レビュー

アップル「iPhone 12 Pro Max」のカメラを試す

 2020年もiPhoneシリーズが発売された。例年よりやや遅れてのリリースとなったが、登場した4つのモデルの売れ行きは好調の模様だ。それぞれの詳細スペックは別記事を参照していただくとして、今回はカメラ機能がウリの最上位機種「iPhone 12 Pro Max」の撮影関連のインプレッションをお届けしたい。

iPhone 12 Pro Max とは

 「iPhone 12 Pro Max」は、6.7型のSuper Retina XDRディスプレイ(有機EL)を搭載している。そのため大きくてとても重たい端末だ。重量は226gとコンパクトなiPhone 12 mini(133g)のおよそ2倍近い。

 心臓部はA14 Bionicチップを搭載し、5Gに対応している。コネクターは相変わらずLightningという仕様だ。被写体との距離を測るLiDARスキャナーも採用されている。

 カメラは3つ搭載する。

  • 超広角カメラ:フルサイズ換算約13mm F2.4
  • 広角カメラ:フルサイズ換算約26mm F1.6
  • 望遠カメラ:フルサイズ換算約65mm F2.2

のトリプルカメラだ。

 トピックはメインの広角カメラに手が入ったことだ。センサーを大型化し、センサーシフト式光学手ブレ補正機能を積んだ。また望遠カメラの焦点距離が伸び、フルサイズ換算約65mmとなった。

トリプルカメラの画角をチェック

超広角カメラ

 フルサイズ換算約13mmの超広角カメラは風景撮影や室内撮影で威力を発揮する。広くて伸びやかな表現が可能だ。

 見た目より鮮やかな発色でスマホらしい写りになっている。

 右側から太陽光が入ってフレアが発生している。強烈な光には注意したいところだ。

広角カメラ

 フルサイズ換算約26mmの広角カメラはセンサーシフト式光学手ブレ補正機能を搭載して、1200万画素ながらセンサーサイズが大型化された。

 より豊かな描写が期待されるが、劇的な写りの向上は認められない。近接撮影ではボケが大きくなったことが確認できた。iPhoneらしく全体的にそつのない安定感のある写りで、誰でも失敗のない撮影が楽しめるだろう

望遠カメラ

 フルサイズ換算約65mmの望遠カメラは、旧機種から乗り換えると一番驚く部分だろう。フルサイズ換算約52mm相当から65mm相当への長焦点距離化はなかなか新鮮である。

 遠くのものをより大きく写せるので、遠景スナップやポートレートで活躍するはずだ。やや線が太く感じるがまずまずの精細感ではないだろうか

注目は使い勝手のいい望遠カメラ

 「iPhone 12 Pro Max」は、機能アップした広角カメラが大きく取り上げられるが、個人的には 望遠カメラのほうが撮っていて楽しく感じた 。フルサイズ換算約65mmという画角がもたらす遠近感とワーキングディスタンスが心地よく思うのだ。

イルミネーションの前でビー玉を持ち、それにフォーカスしてシャッターを切った。ポートレートモードではないが、焦点距離が長くなった分背景がキレイにボケる。派手目な発色と光源の年輪ボケが玉に瑕だが、65mmという長さを味わえた。ただ片手でこのようなカットを撮るのは「iPhone 12 Pro Max」だと難しい。大きく重たいため、片手でフォーカス位置をタップしてシャッターを切るのが大変なのだ(笑)
料理や小物を撮る時に望遠カメラは役に立つ。パースがつかないためモノの形が崩れないのと、被写体から離れて撮れるので自分の影が落ちるようなシチュエーションでもポジションの自由度が生まれるからだ。ラーメンを撮ったが、やや派手目な色合いと線が太い印象だ。しかしパッと撮ってSNSにアップするには問題ない写りだろう
焦点距離が長くなった分「切り取る」という感覚が顕著になる。スナップや風景撮影で新しい表現が可能になる。シャープで高精細な写りはなかなかのもの。ただ「iPhone 12 Pro Max」はやや露出過多の印象があるので、好みに応じて積極的に画面をタップして露出補正をかけたほうがいいかもしれない

