レビュー

「iOS 10」ファーストインプレッション

「iOS 10」ファーストインプレッション

iMessage、ロック画面、通知センター~使い勝手を進化させる新機能が続々

 9月14日午前2時ごろよりiPhone、iPad、iPod touch向けのiOSの最新版、「iOS 10」の配信が開始された。例年9月は「新iPhone発表」翌週前半に「新iOSの配信開始」、そして、その週末に「新iPhone発売」というパターン。今年も同様のスケジュールだ。

 「iOS 10」そのものは2016年6月、開発者向けイベント「WWDC 2016」において発表され、その段階で主要な機能も公表されていたが、いよいよ一般ユーザーも利用できる環境になった。今回はファーストインプレッションをお送りする。

 なお、こうしたメジャーアップデートでは、普段利用しているアプリで不具合などが起こる可能性がある。どうしても欠かせないアプリがある場合、アップデートの前にそうしたアプリがiOS 10で動作するかを確認しておこう。

 またMVNOでの利用に支障がでる可能性もある。すでにmineoやIIJmioなどは、アップデート配信直後から正式配信版のiOS 10でも動作することを確認し、公式ブログなどで公開している。MVNOユーザーはそうした状況を確認してからアップデートしよう。

対応機種はiPhone 5以降

 iOS 10にアップデートできるのは、iPhone 5以降、iPadは第4世代とAir/Air 2、iPad Pro(両サイズともに)、iPad mini 2以降、第6世代iPod touchだ。

 iOS 9に比べると、iPhone 4s、iPad 2と第3世代iPad、初代iPad mini、第5世代iPod touchがサポートから外れている。ちょうどApple A5チップ搭載機がサポート外となった格好だが、最後の32ビットアーキテクチャのApple A6チップ搭載機(iPhone 5/5c、第4世代iPad)は残留している。

iOS 10のアップデート画面(iPhone 6s Plus)

 対応機種であれば、「設定」アプリの「一般」―「ソフトウェアアップデート」からiOS 10へアップデートできる。iPhone SEではアップデータの容量は1GBほど。ダウンロード中は操作できるが、数十分かかるアップデート中は、アプリの使用はもちろん電話もできない。就寝前など、一定時間、操作しないタイミングで行うのがベストだ。

 アップデート配信直後は、混雑の影響か、Wi-Fi経由でのiOSデバイス単体アップデート失敗の報告が相次いだ。失敗してもパソコンのiTunesにつなぐことでアップデートは完了させられるケースが多いよう。パソコンを持っていない人は注意が必要。筆者は混雑のおさまった5時ごろからアップデートを開始し、すでに8台ほどのiPhone/iPadを単体アップデートしているが、今のところ失敗はしていない。

 あわせてApp Storeのアプリもアップデートの嵐だ、こちらも含め、全ての環境が整うまで時間がかかる。

 iOS 10の初期バージョンはiOS 10.0.1だ。iOSをアップデートすると、ペアリングしているApple WatchもwatchOS 3へアップデートできるようになる。

 このほか、最新世代のApple TVのtvOSもアップデートが配信されている。一方、macOSは「9月21日登場」とのことだ。

目玉のひとつ、「iMessage」の強化

iMessageのステッカー機能

 iOS 10では「メッセージ」アプリから使うアップル独自のメッセージングサービス「iMessage」が強化されている。

 手書きやアニメーションエフェクトによるメッセージ送信、「いいね」などの簡易返答「Tapback」、絵文字変換などが追加されたほか、機能拡張アプリやステッカー(LINEで言うスタンプ)といった機能も追加され、サードパーティのコンテンツプラットフォームとしての側面を持つようにもなった。

メッセージにアニメーションエフェクトを付けられる

 メッセージの入力欄に「カメラ」や手書きの「Digital Touch(デジタルタッチ)」に加え、アプリのアイコンが表示される。そのアイコンをタップすると、ダウンロードした拡張アプリやステッカーを使ったり、iMessageアプリ/ステッカーのストアにアクセスしたりできる。まだコンテンツ数は少ないが、一部既存アプリも対応済だ。ちなみに筆者がチェックした時点では、猫のステッカーは8個、犬のステッカーは9個と、犬派の方が若干優勢なようだ。

