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スキャンするだけでクラウドに保存、新サービス「ScanSnap Cloud」
PCやスマホ不要、原稿サイズで保存先を自動振り分け
(2015/11/25 13:15)
PFUは、ScanSnapのiXシリーズ向けに、スキャンするだけでデータを各社のクラウドサービスに保存できるサービス「ScanSnap Cloud」を11月25日より開始する。「ScanSnap Cloud」の利用は無料で、対応機種は「iX500」「iX100」の2機種。販売済みの製品を含め、最新のファームウェアで同サービスに対応する。
「ScanSnap Cloud」は、Dropboxや名刺管理のEight、会計のfreeeなど、4つの分野のクラウドサービスに、スキャナからWi-Fi経由でデータを保存できるサービス。パソコンやスマートフォン向けアプリで予め保存先のクラウドサービスを設定しておけば、スキャンボタンを押すだけの1ステップで、自動的にクラウドサービスにデータを保存できる。各クラウドサービスは個別に登録や契約をしておく必要がある。
スキャンする書類は、レシートなどの領収書、名刺、A4のオフィス文書、写真の4種類を、原稿サイズで判別する。予め設定しておくことで、領収書は会計サービスに、オフィス文書はドキュメント管理サービスにといったように、自動的に振り分けて保存が可能。すべてのスキャンデータをひとつのクラウドサービスに保存することもできる。切り出しや補正といった従来からある最適化機能を適用でき、オフィス文書については、上部をOCRで読み取り、ファイル名にして保存する。
11のクラウドサービスで開始
サービス開始時点で10社が提供する11のクラウドサービスと連携できる。会計・個人資産管理分野では、「Dr.Wallet」「クラウド会計ソフト freee」「MF クラウド会計・確定申告」「STREAMED」「弥生会計」の5つ。名刺管理分野では「Eight」が対応する。ドキュメント管理分野は「Dropbox」「Evernote」「Google Drive」「OneDrive」の4つ。写真管理は「Google Photos」。
なお、「MF クラウド会計・確定申告」は12月上旬に、「弥生会計」は2016年に対応する予定。「Evernote Business」「OneDrive for Business」はサポート対象外となる。
クラウドサービスの開発企業向けには、「ScanSnap Cloud」のSDKが無償で提供される。
Azureにゲートウェイを設置
ネットワークは、対応機種である「iX500」「iX100」のWi-Fi経由で、クラウドサービスに保存する形。設定が済んでいれば、パソコンを起動したり、スマートフォンのアプリを起動する必要はない。
Wi-Fiネットワークはオフィスや家庭での利用が前提で、アプリやパソコンから「ScanSnap Cloud」を設定する際は、スキャナと同一のLAN内でのみ操作を行える。スキャナをスマートフォンのテザリングやモバイルWi-Fiルーターに接続した環境でも「ScanSnap Cloud」を利用できる。一方、セキュリティ関連のポリシーの都合上、公衆無線LANでは利用できない。
「ScanSnap Cloud」の設定アプリはWindows、Mac OS X、Android、iOSに対応する。
同サービスは、マイクロソフトのAzure上で運用される「ScanSnap Cloud」のクラウドサーバーにデータを一時的に保存し、そこから設定に従って各社のクラウドサービスに転送・保存する仕組み。
保存容量の制限や接続先の障害などで各クラウドサービスへ保存できなかったり、後から保存先を変更したりしたい場合、クラウド上に2週間分保存されるデータを履歴画面から操作して、再保存や保存先の変更が行える。スキャンの履歴はパソコンのソフトウェア、もしくはスマートフォンのアプリから確認できる。「ScanSnap Cloud」のクラウドサーバーに一時的に保存されるデータ容量に、制限は設けられていない。
「パソコンもスマートデバイスもいりません」
25日には都内で「ScanSnap Cloud」の発表会が開催された。PFU 代表取締役社長の長谷川清氏は、IoTの広がりやクラウドサービスの普及により、会計・資産管理のフィンテック(Fintech:Financial+Technology)分野が大きく注目されているとした上で、こうした分野ではドキュメントスキャナが積極的に利用されていると指摘し、「紙とクラウドを繋ぐ、『ドキュメントIoT』を提唱する」と、IoTやクラウドに積極的に対応させていく方針を示した。
同氏はこれまでの製品についておおまかに振り返る。「ScanSnap」の第1弾として発売した製品はUSBケーブルでパソコンに接続する形式で、第2段階ではWi-Fiとモバイルデバイスへの対応を行った。しかしこれらでも「なんらかの操作をしなければならなかった」と十分ではなかったとし、「ワンプッシュするだけで、レシートも名刺も自動認識し、最適なサービスに保存する。もう、パソコンもスマートデバイスもいりません」と、一度設定すればスキャナ単体でクラウドサービスに保存できる今回の新サービスの手軽さをアピールした。
GIプロセッサーとクラウド連携で真の「ワンプッシュ」を実現
「ScanSnap Cloud」の詳細については、PFU イメージビジネスグループ 国内営業統括部 統括部長の松本秀樹氏が登壇して説明を行った。同氏は、これまで5つのステップが必要だった操作が、「ScanSnap Cloud」では1つのステップにまで簡略化され簡単になっていることを紹介。
その基盤技術としては、iXシリーズのスキャナ本体に搭載される、デュアルコアCPUなどからなる「GIプロセッサー」により、画像処理を本体で行うことがスムーズなクラウド連携を可能にしているとした。また、同社がゲートウェイとして用意するサーバーは「Microsoft Azure」上に設置され、強固なセキュリティやグローバル展開を可能にしているとした。
MS伊藤氏がAzureとPFUの取り組みを紹介
ここでゲストとして、日本マイクロソフト 執行役 デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏が登壇。クラウド基盤であるAzureやその開発体制を紹介した。伊藤氏は「ScanSnapは海外のビジネスも多いが、安心して使ってもらえる」と自信を語るとともに、Azureが各国・地域のさまざまなセキュリティ基準に適合している様子も紹介する。
「ScanSnap Cloud」はAzure上でPaaS(Platform as a Service)として運用されており、「拡張性やデータ保護、新しいサービスを、いち早く搭載できるアーキテクチャになっている」と、伊藤氏は今後の発展性についても触れている。
マネーツリーなど3社も連携表明、2016年春にe-文書法に対応予定
PFUの松本氏からはさらに、税理士向けクラウド会計のアカウンティング・サース・ジャパン、家計簿アプリのマネーツリー、会計・経理入力のメリービズの3社が「ScanSnap Cloud」の今後の連携パートナーとして発表された。
今後の展開については、2016年春からはe-文書法に対応を開始する予定であることと、同じく2016年春からグローバル展開として北米で「ScanSnap Cloud」のサービスを開始する予定であることも明らかにされた。
質疑応答では、無償のクラウドサービスとなっている「ScanSnap Cloud」の今後について、「高度なOCR機能などは、状況を見ながら有償化も検討していく」と述べており、付加価値の高いサービスで有料プランも検討していく方針が示されている。