ポートレートモード

 「iPhone 12 Pro Max」は広角カメラと望遠カメラでポートレートモードでの撮影が可能だ。

 どちらも「f」アイコンをタップすれば「f1.4」~「f16」までリアルタイムにボケ効果を確認しながらシャッターを切ることができる。

 撮影距離に制限があるので、Google Pixel 5などと較べると不自由に感じた。

2.5倍となる望遠カメラでのポートレートモードはいい感じだ。苦手だったガラスなど透明部分の処理も向上し、ようやく使えるようになってきたという印象だ。ショーケース内にある寿司の模型を撮ったが、自然なボケ感とガラス部分の処理がいい
バーカウンターに下がるワイングラス。さすがに透明なものが連なると境界判定が難しく画像が破綻してしまう。しかしこれでも以前のモデルよりうまく撮れるように進化しているのだ。このようなシーンではf値を操作してピントの合う範囲を深くするかポジションを変えてシャッターを切る必要がある。グラスに挿したストローが空間に溶けて消える「ストロー問題」も改善しているが、シーンによって同様に立ち位置を変えるなど工夫を求められる
インカメラでのポートレートモードももちろん可能だ。顔というか肌をやや明るく写す印象を受けた
モデル:佐藤 ようか(https://www.instagram.com/youka9999/

Google Pixel 5 との比較

 ここでポートレートモードをGoogle Pixel 5と比較してみよう。いずれも望遠カメラとなるが両モデルで焦点距離が異なっていることに留意して欲しい。

「iPhone 12 Pro Max」の方(左)が、「Pixel 5」(右)よりも明るく写っている。ややフラット過ぎる絵作りで、同時に美肌処理のようなプロセスが入っているように感じる。背景ボケはどちらも優秀だが、モデルの左にある壁付近はGoogl Pixel 5の方が自然な処理だ。また前ボケもキチンと作り出せているところがスゴい
「iPhone 12 Pro Max」(左)、「Pixel 5」(右)。真新しいビルを背景にしてモデルをあおって撮ったカットだが、どちらも優秀な写りだ。やはりこのカットでも「iPhone 12 Pro Max」はモデルの顔を見た目より明るく写し出している。境界判定は肩口にかかる窓部分をキチンと判別できずボケていない
「iPhone 12 Pro Max」(左)、「Pixel 5」(右)。ナイトモードでのポートレートモード比較もどちらもなかなかの写りを見せてくれた。色合いとしてはGoogle Pixel 5が見た目に近い。望遠レンズが長い「iPhone 12 Pro Max」はノイズ感も少なくシャープな像だ。どちらの端末もLEDのゴーストが発生している。このようなシチュエーションでは主要被写体にそれが被らないようなフレーミングが求められる

ナイトモード

 夜間など低照度での撮影はGoogle Pixelシリーズの「Night Sight」が非常に優秀で、しっかりと端末を固定すれば天の川も美しく撮影できることが有名であった。

 iPhoneは長らく後塵を拝していたが、近ごろはメキメキと画質を向上させAndroidに比肩するような感じになってきた。

 ただナイトモードをフォトグラファー自身がそれを発動することはできず、低照度下で端末からリコメンドされてはじめて使うことができる。Google Pixel 5などのように自由にモードをオンオフできるとうれしいのだが。

Google Pixel 5 との比較

 両端末とも3つのカメラおよび焦点距離で夜間シーンを撮影してみた。場所は世田谷・二子玉川の楽天本社前だ。

 ちなみにGoogle Pixel 5に楽天モバイルのeSIMを設定して使っているが、先日晴れて5G対応となり、この場所でコンスタントに300Mbps程度の速度が出ていた。

 作例はいずれも「iPhone 12 Pro Max」(左)、「Pixel 5」(右)。

両端末とも超広角カメラでのカット。どちらも端末の指示通りの手持ちでホールドして撮った。Computational Photography(コンピュテーショナル フォトグラフィー)のおかげで手ブレはない。実際の色味は2カットの中間くらいであろうか
広角カメラでのカットはGoogle Pixel 5の方が描写がいい。スケートリンクの文字や歩道のタイルなど精細感とクリア感がある。iPhone 12 Pro Maxは大型センサーとセンサーシフト式光学手ブレ補正機能を搭載しているのだがちょっと残念な結果である。また両端末とも空にLEDのゴーストが発生している。はじめは「星も写った」と思ったのだが……
望遠カメラでは形勢逆転で「iPhone 12 Pro Max」の描写がいい。やはり光学的なレンズはデジタルズームよりキレイに撮れるようだ。文句のつけようがない描写である。ただGoogle Pixel 5の写りもかなり良いので、もし同じ光学的な3眼カメラだったら……と思わせる