 ただ、依然としてiMessageはiOS機器とMacでしか使えず、AndroidやWindowsでは使えない。筆者の周辺では、とてもiPhoneの利用率が高いが、Androidユーザーももちろんいる。こうした仲間内での連絡にiMessageを使うことはない。iOS 10の主要なアップデートとして追加された新機能ながら、これで友人と会話できないのは残念だ。

iMessageのストア。ステッカーと拡張アプリが配信されている

 しかしiOS 10でiMessageがステッカーやアプリなどと連携することは、「朗報なのか」と少し期待してしまう。iMessageがアップルにとって収益をもたらすプラットフォームとなれば、iPhoneやMacユーザーだけではなく、さまざまなユーザーにも利用してもらえる環境のほうが収益増に繋がる。つまりAndroid版やWindows版を作る意味も出てくるはずだ。

 すでにLINEやFacebook Messenger、あるいは海外で普及しているさまざまなメッセンジャーアプリと肩を並べて戦えるかどうかは別の議論になるだろうが、こうした点でもiOS 10以降のアップルの動きに注目していきたい。

アップルの「マップ」強化

マップアプリ。地下通路も表示されているなど、初期に比べると情報が充実した

 標準の「マップ」アプリもUIが変更され、何も入力していなくても、よく行く目的地などが提案されるようになった。また、移動経路上のスポット検索もできる。

 また配車やレストラン予約をサードパーティ製アプリで利用できるようになったとされているが、日本で使える配車アプリはない。現段階では、海外のアプリの状況として、Uberは非対応で、北米で人気のLyftが対応している模様だ。

 さらにアップルのWebサイト上では、日本の交通機関の乗換検索や運賃比較に対応し、地下にある駅や路線なども表示できるようにあるとアナウンス。ただし「まもなく登場」とされ、現時点では乗換検索はまだ利用できない。

 これまでiOSでは「Googleマップ」デファクトスタンダードであり、サードパーティ製のカレンダーやグルメアプリでも、Googleマップを連携して起動できるものが多い。しかし今回、乗換検索が利用できるようになればGoogleマップの代わりに利用したくなる場面が増えるのではないだろうか。とくにバックグラウンドで動作する音声ナビやApple Watchでのナビ機能は、たとえばポケモンGOのプレイ中にも使えるので、なかなかオススメだ。

通知の表示形式とウィジェットが大きく変更

通知センター

 画面上部から引き出す「通知センター」やロック画面上に表示される各アプリの通知のインターフェイスも変更が加えられた。

 カード型デザインで表示されるようになり、iPhone 6s/6s Plusなど3D Touch対応機種ではそのカードをプレスすることで、通知の内容をプレビューしたり、簡易的に返信したりできるようになった。

通知のプレビュー。画像付きのリッチな表示
編集長からのレビュー記事依頼メッセージへの簡易返信

 ちなみにiPhone 6s/6s Plusは指紋認証センサー「Touch ID」の処理速度が速すぎて、ロック画面がほとんど表示されないことが多いが、iOS 10では「卓上などから持ち上げるとロック画面が表示される」という機能が追加されている。しかしこの機能は、モーションコプロセッサーを内蔵し、常時、加速度センサーを駆動しているiPhoneのみ利用できるようで、過去のモデルであるiPhone 5sなどでは使えない。iPhone 6s/6s Plus以外は、「ホームボタンを押した瞬間に指を離す」ことでロック画面が表示できるので、そちらが代替手段になるだろう。

ロック画面

 ロック画面の操作も変更された。右にスワイプすると「今日の表示」と呼ばれるウィジェット画面が、左にスワイプするとカメラが起動するようになった。ロック画面からウィジェット画面や通知センターなどを表示するかどうかは、「設定」アプリの「Touch IDとパスコード」で設定が可能だ。

