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匂いを測定する超小型センサーの標準化を目指す「MSSアライアンス」発足

 「匂い」をセンサーで検出する技術、嗅覚センサーの標準規格化を目指す「MSSアライアンス」が9月25日に発足した。2年後までの実用化を目標に、基礎技術の確立を進める。

MSSのイメージ図

 スマートフォンにも搭載可能な超小型で低価格なセンサーの登場によって、近い将来、朝起きた時に、スマートフォンに息を吹きかけて体調を把握したり、食材に近づけて鮮度を測ったりといった未来が実現するかもしれない。

 MSSアライアンスは、物質・材料研究機構(NIMS)が中心となり、京セラ、大阪大学、NEC、住友精化とスイスのNanoWorldが加盟。NIMSの独立研究者 吉川元起氏が開発したセンサー素子「MSS」がその名の由来。

MSSを使用したデバイスに息を吹きかける吉川氏

 「MSS」(エムエスエス、Membrane-type Surface stress Sensor/膜型表面応力センサー)は、反応膜を持ち、匂いの素となるガスの分子との反応の様子を電気的な波形として取り込むことができるセンサー。その波形を分析することで、匂いを識別することができる。

 反応膜を素材を変えることで、複数組み合わせることで、さまざまな匂いを判別することができる。自然界には数十万種類の匂いの素となる物質が存在するが、16種類の反応膜を用いれば、そのほとんどを判別可能という。

 反応膜の材質はシリコンで、安価で量産が可能。センサー1個は1平方mmに収まるサイズ。チップ自体は電流を計測するだけなので、低消費電力。繰り返し使用でき、安定的に動作する。

MSSで得られた波形をスマートフォンで表示する試作品。検測部分は1cmほどで、以下のサイズで、通信モジュールやバッテリー部分はさらに小型化が可能。

 研究室での実験では、豚肉の産地ごとの判別や、香水のフレーバーのタイプ分析、がん患者と健康な被験者の呼気からの判別に成功している。

 MSSアライアンスでは、まずは個人のヘルスケア分野での実用化を目指し、加盟企業が分担して協力する。住友精化が計測に用いる基準となるガスを提供。計測モジュールを京セラとNanoWorldが開発、NECと大阪大学はデータ解析を行う。解析したガスはNECと京セラがデータベース化を行う。

 まずは個人の健康管理で用いるデバイスとして、1万円を下回る価格での提供を目指すという。量産化後のチップ一枚当たりの価格は、100円程度になる見込み。

左から、NanoWorldの秋山氏、NECの山田氏、京セラの稲垣氏、NIMSの潮田理事長、吉川氏、大阪大学の鷲尾教授、住友精化の三澤氏

石井 徹