レビュー

絶妙なサイズに最新CPU/GPU搭載で最強になった第6世代iPad miniをじっくり触ってレビューしてみた

 9月24日、iPhone 13シリーズとともにiPad mini(第6世代)とiPad(第9世代)が発売された。

 「iPhone 13は興味あるけど、iPadは……」なんて方はちょっと待って欲しい。iPad(第9世代)はプロセッサーの更新だけの地味な進化だが、iPad mini(第6世代)の方はデザインから一新し、その独特のサイズ感もあって、面白い製品に仕上がっている。大画面を求めるなら、iPhoneの買い替えよりも「iPad mini」のほうが快適になることもある。

 歴代iPad miniを家の中でも家の外でも持ち歩く端末として愛用してきた筆者は、もちろん第6世代も購入したので、数日使ってみてのファーストインプレッションをお届けする。

iPad miniのキモは片手で持てる絶妙な幅135mmのサイズ感

iPad mini(第6世代)

 iPad mini(第6世代)のサイズは、195.4×134.8×6.3mm。重さはWi-Fiモデルが293gでセルラーモデルが297g。

 iPad mini(第5世代)が203.2×134.8×6.1mmで重さはWi-Fiモデルが300.5g、セルラーモデルが308.2gだったので、わずかにではあるが、小型化・軽量化しているが、この大きさからすると誤差レベルの違いしかない。手に持って重さの違いを体感できる人は、達人中のタツジンに違いない。

手が小さい人でなければ、片手で両端に指がかかる
小さく軽いので、片手でも持ちやすい。これでもう片手でタップできる

 幅135mm・300gは、片手で握れるサイズ・重さだ。手が大きければ親指と他の指でガシッとつかんでも良いし、軽いので端っこをつかんでいてもそこそこ安定する。

 このサイズ感が絶妙なのである。iPad miniのキモといっても過言ではない。

 片手で持ちやすいので、もう片方の手でタップしたり、ペンを使ったりできる。卓上に置かないでも良いので、立ったままや寝ながらでも使いやすい。また、ページめくりやスクロール操作程度なら、片手の親指操作もできなくもない。

こちらは11インチのiPad Pro。片手で持てなくはないが、長時間はツラいし落としそうで怖い(高いんだなコレが)

 これがほかのiPad……9.7/10.2/10.5/10.9/11インチとバリエーションが多いので大雑把に「10インチ前後」と括らせてもらうが、より大きな10インチ前後のiPadだと、片手で長時間把持し続けるのはツラい。

先日スマホ・タブレット向けにリリースされた「ポケモンユナイト」。iPad miniとの相性が抜群である
両手持ちから片手持ち+片手タップに切り替えても軽いので無理がない

 シューティングゲームやMOBAなどのゲームでは、iPadを横にして左右の手で持ち、親指タップで操作する形が多いが、iPad miniは本体が軽いので、そこそこ長時間プレイしても疲れにくい。これが10インチ前後のiPadだとやや重たいので、手には持たず、卓上でスタンドなどにおいてプレイしたい。

パソコン向けのWebページはちょっと文字が小さくなるが、近くで読むし、拡大縮小も容易なので困らない

 iPad miniのディスプレイサイズは、ブラウザではパソコンと同じWebページを読めるサイズ感だ。場合によっては少し拡大しないといけないが、パソコンよりも顔面に近づけて使うので(手に持つのでむしろ距離を離しにくい)、ノートパソコンの半分くらいのディスプレイサイズでも、ノートパソコンのウインドウの1つくらいの情報量なら快適に読んだりタップしたりできる。

 また、電子書籍、とくにマンガを読むのにも最適だ。多くのマンガは単行本化を想定して描かれているので、それより少し大きなiPad miniくらいのディスプレイサイズなら細部が潰れない。見開き表示にしても、そこまで読みにくくもない。