Apple ProRAW

 「iPhone 12 Pro Max」、「iPhone 12 Pro」は標準でRAW撮影(DNG形式)にようやく対応した。今までもサードパーティーアプリによる撮影と現像は可能だった。

 「設定」画面でモードを解禁すれば撮影画面にRAW撮影オンオフのアイコンが現れ、それをオンにして撮ればカメラロールにRAWデータが保存される。1枚が25MB程度の容量になるので、たくさん撮る場合はストレージ残量には気をつけたい。

 新製品発表の動画を見て「お、Apple ProRAW スゴそうだ」と思って「iPhone 12 Pro Max」を買った人も多いはずだ。しかし残念ながら現在のところ一般的なDNGと変わらない。

 たしかにホワイトバランスやHDR的な処理が施された手が入ったデータにはなっているようだ。カメラロールの編集や、Googleのスマホ写真アプリ「Snapseed」などで現像処理ができるが、特に他のDNGファイルと同様の処理ができるだけ。APIをサードパーティーに公開しているそうなので、Computational Photographyを実感できる処理や、斬新な使い勝手などができるアプリの登場に今後期待したいところである。

カメラロールでの編集画面。特に目新しさはない
Googleのスマホ写真アプリ「Snapseed」でのRAW現像シーン。直感的で使いやすい
「iPhone 12 Pro Max」のRAW(DNG)を「Snapseed」で現像した。「iPhone 12 Pro Max」のデフォルト画像はやや彩度が高く露出過多の場合が多いので、自分なりに現像処理して好みの絵に作り上げよう
Mac版「Adobe Photoshop Lightroom Classic」で、「iPhone 12 Pro Max」のカメラで撮影したApple ProRAW(左)と、iOS版「Adobe Photoshop Lightroom Mobile」で撮影したRAW(DNG)を(右)比較してみた。「iPhone 12 Pro Max」のカットはホワイトバランスやコントラストなどだいぶ調整されているイメージに感じる。レタッチ耐性はほぼ同様だ。よりメリットを感じることができるアプリの登場が待たれる

作例

「iPhone 12 Pro Max」は重さと大きさに目を瞑れば写真撮影にオススメできるスマートフォンだ。新搭載の望遠カメラがとてもいい。65mmという焦点距離は「iPhone 12 Pro」では味わえない画角だ。ポートレートや静物、スナップ撮影に好適だ
超広角カメラでナイトモードが使えるようになったのもグッドニュースだ。ただこのモードが威力を発揮するイルミネーション撮影などで盛大にゴーストとフレアが発生するのが難点だ。「星がたくさん写った」と思ったらゴーストだったりするのだ。それを避けてフレーミングすると面白くないカットになってしまうことも多々あった。次期モデルでは光学的に、既存モデルにはソフトウェア的にそれらを打ち消すような何かをしてほしいところである
ポートレートモードはようやくGoogle Pixel 5に追いつきそうな気配だ。単純な被写体の境界判定はだいぶ向上したように思う。65mmの望遠カメラとの組み合わせは印象的なカットを撮影できるので、さまざま被写体を撮って良さを実感して欲しい
「カメラ機能」がクローズアップされた「iPhone 12 Pro Max」だが、個人的には現在のところ望遠カメラの65mmがいいかな、と思う程度である。髪の毛の描写が実にいい。しかし広角カメラのセンサー大型化とセンサーシフト式光学手ブレ補正機能、Apple ProRAWなど、前モデルから機種変更するほどではないと感じたのが正直なところだ

まとめ

 「iPhone 12 Pro Max」のカメラ機能はそつなく仕上がっていると思う。

 絵作りはSNSを意識した、色濃い目で浅めにグレーディングされた仕上がりだという印象で、万人受けする写真が誰でもカンタンに撮影できるようになっている。

 もし今使っている機種が2世代以上前だったらスイッチを考えてもいいかもしれない。

 購入時には実際に手に取って、大きさと重さ、レンズ部の出っ張りなど、ポケットへの収納性も確認することをオススメしたい。

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