ドコモ、日本通信の「不当廉売」指摘に反論


NTTドコモ 企画調整室 担当部長の梶原弘道氏(左)、企画調整室長の古川浩司氏(右)

 NTTドコモは、日本通信がドコモの法人向け取引を不当廉売などとして総務大臣に意見申出書を提出した件について、ドコモの見解を明らかにする説明会を開催した。

 日本通信は、4月19日に総務大臣宛として意見申出書を提出している。これは、日本通信が2月4日発表の第3四半期決算の中で明らかにしていた主張のうち、不当廉売について意見を提出したもの。

 日本通信が総務大臣に提出した意見申出書の概要は、ドコモの法人相対取引がMVNO向け卸料金より著しく低廉であり、原価を下回る可能性が高いと主張するもので、独占禁止法で禁止されている「不当廉売」に該当する可能性が高いと指摘している。

 また、意見申出書の内容には含まれないものの、日本通信に対する営業妨害や、MVNO事業者との協議の中で知り得た情報を自己の営業目的に使用している事実もあると繰り返し主張しており、日本通信はこの2点についても意見申出書とは別の対策を実施する可能性を示唆している。

 

 

「不当廉売」について

不当廉売の指摘は割引率の比較が不適切とした

 ドコモでは、これまで記者からの問い合わせに個別に回答していたが、5月13日に改めて説明会を開催。MVNOの基本的なビジネスモデルを解説するとともに、主題となった日本通信の主張を全面的に否定した。

 説明にあたったNTTドコモ 企画調整室長の古川浩司氏は、日本通信のこれまでの主張をまとめた上で、意見申出書の核となっている「不当廉売」について、日本通信の主張が矛盾していると指摘する。法人相対取引で指摘の対象となった法人については、日本通信は当該法人の利用実態を考慮せず、高い料金プランと比較して“83%の値引き”などと表現しているとして、「比較対象が不適切」とした。実際にドコモが提案した料金も、このような値引き率とは合致しないという。また、ドコモには存在しない架空の料金プランと比較を行なっている可能性も指摘したほか、MVNO向け卸料金との比較についても同様に比較対象が不適切であるとする図を示した。

 古川氏は、独占禁止法における「不当廉売」の定義から、「原価を下回る価格」「他の事業者の事業活動を困難にさせる恐れがある」という二つの要素を示す。このうち原価を下回るかどうかについては、接続料コストなど原価算出過程を解説した上で、ドコモの法人相対取引の提案料金は原価を上回る水準であり、MVNOにおいても同水準の料金設定が十分に可能であるとする。また、一般的な法人相対取引においても「どんな状況になろうとも、原価を下回らないのが条件」として進めているとし、契約期間や契約規模で大きく変動する価格も、原価を下回ることはないとした。

 この件について、ドコモは、有識者として何人かの法的な専門家に相談したとのことで、原価割れの事実がないことを確認した上で、他の事業者の活動を困難にした事実もないという意見となり、相談した有識者全員の意見が同じだったことを明らかにした。

 また、「日本通信が2月の第3四半期決算で不当廉売を指摘した後から現在に至るまで、総務省、公正取引委員会などから指導、処分などは一切無い」としたうえ、さらに「誇れることではないが、指摘の案件(法人)については、失注している。この点からも不当廉売にはあたらない」とした。

日本通信の主張と、当該法人に実際に提案した料金の比較
接続料金、卸料金水準は適切であるとした不当廉売の定義を確認するとともに、当該の法人相対取引で提案した料金は、日本通信など一般のMVNOでも実現できる水準とした

 

 

営業妨害について


 意見申出書の中には含まれていないものの、以前から日本通信から指摘を受けているという「営業妨害」の件については、「とるに足らないもの、コメントしようがないものもあったので、大きく4つを挙げた」と、代表的と思われる4つのケースを紹介。その上で「一言でいうと、事実無根と言い切れる」と全面的に否定。「念には念を入れて社内調査、および相手企業にヒアリングを行ったが、そういう事実は無いと言われている」と述べ、日本通信の主張が事実無根であるとした。

 

 

情報の目的外利用について


 情報の目的外利用が行われているという日本通信の主張については、MVNOガイドラインに則り、顧客名や利用者の料金水準の取得が禁止されているとし、実際にも入手し得ないとして、「接続協議で知り得た情報は、営業目的に利用できる状況にはない」とし、「NTT西日本の件をイメージしているかもしれないが、MVNOでは同じことをできる状況にはない」とも付け加えた。

 また、ドコモが法人からの問い合せに応じる形で雑誌の記事を引用し紹介した件についても、日本通信は「MVNOとの協議により得られた情報を利用した」と決め付けているとして、指摘は事実に反するとした。

「営業妨害」はすべて事実無根と否定ドコモがある法人からの問い合わせに応じる形で示した情報を、日本通信は「MVNOとの協議により得られた情報」としたが、実際には雑誌の引用で、公知かつ一般的な情報とした

 

 

MVNOへの取り組み


 日本通信との意見の相違や対立が報じられることを受け、ドコモからは改めてMVNOへの取り組みを推進している姿勢もアピールされた。古川氏は「MVNOと対立しているかといえば、ノーだ」とし、MVNOのユーザーが右肩上がりに増加している点や、参入事業者が7社に増えた点を紹介。すでに75社から問い合わせがあることを明らかにした。

 また、オープン化への取り組みとして、コンテンツレイヤーやプラットフォームレイヤーなど「海外との比較においても、例を見ないほど機能(単位で)の提供が進んでいる」とし、接続料金についても年々低減している様子をグラフで示した。

 同氏は「MVNOの参入が、少しでもやりやすい取り組みを、それなりにやっている」と述べ、「(MVNOを)敵視していない」と協調していく姿勢を改めて明らかにした。

MVNOへの取り組みについて。契約者数は増加傾向さまざまな機能を個別に提供するオープン化の取り組み
接続料は年々下がっているとした今後の検討項目にはID認証基盤の連携やSMS相互接続、メール転送、ライフログなども含まれる

 



(太田 亮三)

2010/5/13 17:19