 一方、雑誌や書類など元がA4サイズ印刷物の電子書籍やPDFは、iPad miniだと文字が小さくなるので、単ページ表示でも読めなくはないものの、ちょっと読みづらい。書類PDFなんかは、iPad miniを横画面にして上半分だけを表示させる、というような使い方もできるが、1ページ全体を表示できる10インチ前後のiPadに比べると、ちょっと使いづらい感じは否めない。

11インチiPad Pro。Smart Keyboard Folioを装着するとほぼほぼノートパソコンだ

 卓上で使うなら、10インチ前後のiPadの方が有利な面は多い。ペンを使うときも、iPad miniだと拡大しないと文字や図形を書き込みにくい。iPad miniにはSmart Keyboardがないのも弱点となる。もちろん動画や写真を楽しむのも、ディスプレイの大きな10インチ前後のiPadの方が有利だ。

ジャケットやコート着用なら手ぶらで持ち歩けるかも。そういった視点で衣類を選ぶのもアリ

 持ち運びを考えると、iPad miniは小さなカバンの隙間に入れても邪魔にならない。軽いのでカバンに入っていることを忘れるレベルだ。ちょっと無理があるものの、男性用ジャケットならポケットにも入る(こともある)。これが10インチ前後のiPadだと、ノートパソコンが入るようなカバンでないと持ち運びにくいので、iPad miniの方が格段に機動力が高いと言える。

 ジーンズのポケットにも入るようなスマホと比べると、iPad miniの機動力は劣るが、ここは仕方ない。一番大きなiPhone 13 Pro Maxと比べても、iPad miniの方がディスプレイサイズは決定的に大きく、仕事や読書、動画視聴、ゲームなど、画面の大きさが関わるアプリの快適さは桁違いだ。

デザインやインターフェイスはiPad Pro/iPad Airと同じに

側面フレームが垂直で直線的

 デザインは第5世代から一新し、iPad Pro/Airと似たテイストのものになった。側面フレームは垂直で、背面はフチから平面形状だ。ちなみにiPhone 12/13シリーズだと側面が金属フレーム、背面がガラスとなっているが、iPadは側面も背面も金属で、上下はアンテナのためか分割線があるものの、左右側面と背面は一体部品になっている。

こちらはiPad mini(第5世代)。フチが少し丸みを帯びている

 第5世代までは古い世代のiPad同様、背面のフチが丸みを帯びたデザインだったが、これが垂直になった。これで何か変わるかというと、持ち心地とかはたいして変わらない。しかしApple Pencilやフォリオカバーを装着していると、片手では持ちにくくなる。

第5世代(左)と第6世代(右)。幅は同じだが、縦の長さが縮んだ

 第5世代に比べると、ホームボタンがなくなったこともあり、上下のベゼルも細くなって上下左右のベゼル幅がほぼ同じになっている。ホームボタンがないこともあり、何も装着していない状態だと上下がわかりにくいかもしれない。ちなみにiPhoneと異なり、画面回転ロックをかけていなければ、iPadは上下左右を問わず使える。ホームボタンがないので、上下逆でもロック解除さえすれば気にならずに使える。

端子類はUSB-Cのみ。これでいいんだよ

 インターフェイス類も、iPad Airに似た進化をしている。iPad mini(第5世代)に比べると、イヤホンマイク端子がなくなり、Lightning端子の代わりにUSB-C端子になっている。お店のレジなど業務に使っているiPad miniを更新しよう、となったとき、アクセサリ類を使い回せない可能性があるので注意が必要だ。その一方で高速なUSB 3.1機器を使えるようになっている。

ホームボタンがなくなってトップボタンと音量ボタンのみに

ボタンは全て上端に集約。こちらにはスピーカーもある

 今回のiPad mini(第6世代)はTouch ID内蔵のホームボタンを廃していて、ボタン類は上端の電源ボタン(正式名称はトップボタン)と音量調整ボタン×2個だけとなる。生体認証としてはこのトップボタンが指紋認証センサのTouch IDを内蔵していて、ロック解除などの認証に使える。

