PFU、Wi-Fiでスマホに転送できる「ScanSnap iX500」


 PFUは、書類をPDFに変換するドキュメントスキャナーの新モデル「ScanSnap iX500」を11月30日に発売する。価格はオープン価格で、直販価格は4万9800円。


「ScanSnap iX500」

 

 今回発売される「ScanSnap iX500」は、「ScanSnap S1500」の後継モデル。外観はブラックに統一され、パソコンはWindows、Macに両対応。Wi-Fi機能を搭載し、LAN内のiOS端末またはAndroid端末にスキャンしたデータを直接転送できる。画像処理エンジン「GI」プロセッサーを新規に開発しスキャン速度を向上させたほか、業務用製品の技術を投入し給紙性能、耐久性を向上させている。

 「ScanSnap iX500」本体にWi-Fi(IEEE802.11b/g/n)機能を搭載。無料の専用アプリ「ScanSnap Connect Application」をインストールしたスマートフォン・タブレットに対し、パソコンを利用せずWi-Fi経由でデータを転送できるようになった。アプリ上、もしくは本体の読み取りボタンを押すことで、スキャンしたデータをモバイル端末に直接保存できる。アプリ上でスキャンモードやオプションの設定も可能。利用には無線LANルーターで構築されたLAN環境が必要。なお、Wi-Fi接続時はエクセレントモードを選べないほか、傾き補正の判定が原稿用紙の傾きのみになり(USB接続時は原稿内文字列でも判定)、OCR処理、向き補正、長尺読取などには対応しないなどの違いがある。

 専用アプリは本体の発売に合わせて、iOS版がApp Storeで、Android版がGoogle Playストアで配信される。対応OSはiOS 4.3~、Android 2.2~。動作確認済みの機種はPFUのWebサイトで公開される。

 画像処理エンジン「GI」プロセッサーは、Wi-FiやUSB3.0接続もサポートしたデュアルコアCPU搭載のSoC。カラー・300dpiのスーパーファインモードまでは、従来製品と比べて25%速度が向上し、A4で1分あたり25枚、50面の読み取りが可能(S1500は20枚)。エクセレントモードのカラー・600dpiでは1分あたり7枚、14面となる(S1500は5枚)。加えて、高速・大量のスキャンに対応するため、トップシェアを持つ業務用イメージスキャナーの技術を投入し、ScanSnapシリーズで初めてブレーキローラーによる原稿分離方式を採用した。

 消耗品となるピックローラーとブレーキローラーの交換周期は、それぞれ20万枚にまで向上。ピックローラーは「S1500」の10万枚から倍増し、ブレーキローラーは従来のパッドユニットの5万枚から4倍にまで向上している。重送の発生チェックは超音波センサーを利用する。自動給紙方式の両面自動読み取りで、原稿の搭載枚数はA4で最大50枚。

 イメージセンサーは「S1500」のCCDからCISに変更され、RGB3色LED光源などと合わせて低消費電力化も実現されている。なお、イメージセンサーの品質は、「S1500」のCCDと同じレベルが確保されているという。ソフトウェアのオプションで、原稿の裏写りを軽減するモードも用意されている。


画像処理エンジン「GI」プロセッサーブレーキローラー

 

 パソコン向けの読み取りソフトウェアは、クイックメニューの操作性を向上させ、お気に入り表示画面や、原稿サイズから判定するおすすめ表示画面を用意。スキャン時にOCR処理を行う、検索可能なPDFの生成速度も「S1500」から倍以上に高速になった。スキャンと同時にOCR処理するモードと、後から変換するモードを選択でき、後から変換するバックグラウンドOCRは、従来は非対応だったMacでも利用できるになった。スキャンしたデータは「Dropbox」などのオンラインサービスに保存することも可能。

 パッケージに同梱の名刺管理ソフトウェアは、従来はMac向けに提供されていた「CardMinder」に統合される。名刺の読み取りは日本語に加えて英語、中国語など11の言語の名刺に対応。Windowsでは従来のソフト「名刺ファイリングOCR」から移行することもできる。

