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au、Firefox OSスマホ「Fx0」を12月25日発売
「作りたい欲求に応えられる製品」――田中社長
(2014/12/23 17:00)
KDDIは同社初となるFirefox OS搭載のスマートフォン「Fx0」(エフエックスゼロ)を12月25日にauオンラインショップとKDDI直営店(au SHINJUKU、au NAGOYA、au OSAKA、au FUKUOKA)で発売する。メーカーはLGエレクトロニクス。2015年1月6日からは全国のauショップおよびau取扱店でも順次販売される。一括価格は4万9680円、毎月割の割引額は2万520円(855円×24カ月、実質負担額:2万9160円)。
Firefox OSはMozillaが開発しているオープンソースOS。Firefox OSを搭載するスマートフォンは、日本では開発者向けの「Flame」が販売されているが、通信事業者が一般向けに販売するモデルは今回のFx0が初めてとなる。
KDDIでは「つくる自由」のコンセプトのもと、WebアプリやIoT連携システムの開発にも使いやすいスマートフォンとして、Fx0を展開する。そうしたことから、Firefox OSのハッカソンイベントの成果発表会の一部として、Fx0の発表会が行われた。発表会でKDDIの田中孝司社長は、「できたものを触ってもらうだけではない。設定を変えてカスタマイズする楽しみしかなかったところが、Firefox OSを使うことでもっと面白いことができる。小さいころ、ラジオを作ったように、スマホを使って作ることができる」と語り、いわゆるギーク層の「作りたい」欲求に応えられる製品であることをアピールした。
Firefox OSはオープンなWeb技術をベースとしたOSで、アプリはすべてHTMLやJavaScript、CSSといったWeb技術で作られ、ブラウザエンジン「Gecko」上で動作する。Gecko上で動作しないアプリは例外的で、たとえばFx0に搭載されている日本語入力システムはGeckoよりも下位レイヤーにアクセスしているが、このようなアプリはOSに組み込まれる形で実装されていて、あとから追加インストールすることはできない。
Webサービスがシームレスに使えるのもFirefox OSの特徴で、ホーム画面の最上段には検索フィールドがあるが、ここに検索語を入力すると、Googleなどの汎用の検索サービスだけでなく、クックパッドなどの個別のWebサービスも表示される。また、「Music」や「Games」というフォルダがホーム画面にはあるが、ここをタップすると、Fx0内にインストールされているローカルアプリとインストールされていないリモートアプリが同じ画面に表示される。リモートアプリはそのまま起動し、気に入ったらインストールする、といった使い方ができる。
Fx0に搭載されているFirefox OSは、KDDI独自のアプリやカスタマイズは最小限で、ほぼ標準のFirefox OSのままになっている。KDDI独自のアプリは、ロック画面を自分でデザインできる「Framin」と動画や写真の共有ができる「Web-cast」、auの災害対策サービスを利用するための「au災害対策」のみ。auの「Eメール」(○△□@ezweb.ne.jpのメール)はMMSを利用する形式で、標準のメッセージアプリで送受信する。auスマートパスなどのコンテンツサービスのアプリやブックマークはプリインストールされない。
「Framin」はオリジナルのロック画面を作るためのアプリ。「本体がX回振られたら」などのトリガーと「画像をフェード切り替えする」などのアクションを組み合わせ、インタラクティブなロック画面を作ることができる。比較的シンプルな作りで、プログラミングの知識がない人の利用を想定しているという。
「Web-cast」はFx0同士で動画や写真などのコンテンツを共有する機能。NFCでタッチすると、共有元でWebサーバーが立ち上がり、2機種間でWi-Fiが接続され、続いて共有したいコンテンツのURLが転送される。コンテンツの再生にはWebブラウザを利用している。こちらの機能については、KDDIではオープンソース化を進めている。Framinについても将来的にはオープンソース化される可能性があるという。
標準アプリである連絡先については、姓名の配置や読み仮名といった日本独自の修正が加えられている。メッセージアプリはもともとMMS非対応だったが、Fx0開発にあたってMMSに対応している。こうした細かい修正はコントリビューションされ、Firefox OSのオープンソースの中に組み込まれているという。
このほかにもNAVITIMEやLINE、Facebookといったアプリもプリインストールされている。これらのアプリはFx0投入にあたり、日本語化やHD解像度対応などが行なわれているが、Fx0専用アプリというわけではない。公式アプリストア「Marketplace」にアクセスすると、そのほかにもFx0に最適化されたアプリがauのオススメWebアプリとして紹介されている。
