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NTTコムウェア、スマホ同士のローカルネット構成技術を開発

NTTコムウェア、スマホ同士のローカルネット構成技術を開発

 NTTコムウェアは、スマートフォンに搭載されていている通信機能を用いて、スマートフォン同士でP2Pのローカルネットワークを構成する技術を開発した。災害などで既存のネットワークが使えない状況でも、付近のユーザー同士を繋いでリング上のネットワークを構成でき、同報配信や、ユーザー同士のテキスト、写真のやり取りが可能。平時には周辺ユーザーへのクーポン配信やイベント会場での利用といった用途も想定されている。2013年度には商用化に向けた開発が本格化する見込みで、すでに数社と商用化を検討しているという。

 今回NTTコムウェアが開発した技術は、Androidスマートフォンに搭載のBluetoothを利用するもの。予め同技術に対応したアプリをインストールして利用する。Wi-Fi Directなどほかの通信方式でも実現できるが、消費電力や実質的に標準搭載されているといった面から、まずはBluetoothが採用されている。AppleのiOS端末については、一部の仕様が公開されておらず、対応は検討中としている。

 開発された技術の基本的な考え方は、Bluetoothを利用し端末同士を接続し、テキストや画像、位置情報などのデータをやり取り可能なローカルネットワークを構成するというもの。1台の端末が接続できる数は限られていることもあり、複数台が接続する場合は端末同士をリング状に接続し、クラスタを形成する。リング状となることで通信をバケツリレー化し、電波干渉を抑えて安定化を実現する。

 司令塔となる端末が不要なのも特徴で、端末の離脱や再接続にも自動的に対応する。クラスタ同士を接続できるほか、ユーザーが明示的にクラスタを選択することも技術的には可能で、大規模なイベントでA側、B側といった参加クラスタの選択も行える。こうして構成されるローカルネットワークは、理論上は接続可能な端末を無制限に増やせるという。

 Bluetoothの既存プロファイルは1対1で接続されるのが基本だが、今回開発の技術は複数端末と接続できるのが特徴で、大規模なローカルネットワークの構成も可能とする。このため既存や新規のプロファイルは使わず、ローレイヤーの基礎部分で通信を行うとしており、Bluetooth対応のAndroid端末であれば利用できるという。

 同社では利用シーンとして既存の通信網が利用しづらい災害発生時やそれに伴う混雑時などを挙げている。例えば都市部において、災害発生時には運行が止まっている駅のホームに乗客が溢れるといったことが起こるが、同技術を用いれば、キャリアのネットワークに依存せず、その場にいるユーザー同士を繋いだローカルネットワークを構成し、駅員が運休情報などを同報配信で提供できる。

 また、通常時では店舗付近にいるユーザーへのクーポンの配信や、スタジアムなど大規模なイベントでの活用といった利用も提案されている。同社では、こうした一般的な利用で今回開発の近接通信技術を搭載したアプリの普及を図り、災害発生時にも役立つという流れを検討している。

 18日に都内で記者向けに発表会が開催され、具体的な説明や開発中のアプリを用いたローカルネットワーク構成のデモンストレーションが披露された。デモでは、アプリを起動した端末がお互いに見つけ合い、クラスタを構成したりクラスタ同士がつながったりする様子が確認できたほか、テキストや画像を一斉配信、個別配信できる仕組みが示された。開発中のアプリでは端末同士を見つけるための動作のタイミングに検討の余地があるとしていた。また、このローカルネットワークを構成できるアプリは常時起動だけでなく、特定のイベントをフックにして起動することも可能としており、利用しない間の電池消費にも配慮された設計になっている。

 実際にデータを送信すると、テキストの同報配信は瞬時に届く様子が確認できた。画像はやや時間がかかるものの、リング状のネットワークで順番に届いていく様子が確認できた。

 セキュリティに関連した機能は、用途により必要性の度合いが異なるため、現時点ではあえて搭載されていないとのこと。認証や暗号化といった対策は、後から組み込むことが可能としている。

NTTコムウェア 品質生産性技術本部 研究開発部長 北井敦氏
NTTコムウェア 品質生産性技術本部 研究開発部 担当課長の宮下直也氏

リング状ローカルネットワーク構成、クラスタ同士の接続の流れ

データ送信の流れ

想定利用シーン

実機でのデモ

Bluetoothを用いて3つの端末がリング状に接続されている状態
接続された端末に同報配信でメッセージを送信
瞬時に送信された
画像も送信可能。リング状ネットワークを巡回するように全員に送信された。宛先を指定することも可能
左の3台で構成されたクラスタと、右の2台のクラスタを接続したところ。写真の端末Aと端末Eがそれぞれのクラスタを代表して接続されることで、すべての端末がつながった状態となる

太田 亮三