スマートフォン全盛、孫氏が「ソフトバンクの時代」をアピール


ソフトバンクの孫正義氏
飛び出す“お父さん”で3Dをアピール

 11月4日、ソフトバンクモバイルの冬春モデルの発表会が開催された。ソフトバンクグループ代表で、ソフトバンクモバイルの代表取締役社長 兼 CEOの孫 正義氏は、「いよいよスマートフォン全盛の時代、ソフトバンクの時代になる」と力強く語った。

 孫氏は、上半期のスマートフォンのシェアを説明する中で、同社が提供するアップルのiPhoneシリーズが、スマートフォンの実に80%を占めている状況を語った。同氏はiPhoneやiPadを毎日のように使っているとのことで、「益々こだわりやその素晴らしさが伝わってくる。本当に素晴らしい名機だと思う」などと話した。

 また、当初はデジタル機器などに敏感な男性層が90%を占めていたiPhoneシリーズだが、現在では40%近くまで女性ユーザーが伸びてきているという。孫氏は「一般の人々にカルチャーとして、ライフスタイルとして広がってきた。この勢いは衰えることなく、益々加速していく」と、iPhoneシリーズを賞賛した。

 だが、今回の発表は、孫氏の褒め称えたiPhoneシリーズではなく、残りの20%の部分にある。孫氏は20%の部分について、「それなりに各社で争っている。iPhone以外においてもソフトバンクはこだわり抜いた端末を提供する」とした。

 ソフトバンクでは今回、スマートフォンとして3D液晶を搭載した「GALAPAGOS 003SH」と「GALAPAGOS 005SH」、米Dell製のタブレット端末「Dell Streak 001DL」、スマートフォンのエントリーモデルとなる「Libero 003Z」と「004HW」を発表した。これに、すでに発表済みの「HTC Desire HD 001HW」を加えた6モデルが、ソフトバンクの冬モデルに位置付けられる。

 中でも孫氏が目玉としたのが、「全機種 Android2.2」という点だ。孫氏は、Android 2.1とAndroid 2.2では、バージョンとしては0.1の差ながら、機能的には雲泥の差があることを印象づけた。

 同氏は、Android 2.2でサポートされたFlash 10.1や、アプリの処理速度向上、メモリカードへのアプリ保存などに触れ、その魅力的な機能について饒舌に説明した。ただし、質疑応答の中でAndroid 2.2でOSとしてサポートされているテザリング機能に話が及ぶと、ノーコメントであるとし、「サービスについて将来的なことについてはコメントしない方針」と話すのみだった。



“ソフト”の“バンク”だからこそアプリにこだわる

 ソフトバンクでは、スマートフォンにおいてアプリにこだわるという。孫氏は「スマートフォンの良さはなんといってもアプリ、“ソフト”の“バンク”だからこそアプリにこだわる」と語った。

 この日、電子書籍サービス「ソフトバンク ブックストア」や、ジンガジャパン(旧社名ウノウ)と提供する農場ゲーム「FarmVille」(スマートフォン対応は2011年)が紹介されたほか、孫氏の弟である孫泰蔵氏が代表を務めるガンホー・オンライン・エンターテイメントのMMORPG「ラグナロクオンライン Mobile Story」、Twitterと連携するアバターサービス「FilMeee(フィルミー)」などがソフトバンクで先行配信されることが伝えられた。

 孫氏は、「Androidの世界においても業界1位を目指す」と語った。



ULTRA SPEED

 また、大きな目玉として紹介されたのが、DC-HSDPA方式のデータ通信サービス「ULTRA SPEED(ウルトラ スピード)」だ。

 2011年2月下旬よりスタートする同サービスは、理論値として、下り最大42Mbpsの通信が可能となっている。1.5GHz帯を利用して展開され、2011年6月には人口カバー率60%を目指すことが明らかにされた。また、今回はデータ通信端末とモバイルWi-Fiルーターのみが発表されたが、今後、一般の携帯電話にも対応モデルが登場する予定。