 また、ライブラリーソフトの「楽2(らくらく)ライブラリ Smart V1.0 with Magic Desktop V1.0」を同梱したセットモデル「ScanSnap iX500 Deluxe」も直販価格5万4800円で発売される。同ソフトでは、スキャンしたデータの管理・編集が行え、SNSとの連携や、モバイル端末へのデータの持ち出し、編集、返却といった流れの利用も可能になっている。

 「ScanSnap iX500」の動作環境は、Windows XP/Vista/7/8。Mac OS X 10.6~。

 大きさは292×159×168mmで、重さは約3kg。

 

デモを交えてWi-Fi連携をアピール

PFU 代表取締役社長の長谷川 清氏。タブレット端末から簡単にスキャンできる様子をデモ

 12日には記者向けに発表会が開始され、PFUの担当者から製品のコンセプトや特徴が解説された。

 最初に挨拶に登壇したPFU 代表取締役社長の長谷川 清氏は、ScanSnapシリーズが過去11年で100カ国以上で販売されるようになり、全世界の累計で200万台を突破、年間では50万台を販売したという実績を明らかにした。当初のモデルから「カンタン・スピーディ・コンパクト」で「ワンタッチ・直感的に使える」を一貫したコンセプトに掲げており、モバイル環境でパソコンなどを使うスタイルが普及したことで北米での販売が拡大。さらに省スペースのモデルも追加した。

 また、クラウドサービスが普及を始めると、こうした流れは加速。初代のiPadが発売された直後は従来の2倍の売れ行きを見せたとし、iPadなどのスマートデバイスで使うスタイルも広がったという。長谷川氏は新モデルのボディを披露した後、iPadに簡単にデータを転送できる様子を実際にデモンストレーションで紹介。「想像を超える便利がある」と語り、進化した新モデルをアピールした。


 

PFU 取締役専務の宮本憲一氏

 「ScanSnap iX500」の具体的な内容は、取締役専務の宮本憲一氏から行われた。宮本氏は、前モデルの「S1500」の発売から3年が経過し、機能強化など新モデルへの期待のメッセージを受け取ってきたという。簡単で直感的に使えるという基本コンセプトはそのままに、初心者から、スマートフォンなどを使いこなしている層まで、「さまざまな世代に喜んでもらえると確信している」と自信を見せる。

 性能が強化された新モデルは、Wi-Fi対応などのほか、スキャン速度の向上も図られている。このスキャン速度は、「トータル時間にこだわってきた」とし、起動時間やOCR処理時間も含めて考えられている。例えばA4サイズ3枚のスキャンの場合、従来モデルの約半分の時間で済むようになっている。これは、「GI」プロセッサーによる同時処理の実行のほか、OCR処理も倍速化されていることが貢献しているという。

 また、読み取れる紙の種類や厚さを従来モデルより拡大。カードサイズではクレジットカードなどで一般的な数字が刻印されたプラスチックカードの読み取りにも対応する。前述のようにブレーキーローラーには業務用製品の技術を投入、耐久性を上げることでランニングコストを下げている。

 同氏はビジネス目標についても触れ、現在の年間50万台の販売数を2015年には85万台にまで拡大させる。年平均成長率は20%を見込み、最終的には年間で100万台の販売、累計500万台の販売を目標としている。モデルについては、これまで概ね「S1500」が半分を占めていたとのことで、今後も同様の傾向が予測されているが、「新モデルも計画している」とのことで、ラインナップの拡大にも言及した。また、スマートデバイスと連携するためのアプリについて、APIの公開を準備していることも明らかにされている。


 


会場の展示

本体。内側は光沢のあるピアノブラック。液晶ディスプレイは搭載されていない内部の基板とGIプロセッサー
タブレットにアプリをインストールし、スキャンする様子タブレットでスキャンボタンを押すと、セットした原稿の読み取りが開始された
内部。給紙方式は新たにブレーキーローラーが採用されたスキャンしたデータは、コクヨのアプリ「CamiApp」から利用することも簡単になった
会場には自炊関連の書籍や関連製品も展示されたバード電子のS1100用ケース
キングジムはScanSnapでの読み取りに対応したノート裁断機も自炊ブームで注目されている製品のひとつ
歴代のScanSnapシリーズ

 




(太田 亮三)

2012/11/12 13:30