混乱なくスピーディに入手できると期待できそうだ。

パッケージ内容は本体、ACアダプタ、USBケーブル、説明書類

“最速”ではないが、満足感の得られる性能

 「Nexus 10」はサムスン電子製の端末。サイズは263.9×177.6×8.9mm、重さは603gだ。特別コンパクトだったり軽量だったりするわけではないものの、十分に使い心地のよいサイズ感および重量感になっている。角のラウンド形状やなだらかな弧を描く輪郭、エッジから背面にかけての微妙なカーブのついた断面によって、全体的に丸みを帯びたフォルムをなしており、背面のマットな表面処理が滑り止めとなっていることもあって持ちやすい。

筐体は丸みを帯びたフォルム
背面はマット仕上げで滑り止めにもなっており、片手でもしっかり保持できる

 チップセットはサムスン製の「Exynos 5」で、ARM Cortex-A15ベースの1.7GHzデュアルコアCPUと、クアッドコアGPUがパッケージングされたもの。2GBのメモリと、16GBまたは32GBのストレージ、500万画素のアウトカメラ、190万画素のインカメラを搭載する。通信機能はIEEE802.11b/g/n(2.4/5GHz対応)、Bluetooth 3.0、NFC(Androidビーム対応)を利用でき、3G/LTEには対応しない。外部インターフェイスとして、充電・データ転送用のmicroUSBのほか、microHDMI端子、3.5mmマイク・ヘッドフォン兼用端子を備え、本体前面の左右端(横置き時)にはステレオスピーカーも内蔵している。

NFC対応の端末を近づけるだけでテキストデータなどを無線通信できるAndroidビーム
NFCのマークはないが、背面のカメラレンズ下あたりに近づけると反応する

 ハードウェアキーは電源とボリューム調整の2種類のみ。クレードル用と思われる端子も本体下部に用意されているが、今のところ使い道はない。また、防水・防塵機能、外部メモリカードスロットは備えていない。バッテリーは大容量の9000mAhとなっていて、HD動画再生時で最大9時間、待受時は最大500時間稼働するとしている。

(横置き時)端末上側面の左端に電源ボタンとボリューム調整ボタンがある
左側面にはMicro USB端子とマイク・ヘッドフォン兼用端子
右側面にはMicro HDMI端子も備える
下部側面にある端子はクレードル利用時の接点と思われるが、今のところ用途はない

 2012年10月末の発表当時こそ、これらの性能はタブレットとしてはハイスペックなものであると話題になったが、今やクアッドコアCPUなどを搭載し、さらにパフォーマンスの高い他社製のタブレット端末もリリースされており、発売タイミングを逸したせいで、やや色あせてしまった感はぬぐえない。しかしながら、タッチ操作や画面の切り替え、Webブラウジング、アプリの動作などは非常に快適。

 Android 4.1から実現しているVsyncタイミングの制御など、画面描画の最適化が図られているのも理由の一つと思われるが、この動作のサクサク感は、最新のタブレットやスマートフォンにも決して見劣りしないだろう。

ディスプレイ解像度は圧巻の一言

 ディスプレイについては、今なお「Nexus 10」が他社製端末より大きなアドバンテージを保っている部分といえる。高強度のCorning Gorilla Glass 2を採用した10インチのディスプレイは、WQXGA、2560×1600ドット、300ppiの超高解像度を誇る。iPad Retinaディスプレイモデルの2048×1536ドット、264ppiと比較しても1段上の解像度となっており、iPhone 5の326ppiに迫る高精細さだ。

ここまで文字ぎっしりでもルビまでしっかり読める

 たとえば、電子書籍の文字サイズを一般的な文庫本のフォントより小さくしても、ルビまでしっかり読めるほど鮮明に表示し、巨大なデジカメ写真も細部まできめ細かく映し出す。JPEGだとわずかなブロックノイズさえも見えてしまうため、RAW画像で表示したくなるほど。また、4Kおよび2.7Kの動画を再生すると、驚異的なまでに臨場感のある映像を見ることができる。「GoPro HERO3」で撮影した4K 12fps、2.7K 24fps、1080p 30fps、720p 60fpsの動画は、スムーズな再生が可能だった。

 ただし、4K 15fps、2.7K 30fps、1080p 60fpsの動画では、明らかなコマ落ちが発生した。以下のベンチマーク結果にあるとおり、ハイエンドとはいえないまでもそれなりの好成績で、チップセットの能力は高いと考えられるが、あまりにもディスプレイ解像度が高く、それに対してチップセットの能力が釣り合っていないように感じられる。「Quadrant Professional Edition」の結果における“2D”の値の低さは、解像度の高さが影響しているのかもしれない。

4Kの動画を再生中。再生のスムーズさはフレームレートやビットレートにも左右されるが、驚くほどの高画質を堪能できるはず
「Quadrant Professional Edition」の結果
「AnTuTu 安兎兎ベンチマーク」の結果
「Vellamo Mobile Benchmark」の結果