 ちなみにホーム画面表示は画面下端からの上スワイプだ(この操作はホームボタン搭載iPadでも使える)。スクショはトップボタン+音量ボタンで、そこそこ押しやすい。トップボタン長押しにはSiriが割り当てられていて、電源を切るにはトップボタン+音量ボタンの長押しする。

Apple Pencilの長さがけっこうギリギリ

 これまでiPadは音量ボタンが右側面(長辺)、電源ボタンが上側面(短辺)というデザインだったが、Apple Pencilは右側面(長辺)に貼り付けることになり、そうなるとボタンを押せないので、iPad mini(第6世代)ではボタンが上端にまとめられているのだろう。ちなみに11インチiPad Proなどは、Apple Pencilを右側面に貼り付けても、右側面の音量ボタンを操作できるサイズだ。

Touch IDはマスク時代には便利だが慣れないと戸惑う場面も

トップボタンはよーくみるとフレームだけ金属で中央は樹脂か何かのように見える

 垂直的な側面フレームはiPad Proなどと同様のデザインだが、iPad mini(第6世代)はFace IDを内蔵せず、代わりにトップボタンにTouch IDを内蔵している。最新のiPad Airと同じ構成だ。

 筆者は最新世代のiPad Airは持っていないので、トップボタンのTouch IDは初めてだが、当たり前のように普通に使えている。筆者はこのトップボタンを押すのに左右の人差し指を使うことが多いが、たまに親指も使うので、左右で4本の指紋を登録している。センサ部が小さいが、いまのところ認証エラーは起きていない。

iPad ProのTrueDepthカメラ。これはこれで画面タップ&スワイプだけでロック解除できて便利

 ただ……慣れない。というのも、iPad mini(第6世代)をロック解除する操作は、「画面が消灯しているならトップボタンを押す」「画面が点灯しているならトップボタンに指を触れる(押すと消灯する)」と、画面の点灯状態によって変わる。いつでもホームボタンを押せばよかったiPad mini(第5世代)や、タップして画面を点灯させ、上スワイプすれば良いFace ID搭載iPhone/iPadとは異なる。

 手間としては、上スワイプとトップボタンを触れるのとでは大した差はない。しかしiPad mini(第6世代)の画面は、画面をタップする、通知が届く、充電を終えるなどのタイミングでも点灯するので、その瞬間にロック解除しようとして画面を消灯させてしまうことが何回かあった。ここに完全に慣れるまではまだ少し時間がかかりそうだ。

iPad mini(第5世代)のホームボタン。押すと画面点灯&ロック解除ができて便利だった

 とはいえ、Touch IDがダメとは思わず、むしろiPad miniには最適とも思う。最近は家の外ではほぼほぼマスクを着用するので、Touch IDの方が便利だ。iPhoneのFace IDはマスクをしていてもApple Watchがあればロック解除できるが、iPadはそうはいかない。実際、筆者もキーボードを使いたいときは11インチのiPad Proを持ち歩くが、家の外ではFace IDが使えないのでけっこう面倒だ。持ち出す機会の多いiPad miniは、Touch IDの方が適しているだろう。

ディスプレイは第5世代からちょっと拡大。長辺は長く、でも短辺は短く

本体は縮んだが、ディスプレイは第6世代(右)の方が縦に長くなっている。

 iPad mini(第6世代)のディスプレイは、8.3インチの2266×1488ピクセルだ。第5世代が7.9インチの2048×1536ピクセルだった。だいたい長辺側が15mmくらい長くなり、短辺側は5mmくらい細くなった形になる。ピクセル密度は326ppiで変わっていない。

 iPad mini(第6世代)の縦横の比率(アスペクト比)はだいたい3:2(1.5:1)だ。第5世代や無印iPadなど、ほとんどのiPadは4:3(1.33:1)なので、それに比べるとけっこう細長い。ちなみに11インチiPad Proと10.9インチのiPad Airも4:3ではなく、ほぼ印刷物の白銀比、√2:1(1.41:1)だが、iPad mini(第6世代)はそれよりも細長いことになる。しかし動画で一般的な16:9ほどは細長くない。

iPad mini(第6世代)で撮影したゲームのスクリーンショット。左右に黒枠ができている。黒枠以外の表示は11インチiPad Proに近い(けど微妙に違う)

