レビュー

携帯電話会社のクレジットカード徹底比較、ドコモ/au/ソフトバンク/楽天のスマホ料金競争の新たな軸に

 昨2021年は「ahamo」「povo」をはじめとする低価格なスマホ通信サービスが相次いで誕生。携帯電話料金を巡る競争は激化した。しかし、料金値下げだけの競争には限界があるし、差別化も難しい。そこで、提供サービスの質・機能を競争軸にする必要がある訳だが、そこで重用されているのが「クレジットカード」だ。

 携帯電話は1度契約してもMNPで容易に他キャリアへ移行できるが、クレジットカードの切り替えはそこまで簡単ではない。魅力的なクレジットカード特典を用意することで、顧客を繋ぎ止めつつ、満足度も高めたい。そうした狙いが各キャリアの施策から透けて見える。

 そこで今回は、主要4キャリアのクレジットカードを比較した。スマホとクレジットカードを同じブランドで揃えるとどんな特典があるのか? まずは自分が普段使っているキャリアのサービスから、チェックしてみてほしい。

ポイント還元率は「決済で1%、ゴールドカードなら通話料金10%」が標準的

 今回ご紹介するキャリア系クレジットカードは、どれも年会費無料で作ることができる。例えば学生が就職を機に初めてクレジットカードを作成するようなケースと相性が良さそうだ。

 クレジットカード決済額に応じて貯まるポイントはおおむね「1%」で共通。一般的なクレジットカードの中には還元率が0.5%程度のケースもあるので、料率としては高いほうだ。

 また、いわゆる「共通ポイント」が貯まるので、利用も簡単だ。コンビニやチェーン系飲食店などを中心に対応店舗は広がっており、多くの店で1ポイント(1円相当)から買い物に充当できる。ポイントをいざ使おうにも「500ポイント」など一定の基準に達していないと特典に引き換えられず、しかも貯まる前に有効期限切れ……といったケースはほぼないはずだ。

例えばauなら「Pontaポイント」が貯まる。コンビニのローソンで、貯まったポイントを使うこともできる

 そして、キャリアによっては約1万円の年会費が発生する上位カード、いわゆる「ゴールドカード」が用意されている。それだけの料金を払ってまで作るべきカードなのか? その答えが「料金の10%還元」なのである。ではここから、各社のサービスを具体的に見ていこう。

NTTドコモ 「dカード」「dカード GOLD」

 NTTドコモのクレジットカードは、年会費無料の「dカード」と年会費1万1000円の「dカード GOLD」(以下、GOLDカード)の2種類。ショッピング額100円(税込)ごとにdポイントが1ポイント貯まる特典は両カードで共通している。

こちらは「dカード GOLD」

 通常カードとGOLDカードの違いは、携帯電話と「ドコモ光」(固定系光ファイバー通信サービス)の利用料に対する還元額だ。その額は1000円(こちらは税抜)に対して100ポイントの還元。通常カードの10倍にあたる額で、一応「最大10%還元」と言ってよいだろう。

 代表的なところでは「5Gギガホ プレミア」が月額7315円(税別6650円)なので、毎月600ポイント、年間で7200ポイント貯まる計算になる。GOLDカードの年会費をこれだけでは回収しきれないが、実際には通話定額オプションを付ける方も多いだろうし、もし「ドコモ光」をセット契約している家庭ならば年会費を十分上回るはず。なおスマホ本体の購入代金などは10%還元にならないのでご注意を。

dカードのウェブサイト。「dカード GOLD」でのドコモの携帯電話料金を支払うと、1000円に対して100ポイント還元される

 なお、ドコモの主要な料金プランを契約して料金をdカードで支払えば、「dカードお支払割」によって月々の料金が187円引きになる。通常カード・GOLDカードのどちらでも適用される。

 また3月にスタートした「ドコモでんき Green」の料金支払いについても、dカードは優遇されている。「5Gギガホ」などの携帯電話プランを契約しておく必要はあるが、通常カードで100円(税抜)に対して5%、GOLDカードに至っては10%還元と、かなりの率になる。ただし「ドコモでんき Green」はCO2排出量実質ゼロを謳っていて、各地域の標準的な電気基本料金(最低料金)よりもプラス500円の価格設定がなされている。単身家庭では、ややメリットを感じづらいかもしれない。