 ロック画面でロックを解除するには、iOS 9までは右スワイプ操作が割り当てられていたが、iOS 10ではホームボタンを押す操作となっている。

ウィジェット

 iPhone 6s/6s Plusなど3D Touch対応iPhoneでは、ウィジェットがあるアプリのアイコンをプレスすると、ウィジェットが表示され、そこからウィジェット画面にウィジェットを追加したりもできる。

 ウィジェット対応アプリもかなり増えている。ウィジェットの活用は、iOS 10を快適に使いこなせるかどうかの重要な要素になりそうだ。

 ステータスバーを下にスワイプして引き出すと、標準で「通知センター」が表示される。前回、ウィジェット画面を表示していても、次にスワイプしたときは「通知センター」表示になるようになっている。

ウィジェット画面(今日の表示)

 さらに「通知センター」を右にスワイプしたときに表示されるウィジェット画面は、ホーム画面の1ページ目を右にスワイプしたときに表示される、ホーム画面「0ページ目」相当のウィジェット画面と共通化している。正確に言うと、微妙にUI要素が異なるが、両者は同一のもののようで、別々にカスタマイズすることはできない。

 画面下部からスワイプして引き出す「コントロールセンター」もデザインなどが変更されている。基本的にできることは変わらないが、音楽コントロールは別画面となり、左右にスワイプして切り替えるようになった。音楽コントロールの表示に余裕が出たおかげで、アルバムアートワークなんかも見やすくなっている。

写真アプリに「メモリー」

 標準の「写真」アプリには、「メモリー」という新機能が追加された。「メモリー」ではストレージ上の写真を解析し、自動で分類してくれる。

Siriも強化された

 音声コマンドによるコンシェルジュ機能「Siri」も、サードパーティ製アプリと連携する機能が追加されている。Siriに「何ができるの?」と聞くと、いろいろな音声コマンドが表示され、最も下にサードパーティ製アプリのコマンドがある。

 ただ14日朝の段階では、筆者が利用する200近いアプリのうち、Siriに対応しているのはFacebookとTwitterだけ。それもこの2つのアプリは以前からSiriでの投稿が可能であり、現状ではiOS 10になったことによる機能強化は、残念ながら実感できない。ここはアプリの充実を待つしかないが、今後、VoIPアプリや支払い関連アプリ、メッセージアプリなどもSiriから使えるようになるようなので、対応アプリの充実に期待したい。

細かな変化も

ホーム画面の編集モード。標準アプリも一部を除き消去できる

 地味なところでは、標準アプリの一部を削除することが可能になった。削除方法は一般的なアプリと同じで、ロングタッチして編集モードに切り替えてから、左上の「×」をタップする。

 一度削除した標準アプリは、App Storeで再ダウンロード可能だ。しかし再ダウンロード時、通信がほとんど発生しなかった。削除されたのは見た目(アイコン)だけで、アプリ本体はそのままの可能性もある。iOSの画面上では、「削除」ではなく、「ホーム画面から取り除く」と表記されている。

 キーボードのクリック音やロック音なども、わずかな変化がある。個人的な印象としては、全体的に音がかわいらしくなった。普段、どちらも消音にしていても、一度は新しい音を聴いてみていいだろう。キーボード関連ではこのほか、「最近使用した住所」や「カレンダーの予約状況」などに応じた予測を行うようになったとのことだが、アップデート直後の段階では、あまり変化は感じられない。

 「電話」アプリは地味ながら大きな強化として、「留守番電話(ビジュアルボイスメール)のテキスト化(ベータ版)」、「迷惑電話識別アプリによるアラート機能」、「サードパーティ製VoIPアプリの受話サポート」などの機能が追加されている。

Split ViewによるWeb2枚表示

 「Split View(スプリットビュー)」対応のiPadでは、「Safari」のタブを同時に2枚、横並びに表示することが可能になった。従来のスプリットビューでは同一アプリの2ウィンドウ表示はできなかったので、ここは地味に便利なポイント。開きたいリンクをロングタッチして「Split Viewで開く」を選ぶか、開きたいタブを画面の右側にドラッグすることで、分割表示するようになる。

