NECカシオ、韓国向けにオリジナル端末「T1200」投入


XOXO(T1200)

 NECカシオモバイルコミュニケーションズは、韓国のLGテレコム向けに、スライド型のCDMA端末「T1200」の供給を開始した。「CanU」ブランドで展開されている韓国市場向け端末の最新モデルで、「XOXO」という名称が付けられている。

 今回、韓国市場で提供が開始されたT1200は、新規に開発された端末。3.8インチのタッチパネルを搭載し、スマートフォンのような使い勝手を実現している。5メガピクセルのAF対応カメラを搭載。Bluetoothのほか、無線LANやVoIP、GPS、TDMB(韓国版のワンセグ)、電子辞書、米国および日本への国際ローミングなどをサポートする。

 大きさは118×54×13.9mmで、重さは約133g。ボディカラーはBlack&Purple、White&Silver、Blue&Silverの3色。


 

NECカシオの韓国展開を聞く

左から、白澤氏、佐藤氏、小林氏、岩崎氏

 NECカシオは、カシオ計算機としてこれまでも韓国で端末を展開しているが、これはLGテレコムと共同で立ち上げた端末ブランド「CanU」を通じて行われている。従来であれば、日本国内向けに開発されたモデルをベースに、韓国向けの変更を加えて提供していたが、今回のようなオリジナルモデルは「日本の端末のデザインが韓国では高く評価されており、オリジナルのデザインで開発してほしいと言われた」(NECカシオモバイルコミュニケーションズ グローバル事業部 商品企画グループの白澤聡氏)という要望が発端という。

 同社 グローバル事業部 営業グループの岩崎俊也氏によれば、韓国では日本の文化が親しまれており、アニメ、タレント、ドラマ、映画などの流行が伝わっているという。一方、韓国メーカーの携帯電話のデザインは、カシオが参入した当初「ビジネス向けが多く、無難なものが多かった」(白澤氏)といい、LGテレコムとしても、店頭で目を引く日本デザインの端末ラインナップを揃えたかったという意図があるようだ。


T1200

 韓国向けのオリジナルデザインの端末は、2009年3月に「S1100」が開発されており、第2弾が今回開発された「T1200」となる。デザイナーの佐藤崇氏は「日本向けでは、ここまでコンセプチュアルなものからスタートすることはない。LGテレコムは日本のデザインに興味を持っているので、コンセプチュアルなモックからスタートした」と、開発当初からの違いを語る。日本では要求される仕様がある程度固まっているため、このような始め方は少ないという。

 そのT1200は、積層構造が見えるようなデザインで多機能をイメージしたものになっており、さらに開発当初はスライド式のテンキー部分の外周が(スコップのように)反り上がった形状となっていた。これは最終的にフラットな形状に変更されたが、画面ではタッチパネルにスマートフォンを意識したアイコン配置とするなど、国内向けには無い特徴が多く見られる。画面については、「すぐにいろんな機能を使えるのが好まれるようだ」(白澤氏)ということから、アイコン主体のメニューが採用されている。

 白澤氏によれば、「5メガのカメラモジュールが、実績のあるモジュールというぐらい」で、T1200は内部もほぼ新規に開発されたという。なお、韓国では薄さが非常に重要視されるとのことで、モジュールが大きくなる8メガカメラは、今回のボディ(薄さ13.9mm)への搭載を見送ったという。また、日本の端末と違う点では、Lサイズのバッテリーが標準でラインナップされるため、Lサイズのバッテリーを装着しても破綻しないデザインに仕上げられている。

 ソフトウェア面では、辞書機能を充実させたことが特徴で、漢字や日本語の手書き入力にも対応している。韓国は「学習熱が高い」(白澤氏)といい、中国語と日本語はビジネスで欠かせないことも多いため、勉強する人が多いとのこと。このほか、韓国のワンセグに相当するDMBや、DivX再生、フルブラウザを搭載。無線LANやBluetoothもサポートされている。

スライド式で、側面は積層構造をイメージさせるデザイン一番左が開発初期の段階。右の2つは製品版。左から右に行くにしたがって、形状やボタンの有無も変化。左の開発段階の2つはテンキー側ボディの縁が反り上がっている

 

 韓国市場の動向については、端末の販売にインセンティブが付くものの、縛りは強くないという。多くのユーザーが1年程度で買い替え、また、MNPでは移行先のキャリアが違約金を負担するなどの施策があるため、ユーザーの移動は流動的という。一方、「やってから考える文化でしょうか。新しい料金プランが毎月出てきますね」(白澤氏)と日本とは異なる文化を背景にした事情も興味深いところだ。

 韓国の携帯電話市場における「CanU」ブランドの端末については、白澤氏は「ブランドの認知度は高まっている」と手応えを感じている様子。前モデルは年間販売でトップ10に入る売れ行きだったといい、合計で30万台程度を販売したとのこと。また、CanUブランドに熱心なユーザーがおり、日本の最新端末をチェックして、次にCanUブランドで発売される端末を予想するといった盛り上がりも見せているという。

 その韓国市場での展開について、日本と大きく異なる点は「開発の動かし方が違う」(白澤氏)点だという。「日本では、デザインが決まるとそれを実現するために開発を進めていくが、韓国ではあくまで高い目標があり、とにかく、それに向けて進んでいく。走りながら考えるイメージで、パワフルで速い」と白澤氏はスピード感の違いを語る。一方、「(ディスプレイ下部の)ボタンの有無も、5~6回は変わったり、苦労しました」(佐藤氏)、「デザイン面が強く求められているが、仕様が柔軟に変わる」(機構設計グループの小林泰氏)と、デザインを含め、仕様が基本的に流動的で、苦労している様子も滲ませる。

 しかし、白澤氏によれば、「こちらから依頼する少々難しい仕様変更でも、デザインを優先したいからだと伝えれば、変えてもらえたりする」とのことで、「キャリアと対話しながら、一緒に作っているという感じがする」(佐藤氏)という。「(韓国で一般的な)バータイプは飽きた。ビックリするものを見せて欲しいと言われる」とLGテレコムからの要望を語る白澤氏。また、「日本らしさを残して欲しいと言われる。日本らしさってなんだろうと考えてしまう」(佐藤氏)というように、海外に展開したことで“日本メーカーらしさ”を意識する結果になっているようだ。

韓国向けオリジナルデザインの第1弾「S1100」
韓国でCanUブランドとして発売されたNECカシオの端末。上段はベースとなった日本国内版。Lバッテリーを用意するのが韓国市場の特徴

 



(太田 亮三)

2010/9/24 16:07