マルチユーザー対応にはシステムアップデートが必要

 「Nexus 10」が搭載しているOSは、最初からAndroid 4.2となっているものの、「Nexus 7」でも利用可能になったマルチユーザー機能などを使うためには、同様にシステムアップデートを適用し、4.2.1にバージョンアップしなければならない。

 このマルチユーザー化により、ロック画面では新たにログインユーザーを選択するためのボタンが追加され、ユーザーごとに異なる環境でタブレットを利用できるようになる。撮影した写真、インストールしたアプリ、受信メール、端末の各種設定など、すべてがユーザーごとに保管されるため、個人のプライバシーも守りやすい。もちろん、ロック画面での認証や、使用するGoogleアカウントもユーザーごとに設定できる。

ネットワーク接続後、しばらくするとシステムアップデートの通知がある
通常のロック画面
マルチユーザーの設定を行ったときのロック画面
端末設定の“ユーザー”でマルチユーザーの各種設定を行える

 また、Android 4.2の新要素として、ロック画面でウィジェットを配置する機能もある。ロック画面に表示されているデジタル時計自体がウィジェットになっており、この部分を左右にフリックすることで他のウィジェットと切り替えられる。最初からインストールされているロック画面用のウィジェットは3つのみなので、Google Play Storeで対応ウィジェットを探して追加するとよいだろう。

ロック画面左側を左右にフリックするとウィジェットを切り替えられる
ロック画面専用のウィジェットは標準でカレンダー、時計、Gmailの3つのみ
初期のホーム画面

 ホーム画面のインターフェイス自体は「Nexus 7」とほぼ同じで、画面下部にホーム・バック・タスクの各ソフトウェアキーが、その上にアプリとドロワーのショートカットが並ぶ。ステータスバーから引き出して表示する通知パネルと、Wi-Fiオン・オフや画面の明るさ調整といった各種設定切替を行えるボタンのパネルは分離していて、それぞれ画面の左右で個別に呼び出すようになっている。

 このうち、各種設定切替ボタンのパネルでは、マルチユーザー対応を意識してか、現在使用しているユーザーの名前とアイコンも表示される。なお、プリインストールアプリは27個、ウィジェットも24個と少なめ。まさに“素”のAndroidタブレットだ。

通知パネルは画面左上から呼び出す
端末の各種設定切替ボタンは画面右上に
アプリ、ウィジェットの数は少ない。純粋な“素”のAndroidタブレットといえる
映画「アイス・エイジ」を無料で視聴。大画面タブレットの本領をかいま見られる

 高解像度のディスプレイをユーザーに体感してほしいということなのか、Google Playの映画コンテンツである全編フルCGのアニメ「アイス・エイジ」を無料で視聴できる。映像ソース自体は720pのようだが、その高精細さを存分に堪能できるだろう。端末の両脇のステレオスピーカーによる音声もクリアで、没入感は高い。

 Android 4.2の新機能でいえばもう1つ、スクリーンセーバー機能「Daydream」が追加されているのもポイントだ。現在時刻をシンプルに表示する「時計」のほか、グラデーションカラーを表示する「カラー」、Googleカレントのニュースコンテンツを表示する「カレント」、指定したフォルダ内の画像を次々に表示する「フォトテーブル」と「フォトフレーム」の計5種類が用意されている。端末がアイドル状態になるか、クレードルに接続すると表示されるものだが、前述の通り、少なくとも「Nexus 10」用の純正クレードルはまだ発売されておらず、本体下部に設けられている端子が使い道のない状態のため、バッテリー消費を考えると「Daydream」は使いどころが難しい機能かもしれない。

スクリーンセーバー「Daydream」は、標準で5種類の中から選択可能
「Daydream」の実行タイミングはアイドル時の他、充電時とクレードル(ホルダー)利用時から選べるが、クレードルがない現時点ではこの機能の使いどころは難しそう

旬を逃したとはいえ、それでもなお有力候補の1つに

 価格は3万6800円(16GB版)~と、コストパフォーマンスを考えるとWi-Fiオンリーのタブレットとしてはお得な部類に入るのではないだろうか。ハードウェアの基本性能は決して最新・最速というわけではなく、せめて当初の予定通り2012年11月に発売されていれば、と思わずにはいられないが、それでも高い所有感を得るのに十分なスペックは備えている。

 最新のハードウェアではなくても動作は快適で、ディスプレイの美しさはやはり圧倒的。エンターテイメントからビジネスまで、活用しがいのある端末であることは間違いない。画面の精細さは、先進ユーザーだけでなく、タブレットになじみの薄いファミリー向けにおいても、使い勝手のよさに直結する大切な要素の一つだと思う。

 また、マルチユーザーなどの最新機能を備えたタブレットは2月時点で「Nexus 7」と「Nexus 10」のみ。10インチクラスの大画面タブレットにおいては、他では体験できない大きな魅力だ。他社製品を含めタブレットの購入を検討しているなら、世界的にはやや旬を逃してしまった現在でも「Nexus 10」は有力候補の1つに挙げられるだろう。

(日沼諭史)

日沼諭史