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スマホでなぞって腹囲測定、食事写真でカロリー算出~京セラと日本予防医学協会

 スマートフォンでお腹をなぞって内臓脂肪の付き具合を推定、撮影した食事の写真を認識してカロリーを算出――京セラがスマートフォンで蓄積した技術を活用して、日本予防医学協会とともに新たな生活習慣改善支援サービス「デイリーサポート」を10月中を目途に提供を開始する。

 「デイリーサポート」は、企業や健康保険組合、ヘルスケアサービス事業者などの法人を対象としたソリューション。iOS/Android対応のスマートフォンアプリに専用ウェアラブルデバイス「TSUC」(ツック)を組み合わせて利用する。サービスの標準販売価格は利用者一人当たり月額600円(税込、以下同)、「ツック」は7000円。

 専用アプリでは、ツックで記録した行動履歴や、スポーツなどの活動、食事、睡眠、歩数、内臓脂肪などを記録することができる。1日の行動目標と実績が比較できるほか、タイムラインや表示や統計表示などが可能。「歩数計で1000歩歩いた」「健康的な睡眠をした」などの目標を達成すると、アプリ内でポイントがもらえる。ポイントによって同じ健保組合などのユーザー同士のランキングで競い合うことができる。

内臓脂肪や食事のカロリーを推定して記録

 内臓脂肪の推定機能「デイリースキャン」は京セラが特許を取得しているもの。スマホを腹部に沿って半周なぞることで、スマホのセンサーで腹部の形状を測定し、数百枚のサンプル画像データベースから、ユーザーの腹部の最も近い画像を表示するもの。京セラによると、測定精度は「市販されている内臓脂肪計と同等程度」という。

 食事記録は、「いただきます」ボタンを押し食事の写真を撮り、食後に「ごちそうさま」ボタンを押すことで食べた時間と食事のカロリーが記録される。食事のカロリーは、写真を解析することで食べた料理のカロリー目安を表示する機能となっている。ユーザーによる食事選択やカロリー入力もできる。時間については、1日15分以上かけて食事をとり、食事から就寝までに2時間の間をあけるといったアドバイスが表示され、健康を意識しながら食事できる。

 睡眠記録では、アラームを設定して枕元にスマートフォンを置いておくことで、睡眠状態の記録が可能。起床時に、気分を3段階から設定する。

ボタン電池で動く軽量なトラッカー「ツック」

 活動記録に利用する「ツック」はコイン大のデバイスで、加速度センサーと気圧センサーを内蔵している。本体のクリップで服などに取り付けることで、歩数や消費カロリーに加え、徒歩やランニング、乗車中といった行動状態の検知と記録ができる。Bluetooth 4.0でスマートフォンと接続し、専用アプリに同期する。CR2032型のボタン電池で動作する。本体サイズは約48×29×13mm、重さは約11g、生活防水に対応。

 なお、航空機への持ち込みの対応としてBluetoothでの通信は本体のスイッチからオフにすることができるようになっているが、活動記録を停止する機能はなく、電池の動く限り活動を記録しつづけるという。記録されたくない状況では「身に着けなければいい」(製品説明を担当した京セラの内藤氏)とのこと。

活動記録をもとにした保健師による個人指導

 ユーザーが記録した生活習慣記録をもとに、保健師がユーザーの生活を改善するための個別アドバイスを受け取れる。保健師向けの管理画面が用意されており、健保組合の場合は組合の保健師などがユーザーの生活習慣データを閲覧し、メールなどでアドバイスを送ることができる。専任の保健師がいない場合などに、日本予防医学協会の提携保健師によるアドバイスサービスを別料金で利用することができる。

 また、活動状況に応じて、アプリによる自動メッセージでアドバイスが送信される。例として、電車に乗る回数が多いときに「一駅歩いてみませんか?」というものや、たくさん食べすぎたときに「カロリーオーバー気味です」、といった形で通知される。

 「デイリーサポート」では、外部サービスとの連携に順次対応していく。当初は、ロシュ・ダイアグノスティックス社の血液成分測定器「コバス b101」の測定データの取り込みに対応する。また、ポイント機能では、JTBベネフィットの福利厚生向けサービスを取り入れ、ポイントを実際の商品などへ交換できるようにする。

 今後、連携サービスを増やしていくほか、脈拍などの記録に対応したツックの後継機種も検討中としている。

コバス b101

携帯電話事業で培った技術で医療費抑制に取り組む

京セラ 能原氏
日本予防医学協会 村瀬氏

 発表会で登壇した京セラの通信機器戦略商品統括部長 能原隆氏と、日本予防医学協会 専務理事 村瀬孔一氏は、両者が協業してのサービス提供に至った経緯を説明した。

 今回の「デイリーサポート」での提携は、携帯電話事業で培ったモバイルやセンサーなどの通信技術とビッグデータ解析の技術を活用を模索していた京セラ側が、日本予防医学協会に持ち掛けたもの。

 日本予防医学協会は、企業などに向けて健康診断サービスを提供する中で、増大する保険料を懸念していた。歯科以外の医療費の約3割を占める生活習慣病の改善に取り組むため、個人の生活習慣を「見える化」し、生活習慣の改善を支援するサービスとしての開発されることとなった。

 また、特徴のひとつである保健師によるアドバイスは、日本予防医学協会の要望で実現したものだという。協会所属の保健師が利用者にアドバイスができる機会は、主に健康診断で面談を行うことのみでしかできず、短い時間の面談では効果的なアドバイスが難しかったという。

 村瀬氏は、今回のサービスによって、ユーザーの健康維持へのモチベーションを高めながら、企業には保険料の削減を、社会に対しては医療費の削減に向け貢献できると自身を示した。

 「デイリーサポート」は、加入者数100万人を当面の目標として、日本予防医学学会の利用企業・組合やロシュの販路を通じて提供していく。

石井 徹