新機能の「ベッドタイム」。早く使いたい(寝たい)

 「時計」アプリには、目覚まし専用の「ベッドタイム」という機能が追加された。これは起床時間、起こす曜日、何時間寝るか、就寝の何分前に通知するか、目覚まし音を指定できる、夜寝るときに特化したアラーム機能だ。睡眠分析も表示するようだが、「時計」アプリ自体にアクティビティトラッキングなどの睡眠計測機能はないようで「ヘルスケア」対応のアクティビティトラッカーやアプリのデータを表示するよう。

ミュージックアプリ

 標準の「ミュージック」アプリでは主にユーザーインターフェイスが変更され、やや「Apple Music」を目立つ格好となった。Apple Musicを使わない人は、「設定」アプリの「ミュージック」から「Apple Musicを表示」という設定をオフにすることで、「ミュージック」アプリからApple Musicの表示だけ消すことができる。

 このほか「HomeKit」対応のIoT機器をコントロールするためのアプリ「ホーム」が追加されている。HomeKitについては、自宅に設置しているApple TVやiPadがハブとなり、HomeKit対応機器とiOS機器を中継して遠隔操作できるようになるとのことだ。

Apple WatchはwatchOS 3に

 iOS 10にアップデートすると、ペアリングしているApple WatchもwatchOS 3へアップデートできるようになる。Apple Watchのアップデートも時間があるときに行いたい。

新デザインの文字盤。
新アプリの「呼吸」。リラックスしたいときに使う

 watchOS 3ではローカルアプリの起動速度などのパフォーマンスが向上し、側面ボタン(Digital Crownではなく通常のボタンの方)にアプリショートカットの「Dock」が割り当てられた。この側面ボタンは、従来、連絡先を呼び出すショートカットだったが、個人的にはApple Watchをコミュニケーションの起点にすることは少なかったため、今回の変更は嬉しい。

 アクティビティの共有や車いす使用者のアクティビティトラッキング、新しいワークアウトアプリやリラックスアプリ、iOSに合わせたメッセージアプリやHomeKitアプリのアップデートと追加、緊急発信機能(サイドボタン長押しなので誤操作に注意)などの機能も追加されている。

 「Apple Watchを身につけていると近くのMacのロックが自動解除される」という機能もあるが、macOS側のアップデートがまだなので現時点では利用できないようだ。

 これらのwatchOSのアップデートは、初代Apple Watchでも利用可能だ。今秋発売のApple Watch Series 1/2は、初代に比べてデュアルコアプロセッサーが搭載されるなど処理能力が強化されていて、ローカルアプリの動作速度は向上していると見られるが、Dockによるアプリ切り替えなどは初代Apple Watchでも十分に価値のある新機能だろう。

Dockの編集はiPhone側の「Watch」アプリから
文字盤の編集もiPhone側アプリからできるように
文字盤を追加できる「文字盤ギャラリー」
Apple WatchのDock画面

使い勝手に影響のあるアップデート

 iOS 8→iOS 9はiPadのSplit View対応など、一部機種や一部アプリにしか影響のないアップデートだったが、今回のiOS 10は通知センターやウィジェット画面の変化など、ほとんどの人の使い勝手に影響するアップデートだ。

 ロック画面関連は特に使い勝手が変わっており、最初は戸惑う人も多いだろう。だが、決して使いづらくなっているわけではない。なかでもウィジェット画面(今日の表示)へアクセスしやすくなっているので、ウィジェットの使いこなしは重要になってきそうだ。
 また、プレス操作の通知のプレビュー表示や簡易返信がわりと便利。3D Touchが利用できるiPhone 6s/6s Plus、iPhone 7/7 Plusではプレス操作の使いこなしもポイントとなる。

 見た目や操作の変更が多いので慣れが必要かも知れないが、iOS 10は使い勝手を向上する数々の新機能/変更を含むアップデートだ。環境が許すならば、はやめのアップデートでiOS 10がもたらす新たな体験を楽しんで欲しい。

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