 孫氏は、NTTドコモのLTEサービス「Xi」の通信速度が37.5Mbpsであることを挙げて、「我々は42Mbps、固定ブロードバンドに匹敵するスピードを実現した」とアピールした。なお、ドコモの数値もソフトバンクの数値もいずれも理論上の最大値となる。また一部の主要屋内施設において、ドコモは下り最大75Mbpsを提供することも案内している。

 通信エリアについて孫氏は、「これまでドコモやauの電話に負けていると言われてきた」とし、この原因を800MHz帯が得られていないためだと主張した。同氏は「許認可事業なので望んでも得られない。次の許認可では我々が優先的に得られるものと思っている」と話し、700/900MHz帯の再編計画への期待を述べた。

 なお、今回の発表会では「ULTRA SPEED」のサービス料金について言及はされなかった。質疑応答の中で孫氏は、「料金は覚えていない」と話し回答を避けた。帯域制限についての質問についても「検討はしている。まだ詳しいコメントはできない」とした。

 このほか孫氏は、再三に渡りiPhoneシリーズを賞賛した。「iPhoneの強みは揺るがない。王者のiPhoneとiPadは全力で売り続けていく」と語り、今回Android端末を大量に投入したにも関わらず、「中にはiPhone以外を求める人がいる。そういう一部の人たちにも提供する」などと述べた。



上戸彩と松田翔太が登場

 発表会のプレゼンテーションでは、スマートフォンやフィーチャーフォンのラインナップが紹介された。「GALAPAGOS 003SH」のプレゼンテーションでは、ソフトバンクのテレビCMに登場する上戸彩と松田翔太が応援にかけつけた。

 ステージでは、上戸彩と松田翔太を交えて3D撮影機能などがデモンストレーションされた。上戸彩はさまざまな柄のパネルが用意された「GALAPAGOS 003SH」について、「おそろいで持ちたい」などと女性らしい視点で感想を語った。松田翔太は、撮影現場の待ち時間にFlashコンテンツが見られることを「一番うれしい」などと話した。

 また、3Dコンテンツの紹介では、米映画「シュレック」のキャラクターが登場。孫氏はうれしそうにシュレックと肩を組み、取材陣の撮影に応えていた。



質疑応答

 このほか質疑応答ではさまざまな質問がなされた。主な回答を紹介する。

 大量に投入したAndroid端末による販売比率について、孫氏は、今年は従来型のフィーチャーフォンが数多く出るものの、来年になると状況が変化し、従来型のモデルが減っていくとの味方を示した。

 緊急地震速報については、今回の冬春モデルではいずれのモデルも対応していない。孫氏は、ネットワーク側の対応を急いでいたと説明し、その目途が立ったため、「来年以降のモデルは徐々に増えてくる」と話した。

 さらに、アプリに注力したことについて、孫氏はAndroidアプリは日本円で購入できるアプリが少ないとし、「我々が日本円で買える日本人対応アプリを用意していくことが重要。コンテンツのソフトバンクだからこそ日本人用のアプリを提供する」と述べた。

 また、今回の冬春モデルでは、スマートフォン、フィーチャーフォン、データ通信などそのほかの端末の型番ルールが変更された。型番上はスマートフォンやフィーチャーフォン、データ通信端末などに区別されることなく、メーカー毎の通し番号となっている。ドコモやauでも過去に型番を変更したことがあるものの、スマートフォンやフィーチャーフォンなどが区別されてきた。型番ルールを変更した理由について孫氏は「大した意味はない」とだけコメントした。

 LTEの提供時期については「ベストなタイミングで提供する。提供する際は、スピードや機能でドコモの上をいきたい」と話した。電波のカバーエリアについては、「通信品質に一番力を入れている。毎日そのことばかり考えている。日本は許認可に特に時間がかかる。一応、順調に基地局手配が進んでおり、全速力で電波を改善し、エリアのカバー競争と速度競争を両方ともやりたい」と述べた。

 このほか、孫氏がTwitter上で風呂でiPhoneを濡らしてしまったことについて、端末が無事であったことを述べ「シリカゲルが効いている」などと話した。

 



(津田 啓夢)

2010/11/4 22:26