レビュー
軽量・ハイスペックなHTCの最新XRヘッドセット「VIVE XR Elite」を試した
2023年2月7日 12:00
ゲーム、メタバース、仕事にも使えるヘッドセット
VIVE XR Eliteは、高性能ながらコンパクトかつバッテリー込みで625gと重量を抑えたデザインを特長とするXRヘッドセット。
6DoFに対応しており、リフレッシュレートは最大で90Hz。最大で110度の視野角を持つ。16MPのRGBカメラを搭載しMRグラスとしても利用できる。このほか、対応するAndroidスマートフォンとの連携で動画やゲームも楽しめるという。
本体にはパススルーカメラが搭載されており、VRだけではなくMRデバイスとしての活用も可能。HTC NIPPON 代表取締役社長の児島全克氏はその特長について「広がるメタバース」「本格ゲーミング」「新時代の生産性」と表現する。
電源を入れると、HTCのメタバースプラットフォーム「VIVERSE」の入り口に立てるほか、パソコンとつないでのゲームはもちろん、単体でのゲームプレイもできる。加えて、前述のパススルーカメラを用いてパソコンと接続した際に、拡張バーチャルディスプレイとしても使えるため、ゲームやコミュニケーションのみならず実用的な側面もあわせ持つ。
また、パソコンのみならずAndroidスマートフォンと接続することで、ストリーミングのコンテンツを楽しむといった使い方もできる。
ハンドトラッキングに対応しており、アイトラッカーやフェイストラッカーは別売のオプションとして後日提供されるが、児島氏によればこれは、必ずしも多くのユーザーがその機能を必要としていないことと、デバイスが重くなることや価格の上昇を避けたため。あわせて、広告なども含めてユーザーの行動からデータを取らないというHTCの開発ポリシーの一部という。情報セキュリティの国際規格を取得するなど、高い信頼性から米軍や警察でも、VIVEがトレーニング用のデバイスとして採用された実績がある。
このほか、子どもが使う場合の時間制限や何を見ているかを確認できるキャスト要求といったペアレンタルコントロールも備える。
HTC NIPPON 副社長の川木富美子氏によると、CESで公開された当初からVIVE XR Eliteは非常に好評。日本でも想定以上の予約が入っている状態だという。
軽くてコンパクトは本体
バッテリーを取り外した状態の本体はかなりコンパクト。エントリークラスを担う「VIVE Flow」とフットプリントはあまり変わらない印象だ。
顔を当てる「ガスケット」と呼ばれる部分はマグネットとフックで固定されており、外しやすいよう配慮されている。本体下部には無段階の瞳孔間距離調整のスイッチが備わっている。対応幅は54~73mmで大多数の人をサポートできる。
本体横にはスピーカーとバッテリー・電源接続用のUSB Type-Cポートが伸びている。ツルの部分を外すとバッテリーを装着できるようになっている。
VRの世界観を試した
実機の重さは、バッテリー装着時で625g。実際に装着してみると重さを感じることはなく、そのままでも十分軽快に動ける印象。本体後部のバッテリー部分にバンドの長さを調整するダイヤルがあり、しっかりと頭部に固定できる。筆者は比較的頭が小さいと思われるが、ずり落ちるようなことはなかった。
メディア向けに実施された説明会ではアニメーションキャラクターのライブやゲームの体験ができた。
自宅の風景のなかにキャラクターが出現し歌を披露してくれるといったもので、今まで見ていた景色に突然、キャラクターが現れるのは不思議な感覚だ。コンテンツそのものも綺麗に見られるが、パススルーカメラやディスプレイの解像度の高さのおかげでディスプレイ越しの景色にも違和感がないため、酔いも起きにくく自然に楽しめる。
VR空間内を自由に動き回れる「6DoF」に対応しており、歌うキャラクターの後ろに回り込んでその後姿をじっくり見る、ということも可能だった。今回、後部バッテリーを取り外してグラススタイルで鑑賞してみたが、歩き回る程度なら頭にかけるだけの状態でも安定している。
上記画像だと手にしたスマートフォンが一部歪んでしまっているが、実際には歪みなくしっかりと文字も読める。ヘッドセットを使用中にスマートフォンを確認したいときはもちろん、バーチャルデスクトップとして利用していても、キーボードの文字もしっかり読める。
ゲームでは、しっかり固定できるようバッテリーを接続した状態で装着。「VIVEPORT」でヘッドセット単体でもパソコンと接続して「Steam」などで対応するゲームを遊ぶこともできる。
ここではシューティングゲーム(スタンドアロン)とカヤックを操縦するゲーム(パソコン接続)でプレイした。付属のVIVEコントローラーを自分が操作するキャラクターやカヤックのオールに見立てて操れるのは、XRならではの体験といったところ。北極の海でカヤックを操縦する体験をしたが、映像もきれいで自分の頭の動きに対する追従性も極めて良好。VR酔いもなくすっきりした使用感。
本体側面のスピーカーもしっかり低音を表現できており、美麗な映像とあいまってより没入感を高めてくれる。
筆者はおよそ1時間弱程度、グラスモードとゴーグルモードで使用し続けたが、デバイスの発熱なども感じず、デバイスの重さによる疲労感もなかった。体に密着するデバイスは慣れないと装着感が気になることもあるが、今回試した限りでは違和感なく快適に使えるといった印象だった。
バッテリー装着時の駆動時間はおよそ2時間。ただし、本体側にもごく小さなバッテリーが搭載されており、電源を維持したままバッテリーを交換できるいわゆる「ホットスワップ」に対応する。長時間のゲームプレイや仮想空間でのコミュニケーションでも、バッテリー切れで現実に引き戻されるリスクが少なくなる仕掛けになっている。
今後の展望は
児島氏は、日本のVR市場について「大きい方向性は(諸外国と)一緒」としつつも、昨今広まりを見せる「Vtuber」などの独特なコンテンツへの期待感を示す。同氏によれば、VIVEの周辺機器で、手の動きなどを追跡するトラッカーが世界でもっとも売れたのが日本。
VRチャットなどで使用されることは諸外国でもあるというが、根強い需要は日本市場特有のもの。米国ではVRにおけるユーザーは50%が法人。一方で日本では70%がコンシューマーユーザーといった特長もあるという。それゆえに海外とは異なる成長を見せてくれるのではと語った。
軽量かつハイエンドという特長を備えた、VIVE XE Elite。ゲームやメタバースのほか、仕事用デバイスとしても利便性が高そうだ。しかし、高性能ゆえに価格も少々高め。
今後の広まりには、価格を超える体験を得られると市場に認識してもらうことがひとつのキーとなりそうだ。そういった意味ではHTCがユーザーに対して、どのようなメッセージをどう伝えていくのか、コミュニケーションのあり方が重要になりそうだ。この点について、児島氏は「販売チャネルは一気には難しいが、徐々に増やしていきたい。(一般ユーザーの)タッチアンドトライも開いていこうかと思っている」と語る。
そのうえで、VIVEで何ができるのかを示していくことの価値を示し、メタバースでできることやVRで広がるゲーム体験などもあわせてプロモーションしていきたいとした。