 例えばiPad mini(第6世代)のアスペクト比に対応しない横画面タイプのゲームアプリだと、左右に少しだけ黒枠付きで表示される。例えば先日リリースされたばかりの「ポケモンユナイト」は黒枠付きだ。しかし同ゲームも11インチiPad Proは黒枠なしの全画面表示ができているので、こうしたアプリもすぐにiPad mini(第6世代)のアスペクト比に対応しそうだ。

 細長いので、対応ゲームでは視界が広くなるので有利になるケースがありそうだ。また、16:9の動画も見やすい。しかし雑誌やマンガなどを縦画面で全体表示させようとすると、狭くなった左右に合わせられるので、第5世代よりも小さく表示されることがある。ここは少しだけ残念なポイントでもある。

プロセッサーはA15 Bionic。GPUはiPhone 13 Proと同じ5コア仕様!

 廉価なiPadは旧世代のプロセッサーを搭載することが多いが、今回のiPad mini(第6世代)は同時発売のiPhone 13シリーズと同じ、最新チップのA15 Bionicを搭載する。しかもiPhone 13のProモデルと同じ、5コアGPUのA15だ(iPhone 13/13 miniは4コア)。ディスプレイがiPhoneよりデカいので、高性能GPUは非常に頼もしい。

 早速、ベンチマークアプリ「Geekbench 5」で測ってみた。いずれも最新OS、最新バージョンのアプリを使い、バックグラウンドタスクなどの影響を避けるため、4回測定して一番大きな数値を採用している。比較対象に先日測定したiPhone 13シリーズと前モデルのiPad mini(第5世代)を掲載している。

Geekbencスコア。iPad mini(第5世代)も古い割には頑張っている

 CPUのクロックスピードは2.93GHzと、同じA13 Bionicを搭載するiPhone 13シリーズの3.23GHzより低い数値だった。システムメモリは3.78GBで、4GBを搭載してナンボかをGPUなどに占有されている状態と見られる。これはiPhone 13/13 miniと同等だが、iPhone 13 Pro/13 Pro Maxの6GBよりは小さい。

 クロックスピードの影響か、CPUのシングルコアスコアはわずかに低く、2.99GHzのA14 Bionic搭載のiPhone 12シリーズに近い。一方のマルチスコアスコアはiPhone 13シリーズよりもわずかに高い結果となった。

 GPUの「Compute」のスコアは、iPhone 13 Proに近い数値となった。グラフィック性能はiPhone 13 Pro/13 Pro Max並と言って良いだろう。ただ、M1チップ搭載のiPad Proの方がベンチマークスコアは上のようなので、iPad最速とは言えない。

 前モデルのiPad mini(第5世代)は2019年3月発売だが、プロセッサーは2018年秋モデルiPhoneと同じA12 Bionic搭載なので、iPad mini同士で比較すると、3世代の差があり、ベンチマークスコアの差も大きい。とくにGPUの「Compute」のスコア差はかなりのものだ。iPadはどのモデルも長く使える傾向があるが、このiPad mini(第6世代)も長く使えそうである。

Apple Pencilは側面に貼り付く第2世代。高いけど合わせて買いたい

側面に張り付く第2世代Apple Pencil

 iPad mini(第6世代)は第2世代のApple Pencilに対応する。第1世代はLightning接続で充電・ペアリングするので、USB-CになったiPad mini(第6世代)では使えない。第2世代Apple Pencilは、iPad mini(第6世代)の側面に貼り付けて充電・ペアリングをする。

 iPadOS 15で追加された「スクリブル」や「クイックメモ」もあり、そのほかにも膨大な数のApple Pencilを活用するアプリがあるので、Apple Pencilは是非とも欲しいところだ。使い勝手が良いし、使い道も多い。

Apple Pencilとロジクール製の「CRAYON」(9680円)。CRAYONは筆圧非対応だが、第1世代・第2世代Apple Pencilのどちらの代用としても使えるメリットがある