 このほか「dカードケータイ補償」も注目の特典だ。dカードに対して「ご利用携帯電話番号」を1つ紐付けておき、その番号で利用している携帯電話をNTTドコモから購入していた場合、その端末が修理不能だったり紛失した場合の代替機購入費が補填される。通常カードの場合は購入後1年間かつ1万円まで、GOLDカードの場合は3年以内かつ10万円まで。

au 「au PAYカード」「au PAY ゴールドカード」

auのクレジットカードもやはり通常カードとゴールドカードの2種類が存在する。「au PAYカード」は年会費無料、「au PAY ゴールドカード」は年会費1万1000円と、ほぼdカードと同じ設定になっている。

「au PAYカード」「au PAY ゴールドカード」

 街中やオンラインでのショッピングに対するポイントの還元率は100円(税込)に対してPontaポイントが1ポイント貯まるのは通常カード・ゴールドカードで共通。一方で、「au PAY ゴールドカード」でのみ大々的にアピールされているのが「au携帯電話料金の最大11%ポイント還元」である。クレジットカード決済に対する1%還元にプラスするかたちで、携帯電話料金1000円(税別)ごとに100ポイントが加算される。なお固定系通信の「auひかり」利用料金にもこの特典は適用される。

 さらにauのゴールドカードには「家族カード」の制度があり、この家族カードでau携帯電話料金を支払う場合も“11%還元”の対象となる。家族カードの発行は1枚のみなら無料なので(2枚目以降は年会費2200円)なので、夫婦・パートナーが一緒にauを使うようなシチュエーションであれば、お得度はより高いだろう。

au PAYカードのウェブサイトでも、ゴールドカードでの“10%還元”が大きくアピールされている

 水道光熱費関係では「auでんき」「都市ガス for au」の支払いに対して、ゴールドカード利用時であれば100円(税込)に対して2%が追加で付与され、合計3%還元となる。ちなみに「auでんき」では、毎月の電気料金に応じて1~5%のPontaポイントが貯まる制度があるが、これと決済手段は無関係に適用される。

 QRコード決済としての「au PAY」を多用している人にとっては、やはりゴールドカードがお得。残高チャージの1%、決済時の0.5%還元とは別枠で、追加の1%還元(月間上限1000ポイント)が設定されている。オンラインショッピングモール「au PAY マーケット」の決済については通常カードで5%、ゴールドカードならさらに2%の追加還元(いずれも月間上限あり)される。

 ドコモの「dカードお支払割」と同様、毎月の携帯電話料金が直接値引きされる制度もある。「au PAY カードお支払い割」がそれで、割引額は毎月110円もしくは187円。ゴールドカードでなくてもよい、ただし「2年契約N」による割引とは重複適用されない。

ソフトバンク 「PayPayカード」(旧ヤフーカード)

 ソフトバンクグループには「ソフトバンクカード」が存在するが、現在のサービスはアプリ内で発行するバーチャルカード的な扱い。より一般的なクレジットカードに相当するのが「PayPayカード」(旧ヤフーカード)だ。ゴールドカードの設定はなく、スタンダードなカード1種類のみの発行。年会費は無料で、ショッピングに対しては100円あたり1円相当のPayPayポイントが還元される。

「PayPayカード」

 PayPayカードはdカードやau PAYカードとは性格が大分異なり、「携帯電話料金をお得にするカード」というより、むしろ「コード決済(スマホ決済)サービスとしてのPayPayをより便利にするカード」としての側面が強い。ソフトバンク料金支払時のポイント割増はなく、通販サービス「Yahoo!ショッピング」「LOHACO」での決済にプラス1%の特典がある程度だ。

 コード決済サービスとしてのPayPayではさまざまなポイント増量キャンペーンを実施しているので、貯まったポイントをPayPay加盟店で頻繁に利用するユーザーにとって、PayPayカードは魅力的だろう。また4月上旬の時点では、新規発行および3回の決済利用で最大7000円相当のPayPayポイントが貰えるキャンペーンを実施中。年会費無料カードの発行特典としては比較的おトクだ。

