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「auとソフトバンクは5G接続が持続しやすい」、Opensignalのユーザー体感レポートを担当者が解説
2025年11月5日 19:59
オープンシグナル(Opensignal)は2025年10月版の「モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」を発表した。
NTTドコモとau、ソフトバンク、楽天モバイルの回線が評価され、全体ではauが信頼性エクスペリエンスや一貫した品質、ユーザー体験の指標など多くの指標で受賞しており、ドコモが全体および5Gのカバレッジなどで受賞、ソフトバンクは全体のダウンロードスピードや5Gの利用率、楽天モバイルは全体と5Gのアップロードスピードで受賞した。
また、グローバルで見た「オープンシグナル・グローバル・アワード」も10月に発表されている。
どちらの内容も、すでに既報のとおりだが、今回オープンシグナルのレポート担当者が、今回のレポートをあらためて解説し、日本のモバイル回線の最新事情を語った。
ユーザー体験により近い指標
オープンシグナルの調査では、ユーザー体験により近い指標を取って評価している。
たとえば、評価する通信については、通信先を専用のサーバーにするのではなく、グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)、Akamaiといったサーバーにしている。普段からユーザーが利用するサーバーにすることで、ユーザー体験を評価している。
同社では、グローバル企業として世界4拠点にオフィスを構えている。2023年には225以上の公開レポートを発信し、10億以上の規模でデータを収集している。通信業界だけでなく、金融や投資分野などさまざまな企業でレポートが活用されているという。
10月分のレポート
10月版のレポートを解説するのは、プリンシパル・アナリストのロバート・ウィルコウスキー氏。日本国内版レポートとグローバルの5Gレポートについては既報のとおりだが、本稿では主要な分析結果を取り上げる。
5Gビデオエクスペリエンス部門では、auが前回に引き続き受賞したほか、4Gを含めた全体では、auとソフトバンクも同率で受賞している。
ライブビデオエクスペリエンスでも、5G部門でauが1位を獲得している。ゲームエクスペリエンスでもauが1位となっているが、auのほかソフトバンクも、オープンシグナルの分類では「Excellent」となっており、2社が高いレベルで競い合っていると指摘する。
一方、5Gのダウンロードスピードではドコモが2期連続で1位を単独受賞している。アップロードでは、楽天モバイルが全体と5Gでともに1位を獲得している。ウィルコウスキー氏は、ダウンロードスピードについて「競合他社と比べて“非常に大きく差をつけての受賞”」としている。
5Gの利用率を見ると、ソフトバンクが1位を獲得している。ユーザーの端末がアクティブである時間のうち、どれだけ5Gに接続できているかを示すもので、ソフトバンクはおよそ20%の時間5Gが利用できていることになる。一方、3Gと4Gを含めた全体の利用率では、前回4位だった楽天モバイルが今回3位に浮上している。ウィルコウスキー氏は「楽天モバイルとソフトバンクが全体の利用率で肩を並べるようになった」と評価する。
また、カバレッジ、つまり地理的に見た利用率を見てみると、ドコモが5Gと全体の両方で1位を受賞している。日本全体で最も広い範囲で通信ができることを示している。数値を見ると、楽天モバイルの5Gカバレッジスコアが大きく改善しているといい、ウィルコウスキー氏は「日本全体のモバイルカバレッジを広げるために継続的に投資をしたことが功を奏した」とコメントした。
ユーザーがネットワークへ出したリクエストに対する成功率を示したもので、ネットワーク品質の指標の1つとできる「信頼性エクスペリエンス」では、auが単独で1位、一貫した品質の指標でもauが1位を受賞している。
国内モバイル通信の現況
ウィルコウスキー氏は、「5G・グローバル・アワード」を取り上げ、国内モバイル通信の現況を分析する。これは、ビデオのストリーミングやダウンロード速度、接続性の信頼性などを総合的に評価したもので、「日本の通信事業者は、グローバルの5G評価で非常に素晴らしい成績となっている」と評価した。
auは、5Gの信頼性、ゲーム、音声アプリ部門でグローバルの勝者となっている。また、ドコモが音声アプリ、auがビデオ、ソフトバンクが信頼性とゲーム、音声アプリ部門で、業界の先頭を行く「グローバルリーダー」の評価を得ている。
次にウィルコウスキー氏は、5G SA(スタンドアローン、Stand Alone)の現況を説明する。日本におけるNSAとSAをさまざまな角度で評価したものを取り上げ、たとえばダウンロード速度ではSAの方がNSAの1.7倍速度が速く、アップロードも1.5倍速いという。
また、ゲームなどで重要となる遅延(レイテンシー)では、25%遅延が縮小している。ビデオのストリーミングでも、再生までにかかる時間が短縮できるため、ユーザーにとっては「速さを感じる体感」を高めることに繋がると評価する。
コンシューマーだけでなく、企業活動にとっても高性能な5G SAは重要になってくるとウィルコウスキー氏は指摘する。自動車産業や製造業などでは、今後プライベートな5Gネットワークの活用が見込まれるとした。
ドコモの5G利用率が低いわけ
レポートを見ると、「5Gカバレッジ・エクスペリエンス」ではドコモ回線が1位となっている一方、「5G利用率」では芳しくない結果となっている。
カバレッジは、地理的にどれだけカバーできているかを示したもので、利用率はユーザーが端末を利用している全体の中でどれだけ5Gが利用できたかを示している。レポートの結果をみると、「さまざまな場所で5Gが利用できるのに、そこまで5Gに繋がっていない」と受け取ることもできる。
ウィルコウスキー氏は、自身の分析として「使っている周波数帯で差が出ている」と説明。auやソフトバンクではローバンド、つまり転用周波数(NR)など建物により浸透しやすい周波数を組み合わせて使っているが、ドコモは3.5GHz帯や4.5GHz帯といったそれよりも高い周波数帯をメインに使っていると指摘。ドコモの5Gでは、基地局あたりのフットプリントが小さく、かつ通信がより集中する傾向があることで、端末がアクティブな状況でも5Gに繋がらない状況が起きやすくなっていると分析する。
加えて、5G SAの展開にも言及する。auとソフトバンクはドコモと比較して5G SAがより多く利用されていると指摘。5G SAを利用しているデバイスでは、4G接続に戻ることが起きにくく、結果としてより長い時間5G接続が維持できている可能性が高いと話した。


