基本的な操作方法はiPhoneに似ていて、本体前面、下部中央にメカニカル式のホームキーが搭載されている。このキーを短押しするとホーム画面が表示される。ホーム画面は縦スクロール形式。2回押しするとスリープモードに移行し、長押しするとタスク切り替え画面が表示される。アプリの切り替えは画面外からのスワイプ操作でも可能。画面上部のステータスバーを下にスワイプすると、アプリ通知の一覧画面が表示される。
さらにKDDIが開発しているWebベースのアプリケーション開発ツール「Gluin」を利用することも可能で、組込機器と連携し、「WoT(Web of Things)」を容易に実現できるとしている。
本体のデザインにはデザイナーの吉岡徳仁氏を起用する。外装はすべて半透明になっていて、内部の部品が見えるのが特徴。内部を見せることも想定していて、外側から何個かのアンテナが見えるが、1つだけフェイクのアンテナが混じっているという。
ディテールはかなりこだわってデザインされており、ホームキーにはFirefoxのロゴが立体的にデザインされている。ネジも専用にデザインされたカラーのものが使われている。こうしたデザインのこだわりから、店頭展示用のモックアップが作れなくなったとのことで、店頭では基本的に実機展示が行われるという。
背面カバーは取り外しが可能で、バッテリーの取り替えやmicroSIMカード、microSDカードにはカバーを取り外してアクセスする。なお、3Dプリンター用のデータも公開予定で、内面だけでなく、外面も自分でカスタマイズできるようになっている。一方で、端末の発売と同時にカバーなどのアクセサリーも発売する。
本体の右側面には電源キー、左側面には音量キー、上端にはイヤホンマイク端子、下端にはmicorUSB端子がある。ディスプレイは約4.7インチで本体の大きさは139×70×10.5mm、重さは約148g。メインカメラは約800万画素、サブカメラは約210万画素。
バッテリー容量は2370mAhだが、スペック上の連続待受時間はLTEで約720時間と、3000mAh級のAndroidスマートフォン以上となっている。これはディスプレイのサイズや解像度の違いもあるが、Firefox OS自体がバックグラウンドでアプリを動かさないなど、電力消費が小さめであることなどによるという。
搭載OSはFirefox OS 2.0でCPUはSnapdragon 400シリーズのMSM8926 1.2GHz クアッドコア、システムメモリは1.5GBでストレージが16GB。日本語入力システムにはオムロンソフトウェアと共同開発した「iWnn IME for Firefox OS」を搭載し、フリック入力などで日本語入力ができる。64GBまでのmicroSDXCにも対応する。ボディカラーはGOLD(ゴールド)のみ。
Fx0を購入すると、Fx0専用のデータプラン「LTEフラット cp(f・2GB)を契約できる。同プランは2GBで3500円のデータプランで、従量通話式の基本プラン「LTEプラン」と組み合わせられる。なお、新規契約やMNPでFx0を購入した場合、最大2年間、LTEプランの基本使用料(934円)が無料になる「Fx0おトク割」が適用され、LTEフラット cp(f・2GB)とLTE NETをあわせた3,800円が最低維持費となる。ただし、適用期間が終了すると、自動的に「LTEフラット(7GB)」(5700円)移行する。また、auスマートバリューの対象外となる。
通話定額を利用する場合は、LTEフラット cp(f・2GB)は利用できず、各データ定額と組み合わせることになる。
前述の通り、Fx0の発表会はFirefox OSのハッカソンイベントの一部で行われた。ハッカソンは発表会のオマケ、というわけではなく、ハッカソンの成果発表にはFx0自体の発表よりも長い時間がかけられるなど、本格的な内容となっていた。
ハッカソンイベントでは女優の池澤あやかが司会を務めたが、池澤自身、慶應義塾大学の環境情報学部出身でプログラミングの経験もあり、ハッカソンの冒頭ではアートユニット「テクノ手芸部」とともに1日で開発したアプリケーションが披露された。
池澤あやかのチームの作品は、Mozilla Japanのマスコットキャラ「フォクすけ」のぬいぐるみをFx0から動かすという単純なもの。発表では3体並んだフォクすけのうち、中央を動かそうとしているのに左右の2体がなぜか動いたりと、非常にハッカソンらしく、むしろ仕込みなのではないかすら思えるトラブルに見舞われていたが、それでも最終的には意図通りに動いていた。池澤あやかは今回の開発について、「普通はデバイスごとにオリジナルの言語が必要なのに、Webの技術で開発でき、開発しやすいと思った」とコメントした。
この発表に対して田中社長は「失敗しても拍手だよ!」と場を盛り上げると、イベントの講評役を務める慶應義塾大学 准教授の筧康明博士がすかさず「失敗じゃないです、ああいったトライが必要」と教育者・研究者らしいフォローを入れていた。
このほかにもロボット掃除機をFirefox OSからコントロールするシステムを作ったチームは、若干動かなくなった瞬間に謎の黒子が出てきてフォローしたり、無線通信を使ったデモがなかなか動かなかったのに唐突に動き出したりするなどのトラブルがあった。各チーム、仕込み自体はそこそこの時間をかけていたため、完成度は高めではあったが、こうしたトラブルに見舞われるあたりが、いかにもハッカソンイベントらしい展開となっていた。