マイクロソフト、次世代CE「Windows Embedded Compact 7」を説明


松岡氏

 マイクロソフトは、6月1日に発表したWindows Embedded CEの次世代プラットフォーム(β版)「Windows Embedded Compact 7 コミュニティ テクノロジ プレビュ(CTP)版」の記者説明会を開催した。同社OEM統括本部 OEMエンベデッド本部 シニアマーケティングマネージャーの松岡正人氏より、組込機器開発の次世代プラットフォームが語られた。

 米マイクロソフトは6月1日、台湾で開催されたイベント「COMPUTEX TAIPEI」の基調講演にあわせて、Compact 7のプレビュー版を発表した。Compact 7は、かつてWindows CEの名称で提供されていた組込機器向けのOS。松岡氏は、過去10年に渡り親しまれてきた“CE”というブランド名を「Compact」に変更することについて「大きなマイルストーンになる製品だ」と話した。

 Compact 7ではWindows 7へ対応するほか、従来のCEよりもエンドユーザー向けの製品を開発しやすい環境に配慮されている。松岡氏は、CEについて「顧客となる機器メーカーがユーザーインターフェイス(UI)や機能を開発し、独自のブランドとして確立するためのベース」と説明し、Compact 7については、メーカーがブランドを確立しやすいプラットフォームだとアピールした。

 松岡氏は、CEの市場について、「これまで国内のコンシューマー製品では大きな市場を得られていない」と語った。同氏は東芝製の携帯音楽プレーヤー「gigabeat」や、シャープの電子辞書「Brain」などのCE機を紹介する中で、コンシューマー製品として紹介するものがが少ないと述べた。CE機がコンシューマー市場で拡大しない理由として、UI周りの機能など機能が足りなかったと述べ、Compact 7では、Silverlightに対応するなど、メーカーがよりリッチなインターフェイス開発できる、差別化ポイントに注力できる環境を用意するとした。

 Compact 7はWindows 7と連携し、パソコンと開発機器とのシームレスな統合管理が可能になる。今回からMTPのドライバーが標準でサポートされたことにより、携帯音楽プレーヤーやマルチメディアプレーヤーとパソコンとの連携したサービス環境が提供しやすくなった。

 また、マルチメディア関連の機能として、新たにDLNA1.5がサポートされる。これにより、機器メーカーは家庭内のDLNA対応機器を繋ぐハブのような端末が開発可能になる。DRMコンテンツにも対応しており、課金システムに沿った端末も開発しやすいという。

 さらに松岡氏は、「アップルのiPadのようなマルチタッチの機能も標準搭載される」と話し、コンシューマー向け製品を開発しやすい環境作りが機器メーカーから求められていることを明かした。なお、標準のブラウザはFlash 10.1やAjax、JavaScriptなどがサポートされる。

 このほか、Windows Embedded CE 6シリーズで封印されたOfficeアプリのモジュールも改めて追加され、WordやExcel、PowerPointに加えてPDFも標準で利用可能になる。ビジネス用途としては、金融系などで普及が見込めるシンクライアント端末向けに、Remote Desktop Protcol(RDP)などにも対応する。

 開発環境としては、Visual Studio 2008に対応する。Visual Studio 2010も発表されているが、Compact 7のOS開発は現時点ではVisual Studio 2008になるという。アプリケーションの開発はNETフレームワークを提供する。.NETフレームワークには、開発した端末のテスト環境としてプラットフォーム テスト フレームワークなども用意される。

 下回りの環境としては、従来通りマルチアーキテクチャ、マルチコアプロセッサに対応、ARMv7やx86、MIPSがサポートされる。Windows Embedded CE 6シリーズでは、ルネサス エレクトロニクスのSHシリーズ(SuperH)もサポートされていたが、Compact 7ではサポート外となる。ただしSHについては、CEから派生した車載機器向けのOS「Windows Automotive」で継続的にサポートされる。

 松岡氏は、Windows Embedded Compact 7」の提供時期について2010年末とした。同じWindowsコアとなるWindows Automotiveについても同時期に提供される予定。

 このほか質疑応答において、松岡氏は、Compact 7によってディスプレイサイズが7~9インチ程度のコンシューマー製品の拡大に期待しているとした。また、「iPadのような製品が作れるか?」という質問に対して、マルチタッチ対応のディスプレイ次第とした上で「モックアップみたいなものは数週間でできるだろう」と語った。また、「エンドユーザーはiPadを購入すれば済むのかもしれないが、それではほか(アップル以外)の人は儲からない」などと話し、Compact 7をアピールした。


 



(津田 啓夢)

2010/6/4 15:42