KDDIと楽天が電子マネーで提携、「Edy|au」を展開
KDDI田中氏と楽天の三木谷氏 |
KDDIと楽天は、電子マネーを中心とするサービスの業務提携に向けて、基本合意書を締結したと発表した。両社は新コンセプト「Edy|au(エディエーユー)」を立ち上げ、リアルとネットを融合させたサービスの提供を目指す。
「Edy|au」ではまず、8月4日より「auかんたん決済」によるEdyチャージ機能を提供する。「auかんたん決済」は、auの毎月の利用料と合算して、コンテンツや商品購入代金などが支払えるサービスとなる。スマートフォンでもフィーチャーフォン(一般的な携帯電話)でも利用できる。「auかんたん決済」の導入によって、クレジットカードや店頭での現金チャージが必要だったEdyサービスの“チャージ障壁”が下げられるという。
さらに、9月27日より、auのスマートフォン向けに自動チャージサービス「Edyオートチャージ」も開始する。auのスマートフォンユーザーは、Edyのチャージができるだけでなく、チャージ残金が1000円以下になると自動的にチャージされ、「auかんたん決済」で支払えるようになる。利用限度額は通常の「auかんたん決済」と同じ。KDDIの代表取締役執行役員 専務の高橋誠氏は、「毎月1万円ぐらいの新しいサイフがケータイの中にできる」とアピールした。
また今秋には、ショッピングサイト「楽天市場」側の決済手段として、「auかんたん決済」が導入される予定。このほかKDDIと楽天では、海外展開やマーケティング、NFC関連でも協調して取り組んでいく方針だ。
現在のEdyでは購買情報などを取得していないが、今後KDDIと楽天で購買情報や位置情報を組み合わせ、より積極的なマーケティングを展開する予定。商品のレコメンドだけでなく、クーポンの発行やタイムセールといったリアル店舗への送客に繋がるサービスが用意されるという。
KDDIでは楽天とともに海外展開することで、NFCに関するノウハウを蓄積していきたい考え。また、楽天の海外展開の際にKDDIのデータセンターも売り込んでいくという。
楽天では、グループ各社のサービスを統合し、さまざまなサービスをワンストップで提供する「楽天経済圏」構想を掲げており、その市場規模は2.6兆円とも言われる。また、国内のインターネット利用者の7割が楽天会員という。
電子マネー「Edy」は、2010年1月に楽天グループ傘下となったビットワレットが提供している。Edyに対応するリアル店舗は、コンビニやドラッグストアチェーン、飲食チェーン、タクシー、ヨドバシカメラ、紀伊國屋書店など多岐に渡り、全国に約27万1000カ所ある。Edyの累計発行数は約6420万枚で、その内訳はカードタイプが約5230万枚、携帯電話が約1290万台となっている。今年1月からはAndroid向けにEdyアプリも提供されており、現在までに30万ダウンロードを記録している。Edyの月間の利用件数は約3000万件で、カードと携帯で利用は二分されているという。
■世界でもっとも進んだO2Oビジネスへ
KDDIは今年5月、2011年夏商戦向けのラインナップを発表した。新商品について、の代表取締役社長の田中孝司氏は、新しい端末、新しいネットワーク、新しいコンテンツで“ワクワク感”を提供するとした。
KDDIと楽天の共同会見で田中氏は、今回の提携は新しいコンテンツの提供に向けたものであるとし、ネットとリアルの決済をこれまで以上に連携させていく姿勢を見せた。また、「今後、NFCの世界がやってくる。(楽天と)世界でもいっしょに展開していきたい」などと話した。
楽天市場の開始からまもなく15年、楽天の代表取締役会長兼社長である三木谷浩史氏は、「ネットショッピングから金融などいろいろ展開してきたが、ここに来て第三の波がきている」と語った。
三木谷氏は、“第八の大陸”ともいわれるインターネットの世界に、Online to Offline(O2O)、つまり、オンラインからオフラインへの流れが生まれつつあるとし、人々の消費行動やマーケティング概念を大きく変えようとしていると話す。「auの素晴らしい資産を組み合わせることで、世界でもっとも進んだO2Oビジネスが展開できるのではないか」と期待を述べた。
KDDIでは、Edy以外の電子マネーサービスとの提携について、「まず最初にEdy。そのほかについては神のみぞ知る」(KDDI田中氏)とするに留まり、明言を避けている。その一方で楽天側は明確に方針を示しており、常務執行役員でビットワレットの代表取締役社長を務める山田善久氏は、他の携帯電話事業者との提携について、「NTTドコモはiDを独自に展開しており難しい印象。ソフトバンクは、電子マネーにどの程度力を入れていくのか明確ではなく、とくに話をしているわけではない」と話している。
このほか、KDDIの高橋氏は、NFCとFeliCaの動向について述べ、「日本ではFeliCaが広がっており、NFCが入ってきてもFeliCaがなくなるというものではなく、併存するのではないだろうか。市場の動向を見ながら使い分けていきたい」と話した。
KDDIの高橋氏 | 楽天の山田氏 |
2011/6/29 14:52