総務省で700MHz帯の認定式、川端大臣が求めた「競争と協調」


認定後、大臣室にて川端大臣(写真奥)と認定各社の代表
写真左から、イー・アクセス千本氏、ドコモ加藤氏、KDDI田中氏、沖縄セルラー北川氏

 総務省は28日、3.9世代の携帯通信サービス向けに割り当てられる700MHz帯の免許について、総務大臣室で認定式を行った。川端達夫総務大臣より、NTTドコモ、KDDI、イー・アクセス、沖縄セルラー電話の代表者が認定書を受け取り、正式に700MHz帯の割り当てが決まった。

 28日夕方、総務大臣室にはNTTドコモの代表取締役社長の加藤薫氏、KDDI代表取締役社長の田中孝司氏、イー・アクセスの代表取締役会長の千本倖生氏、沖縄セルラー電話の代表取締役社長の北川洋氏が集まった。川端大臣が認定書を読み上げ、千本氏、加藤氏、田中氏、北川氏の順にそれを受け取った。

 京都大学の院卒、民間企業で研究開発に携わっていた川端大臣は、各社の代表者に対し「これほどのペースでトラフィックがひっぱくするとは皆さんも想像していなかったのではないか?」などと語り、国民財産である無線周波数の適正な運用を求めた。

 認定式後、報道陣の囲み取材に各社の代表が応じた。イー・アクセス千本氏は「我々はプラチナバンドを得たのが初めて。今回プロセスも含めて非常にスムーズで、本当に感謝している。先輩のドコモやKDDIと比べ、プラチナバンドのありがたみは3倍ぐらいありがたい。非常に感謝したい」とした。

 ドコモの加藤氏は「スマートフォンの普及によって、一方でトラフィックが非常に増えてきており、その対策として周波数をいただきたいとかねてから申し上げてきた。千本さんが言うように、スムーズに認可いただいたのは大変ありがたいこと。この周波数帯は(既存事業者の移行措置があるため)影響のある部分があるので、4社合同で対策し、できるだけ早く提供していきたい」とコメントした。

 「右に同じ」とコメントし、笑いを誘ったのはKDDIの田中氏。「ざっくばらんな話、我々はスマホのトラフィックによって結構厳しい状態が続きつつあり、新たな周波数を得られて本当にうれしい。各社競争環境にあるわけだが、移行推進措置に関しては協力して前に進めていきたい」と話した。北川氏も「沖縄は特殊なところだが、トラフィックの逼迫は間違いない。全力を尽くしたい」と語った。

 それでは、今回700MHz帯を得たことで、ユーザーがその恩恵を感じられるほど、各社の通信環境は改善されるのだろうか。この点についてKDDIの田中氏は「我々が700MHz帯を使えるのは2015年頃、確かにその頃どうなっているか予想が厳しく、ある予想ではトラフィックが20~30倍になるとも言われている。免許をもらってすぐ言うのも失礼だが、周波数が足らない状況はそれほど変わらないのではないか。早期に提供し、ユーザーに迷惑がかからないようにしていかなければいけない、本当にそう思っている」とした。

 加藤氏は、大臣との談話の内容を説明し、「この2年間のトラフィック増は想像できなった。それだけ大きなうねりの中にあると話した。大臣からは、時間と質を大事にしてもらいたいと言われた。全般的には夢のある事業を要望された」と語った。これに千本氏は、「特に災害時など、競争と協調をちゃんとして欲しい。GoogleやFacebookといったこれからの世界に対し、日本が協調するところと競争するところをうまくやることで、世界をリードして欲しいと言われた」と続けた。

 前述したように、700MHz帯認定各社のうち、イー・アクセスはこれまでプラチナバンドと呼ばれる電波特性の良いとされる周波数を持っておらず、現在利用する1.7GHz帯のバンドIXについても、端末調達などの面でスケールメリットが得にくいとされてきた。事業展開する上での足かせは、2GHz帯を持ち、先に900MHz帯のプラチナバンドを得たソフトバンクモバイル以上に大きかったと言えるかもしれない。千本氏は、「今回、ドコモやKDDIが持っているプラチナバンドをいただいた。後を追ってなんとか積極的にLTEを進めて、スマートフォンについても遅ればせながら再参入をかなえたい。1.7GHzではエリアが限られていたが99%のユーザーに満足してもらうために、なるべく早く700MHzを使わせてもらいたい。深く感謝している」と話していた。
 

千本氏加藤氏
田中氏北川氏

 




(津田 啓夢)

2012/6/28 19:57