ウィルコム宮内氏、「トークを徹底的に追求した」


 ウィルコムは21日、今秋以降に発売する新機種群を紹介する発表会を開催した。昨年の会社更生以来、初の新機種発表となり、代表取締役社長で、事業家管財人でもある宮内謙氏は「年度内に黒字化するのでは」と囲み取材でコメントするなど“新生ウィルコム”アピールの場となった。

だれとでも定額でユーザー層に広がり

宮内氏

 プレゼンテーションにおいて、宮内氏は「TALK MORE LINK、話す もっと 繋がろう」というキャッチコピーを紹介し、「ウィルコムの強みは何か。よりシンプルに戦うのがコンセプト。そこでトークを徹底的に追求した」と語る。

 かつてはデータ通信で法人などにも利用されたウィルコムだが、1基地局あたりのカバー範囲が狭く、数多くの基地局が必要となるかわりに、通信容量に余裕が生まれるマイクロセル方式により、通話を中心にすえた施策が展開されてきた。さらに昨年からは「だれとでも定額」が導入されたことで、その傾向に拍車がかかり、「コンスタントに5万、10万の契約が獲得できるようになった」という。

 囲み取材で同氏は「かねてより若年層に利用されてきたが、『だれとでも定額』で年齢層が上のほうに拡大し、ケータイビギナーと呼べる、年配の方に使われるようになった。それが『だれとでも定額』の狙いの1つで、“もう1台キャンペーン”も父親が持てば祖父に、など家族内の拡がりを図っている」と打ち明けた。

契約は増加傾向に「TALK MORE LINK」

 今回のラインナップは、通話用途を主としたモデルが取り揃えられているが、この背景にも「だれとでも定額」がある。昨年12月の正式サービス開始前には、テストマーケティングが行われ、一部地域のユーザーだけが利用できるなど、慎重に導入された「だれとでも定額」は、その後、目標を上回る利用となり、「(今後の端末は)3Gとのハイブリッドしかないだろうか」と不安になっていた宮内氏は今年3月~5月頃には、PHS一本で充分との手応えを得た。「だれとでも定額」以前から検討してきたモデルも今回含まれているが、ここまで通話中心のラインナップとなったのは、「だれとでも定額」がユーザーに受け入れられたことが大きく影響していると宮内氏は語る。その結果として、宮内氏は今年度中にもウィルコム加入者数が過去最高になる可能性にも言及した。

PHSと3Gの役割分担

イエデンワを紹介する宮内氏。会見後の囲み取材でも、イエデンワが意外に伸びるのでは、とコメント

 「だれとでも定額」の利用傾向としては、月500回という制限の中で、多くのユーザーは300回程度とのことで、インフラへの影響もないという。かつては、データ通信を主軸にしたウィルコムだが、音声通話が中心となった現在、「まだまだ(インフラの)ポテンシャルがある」(宮内氏)と見ている。

 さらに宮内氏は「現状、データ通信は速度も求められる。PHSのデータ通信の時代はもう終わったと思っている。今後、ソフトバンクモバイルの1.5GHz帯を使った端末などを出していくが、かつてのウィルコムがある意味苦労する原因となったAdvanced-XGPとリンクしたもの、あるいはMVNO的になってウィルコムが本来(目指した)姿のデータネットワークをやるときがそのうち来ると思う」と述べ、PHSが音声、データ通信は他の方式という形で役割分担する方針を示した。

 来春発売するというPHSと3Gのハイブリッド端末は「トライアル」(宮内氏)としつつも、実験的に行われたという、デル製の5インチディスプレイ端末「Dell Streak」とPHS端末のセット販売も予想外に売れ、宮内氏は「もともとウィルコムのスマートフォンは20万弱の方に利用されていた」として、PHS/3Gのスマートフォンはそうしたユーザー層に向けた機種であると同時に、「トータルのコストを下げたい人もいる。そうした方々にプラスとなる提案ができるのではないか」と、他社にはできない体験を提供する姿勢を示した。

基地局展開、事業更正について

 ソフトバンクの100%子会社となったウィルコムに関して、かねてよりソフトバンクモバイルの孫正義社長は、ウィルコムの基地局に3G基地局を併設するなど、ウィルコムの資産を活用する方針を示してきた。この点について、質疑で詳細の説明を求められた宮内氏は「PHS基地局には電源などもあり、ローコストで3G基地局を展開できる」と説明。その数は、ウィルコム基地局の約10%、1万5000局程度で既に実施されているとのこと。また、ソフトバンクモバイルの鉄塔にPHSの設備を載せて、かつて500m程度だったカバーエリアを1kmにしたり、1つ基地局に接続できる人数(チャネル)が3人だったところ、現在は10数人になっていたりするなど、ウィルコム基地局がより効率的に配置できるようになったことから、最終的には16万局あった基地局は13万~14万局に減少しつつも、通信品質は現状維持、あるいは現状以上を実現するという。

 ソフトバンクグループとの連携では、特に法人営業でシナジーが出てきたとのことで、内線電話として活用できるPHS端末とiPadという組み合わせで大企業にアプローチしているとのこと。また機器間通信(M2M)でもPHSの省電力性を活かした商品が今後期待できるとした。

 会社更生計画にのっとって事業を立て直すことが使命の1つとなっているウィルコムだが、囲み取材でそうした面を尋ねられた宮内氏は「少なくとも更生計画の数字は達成している。ただ、その計画は低めに見積もられたもの。今年はブランドイメージの構築を含め、広告なども思い切って展開する。経営的には、来年には利益的に一気に浮上するかもしれないが、現時点ではまだわからない」と説明した。

 今年の業績は黒字の見込み、としたが、裁判所の下で更正計画を進める立場上、詳しい数値は現時点では明らかにできないという。

 質疑でも同様の質問が投げかけられ、宮内氏は「当初目論んでいたARPUで推移している、と申し上げて良いと思う」と述べた。

 会見中にはCMに登場する佐々木希、蛭子能収が登場し、それぞれ今回のラインナップでのお気に入り端末を紹介したり、新テレビCMの概要が紹介された。

佐々木希、宮内氏、蛭子能収同じくCMに出演する高田純次は動画でコメント

 




(関口 聖)

2011/9/21 15:28