 第2世代Apple Pencilの価格は15,950円。ちょっと高いが、価格相応の価値はある。ロジクールの「CRAYON」などの互換ペンでもよいが、互換ペンは筆圧対応していなかったりするので、できればApple Pencilを選びたいところでもある。ちなみに互換ペンではないただの静電容量ペンは、アプリがApple Pencilとして認識せず、対応アプリのメリットを活かせなかったりするので、買うときはちゃんと確認しよう。

Smart Keyboard Folioは磁石で貼り付けるだけで充電もペアリングも不要なのでほんと便利。iPad miniにはないけど……

 Apple Pencilは側面に貼り付くが、ほかのiPadと異なり、貼り付くタイプの純正キーボードは用意されない。このサイズのキーボードなんて、と思われるかもしれないが、このくらいの幅のキーボードも慣れればそこそこタッチタイピングできるものでもある。

 iPad miniはiPadとしては最小サイズだ。ソフトウェアキーボードを表示すると、残りの表示領域はさらに狭い。ソフトウェアキーボードを表示せず、画面を広く使いながら文字入力できるキーボードとiPad miniの相性は良いとも言える。前モデルまではサードパーティがBluetoothキーボード付きのケースを販売していたので、今回も出てくることを期待したい。

カメラはシングル。インカメラは超広角仕様でテレビ電話時に自動トリミング追従も

メインのカメラ。LEDフラッシュは第5世代にはなかった

 背面のメインカメラは12メガピクセルでf/1.8。第5世代は8メガピクセルでf/2.4だったので、かなり進化している。LEDフラッシュも内蔵するし、iPhoneなどでもお馴染みのスマートHDR 3も搭載している。

 しかし同じA15 Bionicを搭載しているiPhone 13シリーズはさらに進んだスマートHDR 4なので、iPad miniもそこまでいっていないのは残念だ。また、フォトグラフスタイルやシネマティックモードといった機能も搭載しない。だが、そもそもシングルカメラなので、その辺りの機能は無理なのだろう。

 フロントカメラは12メガピクセルでf/2.4。第5世代の7メガピクセル、f/2.2より解像度が上がったが暗くなっている、と見せかけて、実は全くの別物で、iPad mini(第6世代)のフロントカメラは超広角カメラとなっている。そのため、自撮り時は標準でデジタルズームがかかっていて、フル画角にするとすごい絵になる。iPadを掴む腕がかなり見え、遠近感が強調され、なんというかすごい絵なのだ。

フロントカメラ。実は超広角という尖った性能を持つ

 なんのための超広角かというと、「センターフレーム」という新機能のためである。「センターフレーム」はテレビ電話アプリなどが実装する機能で、スタンドなどで自分に適当に向けておくだけで、画角範囲内で自分の姿を自動追従してデジタルズームしてくれる。立ち上がったり、左右に歩いたりしても追ってくれるのが面白い。

 iPhoneでテレビ電話をするときは、手に持つことが多いので、こうした機能は不要だ。一方のiPadの場合、卓上において、被写体はある程度、離れることができる。画面が大きいからそれでも相手の顔が見える。しかしそういった撮影環境だとカメラの中央がわかりにくくなるし、純正のフォリオなどだと仰角が強く、ちょっと上を撮ってしまう。そこでセンターフレーム対応のテレビ電話アプリなら、自動追従して被写体の人物を中央にしてくれる。さらにフレーム内に別の人が入ってきたら、ズームアウトして全員映るにしてくれる。テレビ会議が多い昨今では非常に面白い機能だ。

ストレージは64GBと256GBの2種類のみ

筆者のiPadのストレージ状況。64GBだと足りないけど、128GBでも十分という中途半端な状態。大きなアプリを消せば64GBに収まりそうだけど、いろんなゲームを楽しみたいのである

 ストレージ容量のラインナップは、64GBと256GBの2種類だけだ。最新のiPad Air、iPadと同じである。iPad Proが128GBから2TBまで5種類を用意しているのと対照的に、バリエーションが絞られている。