PayPayカードの特典

 なおソフトバンクの携帯電話を契約しているユーザーは、PayPayカードの発行有無に関わらず、PayPay決済時にポイント還元額が増える「スーパーPayPayクーポン」制度があるので、上手く利用したい。

楽天モバイル 「楽天カード」その他

 今回紹介する4キャリアのクレジットカードの中でも、頭抜けた知名度を誇るのが「楽天カード」だろう。最もスタンダードなカードでは年会費無料、ポイント還元率は1%。どのキャリアを選択しているかに関わらず、通販モールとしての「楽天市場」を多用している人ならば、シンプルにお得を実感できるカードだ。

「楽天カード」

 楽天はグループ全体で「SPU(スーパーポイントアップ)」のプログラムを推進しており、グループ内各社の利用特典・新規加入特典がほぼ集約されているといってよい。楽天市場での買い物の際に還元されるポイント率は通常1%だが、楽天カードで決済すると“プラス2倍”される。同様に楽天モバイルの契約があると、“プラス1倍”となり、重畳していく。

 楽天モバイルと楽天カードの特典が直接的に連動する訳ではない。しかし楽天モバイルは、条件によっては月額0円で1GBまで無料利用できる。ポイント還元率アップのためだけに楽天モバイルを契約し、さらなる上積みを狙っていたら楽天カードも作りたくなった……というシナリオは十分想定される。

楽天グループの特典制度の柱は「SPU」。楽天モバイルを契約すると、楽天市場での買い物がよりお得になるが、電話料金そのものが値引きされたりはしない

まとめ ドコモ&auのヘビーユーザーなら「ゴールド」一択、通常カードも意外とイケる?

 4キャリアのサービスを実際に比較してみたが、通話料金の多寡に応じてポイント還元額が直接上下するのがドコモとau。繰り返し述べているが、年会費1万1000円のゴールドカード会員になれば通話料金に対する還元率が10%前後となる。スマホ本体の割賦料金を除いた、正味の通信料だけで支払い額が毎月1万円を超えるユーザーであれば、年会費を考慮しても十分お得だ。特に最近は、テレワークなどの都合で固定回線を必要としている方も多いだろうから、回線選びにも影響しそう。もちろん“囲い込み”の度合いは一層高まる格好ではあるが……。

キャリアNTTドコモNTTドコモauauソフトバンク楽天モバイル
カード名dカードdカード GOLDau PAYカードau PAY ゴールドカードPayPayカード楽天カード
国際ブランドVisa
MasterCard
Visa
MasterCard
Visa
MasterCard
Visa
MasterCard
Visa
MasterCard
JCB
Visa
MasterCard
JCB
Amex
年会費無料1万1000円無料1万1000円無料無料
貯まるポイントdポイントdポイントPontaポイントPontaポイントPayPayポイント楽天ポイント
ポイント還元率(ショッピング時)100円で1ポイント100円で1ポイント100円で1ポイント100円で1ポイント100円で1ポイント100円で1ポイント
携帯電話料金支払時のポイント割増特典───1000円(税別)で100ポイント───1000円(税別)で100ポイント──────
携帯電話料金支払時の割引制度dカードお支払割(187円)dカードお支払割(187円)au PAY カードお支払い割(110円・187円)au PAY カードお支払い割(110円・187円)──────

 また「dカードお支払割」「au PAY カードお支払い割」も、意外と無視できない。割引額は月100円程度とわずかだが、ゴールドカードではない通常カードでも適用される。毎月の携帯電話料金を低く抑えられている方がさらに一段節約するためであったり、クレジットカード選びにそれほどこだわりがない方には、むしろ“刺さる”特典かもしれない。

 対してソフトバンクと楽天モバイルのサービスは、携帯電話料金よりも周辺の物販サービスとの連動に力点が置かれている。ソフトバンクユーザーでもっとPayPayを使いこなしたい、楽天モバイルユーザーで楽天市場をとにかく使っているといった場合は、やはりカードを作る価値があるだろう。

 ただ各社が相次いでキャンペーンを実施している様子を見る限り、今後も次々と制度が変わったり新特典が追加されるはず。引き続き、その動向をチェックしていく必要がありそうだ。