ツーカー跡地を再利用、UQが基地局設備を公開


屋上の基地局装置。左からサムスン製第1世代、第2世代、光ファイバーの電力装置

 UQコミュニケーションズは、実運用されている基地局を披露する基地局見学会を開催した。

 公開されたのはKDDI大手町ビルの屋上に設置されている基地局設備。なお、このビルには他社の通信設備なども設置されており、写真撮影は許可されなかった。掲載している写真は、UQ側がビル管理者の許可を得た上で撮影したものとなる。

 基地局はアンテナ設備と基地局装置、光ケーブルなどの電力装置で構成されている。公開されたビルでは、ビルの壁面3方向に3カ所のアンテナが設置されており、各アンテナが120度、合計360度をカバーする3セグメントタイプとなった。1本のポールに3つのアンテナが搭載され、360度をカバーする3セグメントタイプが一般的だが、今回のビルでは壁面設置が可能なため、3つがバラバラに設置されていた。

 基地局装置はサムスン製のもので、第1世代と第2世代の装置が設置されていた。機能的な差はないが、第2世代の基地局の方が一回り小型化されている。なお、UQでは先週よりNEC製の基地局も設置を開始しており、NEC製の基地局装置はサムスン製よりも価格が抑えられるとのこと。UQは2社を競合させることでコストを抑えていく方針をとっている。

 基地局設備は設計上、半径800mのエリアをカバーできるようにビルの上から地上に電波が吹かれているという。ただし、実際には建物などさまざまな要因によって、1局で半径400~500m程度のカバーエリアになるという。

 このほか基地局設備にはGPSのアンテナも用意されている。これはGPSで受信可能な時間情報を取得しているためだ。UQのWiMAXは、TDD(時分割復信)方式と呼ばれる、通信を時間軸で細かく切り替え送受信を繰り返す方式を採用しており、GPSで5ミリ秒毎にタイミングを計っているという。


壁面アンテナ1360度のうち240度を2つのアンテナでカバーしている壁面アンテナ2

予備電源を持たずに省スペース化

 今回設備の説明を行ったUQコミュニケーションズの渉外部 伊藤泰成氏によれば、UQコミュニケーションズの基地局は、省スペースで設置できる点が大きな特徴になっているという。携帯電話事業者の基地局設備は、音声通話のインフラを確保するために、ブレード型の大きな基地局装置とともに予備電源設備などを用意しなければ運用できない決まりになっている。UQはデータ通信専業となるため、アンテナ設備こそ携帯電話事業者と同等のサイズだが、予備電源持たなければならないほど厳しい決まりはない。同社は当面の間、エリア展開を優先的に行っていく方針という。

 ただし、予備電源を持たないということは、停電などのトラブルが発生すれば基地局は機能しないことになる。伊藤氏はUQの基地局が止まる要因として、停電と基地局に引き込まれている光ファイバーの断線を挙げており、万が一トラブルが発生した場合には、停電の場合は電力会社に、断線の場合は光ファイバーを提供する固定通信会社にインフラの復旧を要請するとしている。なお、現在までに大きなトラブルの影響は受けていないという。

ツーカー跡地を再利用

ツーカーの跡地を利用したアンテナ設備。ポールの一番上の部分がアンテナ
基地局設備

 また、UQの基地局設備でユニークなところは、かつて携帯電話サービスを展開していたツーカーの基地局設備の跡地を再利用している点だろう。

 アンテナなどを設置する場合に、ビル屋上などにはポールを設置し、そこへアンテナを搭載する。UQではこのポールに目をつけ、ツーカーの基地局設備の跡地を活用している。ビルのオーナーからすれば、完全に撤去されればツーカーから得ていた収入が減るため、基地局敷設のオーナー交渉が行いやすいという。ツーカーがサービス展開していた東名阪エリアでは、まずはツーカー跡地を第一優先に基地局を設置しており、半数程度がUQにリプレイスされているという。

基地局敷設が進まない地域毎の諸事情

 伊藤氏はこのほか、各地域毎の基地局敷設にはさまざまな事業があることを説明した。

 たとえば、京都などでは景観に関する条例などがあるため、屋上から飛び出す形ではアンテナが設置できない決まりがある。また、山林などの多い地域では新たな鉄塔設備は景観条例等によって建設できない場合もあるという。

 こうした地域ごとの特性に合わせ、京都などでは今回の大手町のビルで公開されたような壁面設置型のアンテナで対応し、オーナーなどの要望によってはビルと同系色の色に塗装するなど景観を壊さないような配慮をしているという。こうした試みは携帯電話事業者もそれぞれ工夫しているとのこと。

 山間部などの地方では、関連会社にあたるKDDI(au)の鉄塔に併設したり、NTT局舎を借りて併設するといった方策で対応しているという。

 また、UQの株主にはJR東日本がいるため、JRの駅舎のエリア化も積極的に進めているとのこと。UQは成田エクスプレスの新型車両においてUQ WiMAXを導入しており、今後数年をかけてこうした新型車両への対応も進めていくという。

 UQの基地局敷設舞台は、委託先なども含めると500名規模。同社は当初予定を前倒しして基地局敷設を進めており、3月末までに7000局の開局を目指している。1カ月あたり約300~400局の開局ペースで進めており、現在は6700~6800局程度が開通していると予想される。

 



(津田 啓夢)

2010/3/19 17:47