 動画ストリーミングアプリや基本無料マンガアプリなど、ローカルにデータを保存しないタイプのアプリ利用が中心なら、64GBで十分だ。手書きメモアプリなど、仕事に使うようなアプリもそれほどストレージは消費しない。

 しかしゲームアプリは意外と大きいので、多くのタイトルを楽しみたいならば、256GBがおすすめだ。また、動画も書籍もローカルに保存するサービスを使っているなら、256GB推奨だ。あとからストレージを足すことはできないので、迷ったら大きい方を選びたい。

 カラーバリエーションはスペースグレイ、ピンク、パープル、スターライトの4色。今回筆者が買ったスターライトは、ちょっとゴールドにも近いシルバーという感じだ。パープルなんかもいい色合いだが、どれも写真では伝わりにくい色合いでもあるので、カラーにこだわりがある人は、できれば店頭で実物を見て選んで欲しい。

 あとはWi-FiモデルとWi-Fi+Cellularモデルの2つが用意される。セルラーモデルは5G対応だ。nano-SIMとeSIMに対応する。データ専用なので音声回線を入れても音声通話はできず、待受はしないのでデュアルSIMも対応しない。

 Wi-Fiモデルとセルラーモデルの価格差は1.8万円。結構大きいが、外出先でWi-Fiモデルの不便さを解消したい人は、セルラーモデルを選んでも良いかもしれない。テザリング運用に対してセルラーモデルは移動中なども常時接続なので、メッセージアプリやニュースアプリなどの通知が受けられるというメリットがある。しかし価格差が大きいので、こちらは迷ったらWi-Fiモデルでも良いと思う。テザリング運用で不便を感じたら、次回買い替え時にセルラーモデルを選ぼう。

パソコンともスマホとも違う、補完的で中間的なiPad mini

純正のSmart Folio。裏表両方を保護する。スタンドにもなり、開閉が画面点灯・消灯に連動するのも便利

 そもそもiPadがどんなものか、使ったことのない人に説明すると、「パソコンのウィンドウを1枚だけ持ち出す」という感覚に近い。しかし決してパソコンの代用デバイスではなく、パソコンが不得意な場面を補完する、そんなデバイスだ。

 iPadの中でもiPad minは、卓上で置いて使うのがメインになりやすい10インチ前後のiPadと異なり、片手で持っても負担になりにくく、カバンの隙間に放り込んで気軽に持ち歩きやすく、ノートパソコンとも補完関係を作りやすい。

 例えば病院に行くとき、ノートパソコンは持って行きにくいが、iPad miniなら持って行って待合室で暇つぶしに使ったり、電子化した健康診断データを医師に見せたりできる。こういったiPad miniに最適なニッチは、生活の至るところにある。これを見つけて埋めていくのも、iPad miniを使っている快感でもある。

 iPadはスマホを代用するものでもない。しかしiPad miniを持っていると、「大画面が必要なときはカバンからiPad miniを取り出すからいいよ」となって、スマホはコンパクトなモデルを選びやすい。

 ほかのデバイス同様、iPad miniも万人に必要なデバイスではない(そんなものはスマホくらいのものだろう)。しかし、ほかに似たデバイスが少なく、独自の魅力を持ったデバイスだ。生活にハマる人が持てば、「なんで今までコレを持ってなかったんだろう」という、スマホを最初に持ったときのような感覚が味わえる。

 iPad mini(第6世代)は、最新プロセッサを搭載するなどして、ちょっと価格帯は上がってしまい、気軽に買えるデバイスではなくなってしまった。しかし今回、このレビュー記事を読んで、「あれ、これオレの生活にちょっとマッチしない?」と感じた人は、店頭で実機を手に取ってみるか、同じ大きさの型紙を切り出して、そのサイズのデバイスってどうなんだろう、と思いを馳せて欲しい。今回の製品は、いままでiPad miniを使ったことがない人にこそ、触れて欲しいデバイスだ。