レビュー
スマホで撮る「水族館」「花火」、内田ユキオ氏に聞くそのワザとは
2019年8月14日 06:00
スマートフォンで撮る夏の被写体と言えば「花火」。ひとつひとつの花火は一瞬で咲き、消えてしまうこともあって、「うまく撮れた」と感じることはさほど多くない。
はたまた「水族館」は夏のお出かけ先として人気スポットのひとつでもある。スマートフォンでもそれなりに撮影できるスポットだ。
そうした中で、スマートフォンでも一工夫すれば、より良い写真を撮れると語るのは写真家の内田ユキオ氏。
本誌では今回、ライカを知る写真家として、ファーウェイの「P」シリーズのアンバサダー活動も手がける同氏とともに、花火や水族館を撮影をする機会に恵まれた。ファーウェイ主催のメディアツアーであり、ライカ監修のレンズを搭載するSIMロックフリーのAndroidスマートフォン「P30」での撮影となったが、マニュアル(機種によってはプロモードなど)での撮影ができる機種で気軽に試せる、内田氏オススメの設定をご紹介しよう。
水族館で試したい「電球」設定
内田氏がオススメしてくれた、スマートフォンで気軽に撮れる手法のひとつは、マニュアル設定で、ホワイトバランスを「電球」にするというもの。暖色の灯りのもとでの撮影に適した「電球」にすることで、水槽の中の風景が、より深い青色に染まり「まるで海の中で撮ったような写真になる」と内田氏。
なんでもかんでも「電球」設定で撮れば良いわけではないよう。たとえばクラゲを撮ってみたところ、灯りの入れ方もまずかったのか、何が写っているかよくわからない写真になってしまった。そこで内田氏がHDR撮影をアドバイスしてくれたので、灯りを入れる形で撮ってみたところ、クラゲの姿や動きがよくわかる写真になった。
マニュアルでピントを調節できる機種であれば、ズームと組み合わせて、より小さな被写体にチャレンジするのも楽しいかもしれない。いわゆる“置きピン”と呼ばれる手法で、ピントがあう場所を決め打ちしておき、そこに被写体が来ればシャッターを切る。運の要素も多く、少し時間もかかってしまい、筆者も今回、会心の出来とまではいかなかったが、クリオネの撮影に熱中できた。スマートフォンながら、カメラの楽しさを味わった瞬間だ。
花火は運の要素も多々、でもチャレンジが楽しい
内田氏によれば、花火をスマートフォンで撮る際、失敗の主な原因となるのは「手ブレ」「煙」「シャッタータイミング」「カメラの設定」だという。
最近の機種では手ブレを抑える処理が格段に進化していることもあって、内田氏は「手ブレはAI任せで良い」とコメント。煙も風の有無が多いが、心がけとしては、打ち上げ開始から間もない時間帯であれば、上空の煙も少ないとのことで、前半戦に勝負をかけたほうがよいという。
シャッタータイミングやカメラの設定については、標準モードであればオートになるため気にせずシャッターを切るだけとなるが、もしマニュアルで撮影するのであれば内田氏のオススメは「ISO50~100、シャッタースピードは0.5秒~1秒、ピントは最も遠い望遠(風景)、ホワイトバランスは蛍光灯」とのこと。
一般的な花火写真のコンクールでは、大小さまざまな花火を一枚に収めているものがある。こうした写真は多重露光と呼ばれる手法とのことで、スマートフォンでは対応していないため、撮影できない。内田氏のオススメする設定は、シャッタースピードやシャッターを切るタイミング、あるいはホワイトバランスでより良い1枚を目指す格好だ。
ちなみに、花火にもさまざまな種類があり、写真写りの良い花火というものがあるのだという。花火は一瞬で消えていくため、オススメの設定にしたからといって、全ての写真が良くなるわけではない。内田氏は「当日の環境にあわせて、マニュアル設定とオートを切り替えて撮影したり、マニュアル設定のISO感度やシャッタースピードを調節してみてほしい」とアドバイスを送る。
筆者が今回体験した花火では、終盤の場面で、白飛びする写真ばかり量産してしまった。花火大会として盛り上がる場面であり、数多くの花火が連射される瞬間はあまりに明るく、シャッタースピードがマッチしていなかったのだろう。
はたまたシャッターを切るタイミングが思いっきりズレて、暗闇を記録する写真も数多く撮ってしまった。
内田氏のアドバイスの中には「花火にクローズアップして、枠から(花火が)はみ出すくらいのものも良い写真」という言葉もあったが、これはシャッターを切るタイミングや、構図としてフレームの中にうまく花火を入れることが難しく、マニュアル撮影の初心者である筆者には今後の修行が必要そう。
そうした中で内田氏から「よく撮れてますね!」とお褒めの言葉をもらった写真も、数枚、記録することができた。
写真をよく知る方々にとってはまだまだと思われるだろうが、それでもマニュアル撮影の楽しさを触れた筆者。スマートフォン側の機能として、徐々にマニュアル撮影が取り入れられていることは知っていたが、それを使いこなす術はちょっと小難しく感じていただけに、今回の体験で、スマートフォンのカメラだからこそ、いつでもどこでも気軽に写真の楽しさを味わえるように思えた。
今回は、ISO感度が幅広く、接写の強さや、アパーチャーモード、プロモードなどを備える「P30」で撮影したが、機種によってはホワイトバランスだけを切り替えられるものなど、気軽にカスタマイズできる機能を備えるAndroidスマートフォンは数多い。お出かけの際には、さまざまな場面で写真を楽しむのも良さそうだ。