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「値上げはしない」楽天モバイル三木谷氏、O-RANの意義や衛星サービスを囲み取材で語る

 9月30日、楽天モバイルが記者説明会を開催し、10月開始と予告していた「楽天最強U-NEXT」の開始日を10月1日と正式に発表した。本稿では、会見後の囲み取材の様子を紹介する。

三木谷氏

囲み取材一問一答

――今回は値上げせず料金を維持するという会見だった。

三木谷氏
 電気代は上がりましたが、合理化とAI化(の効果が大きい)。ソフトウェアの進化が進んでいるんですよね。

 それから、モバイルでは、小型を含めて約40万の基地局を展開しているわけですが、この事実が世界に伝わって、我々のO-RAN(さまざまなメーカーの機器を組み合わせて構築できる無線アクセスネットワーク)やクラウドに対して、凄まじく需要が高まっています。

 海外では、今、10以上のPOC(概念実証、新しいアイデアや技術が実現可能かどうかを検証すること)が始まっています。やっぱり携帯電話会社に対する価格低下圧力が強い。

 それに対して、かつてのような中国メーカーの機材・ソリューションは使いにくいよねという状況の中での回答がO-RANになるわけです。

 O-RANで世界で成功しているのは、現時点では楽天モバイルの技術を担っている楽天シンフォニーだけです。

 AmazonはAWSで一番儲かっているという構造も、実は同じ構造。これはちょっと知っておいていただけたら良いかなと思っています。

国際展開の状況と課題

――米国でO-RANを推進していたDISHの親会社が周波数を売却した。

三木谷氏
 楽天のような顧客を抱えていなかったことは、彼らにとっての課題だったと思います。やっぱり顧客獲得のスピードが重要です。

 一方で、独ワン・アンド・ワン(1&1)はうまくいっています。あるいは、ARPUがまだ低く、これから5G化を進めていかなければならない国・地域での関心は本当に高い。

 もうひとつ、プライベート5G(企業や自治体が自前で構築・運用する5Gネットワーク)ですね。

 プライベート5Gでは、ネットワーク機能の仮想化が効果を発揮する。

 5G SA(スタンドアローン、コアネットワークも含めて5G専用に構築されたネットワーク)では、仮想的に切り分けるネットワークスライシングも実現できます。そのソフトウェア化を今進めているんですよ。実現できれば、結構、面白いことができるんじゃないかなと思っています。

事業成長と料金プラン、顧客戦略

――ネットワークシステムをソリューションとして外販して収益を上げていくといっても、物価高が続いている。どこまで本当に値上げしないのか。

三木谷氏
 頑張ります。未来永劫(えいごう)というわけにはいかないかもしれないけど、本当に楽天グループへのエコシステムへの貢献が大きい。

 以前の楽天は、30歳以上の方の利用が多かった。しかし、楽天モバイルは、30歳未満のご利用が多いんですよね。それはすごくシナジーがある点です。

――一個人としては安い料金プランは間違いなくありがたいが、常日頃、日本の活性化を三木谷氏は唱えている。料金の上昇はデフレからの脱却に繋がるとも思える。

三木谷氏
 いわゆるコストアップインフレーション(原材料費や人件費などのコスト上昇によって引き起こされるインフレ)と、やっぱりディマンドインフレ(需要超過によって引き起こされるインフレ)と違うと思ってます。

 現状をもたらす要因は大きく2つ。ひとつは円安すぎるということでしょう。本来であれば、1ドル130円ぐらいが妥当ではと思います。

 そして、円安に伴う、輸入価格の高騰。これがコストアップインフレをもたらしている。多少の労働力不足もあるでしょう。個人的には、労働規制が行き過ぎたところもあるのではと、正直思っています。

 適切な形で値段が上がっていくというのは良いんですが、今回は、どちらかと言えばコストアップインフレということが、大きな問題かなと思っています。

――総務省からも結構厳しい指導があった。セキュリティ面でのコストアップの要因にならないか?

三木谷氏
 セキュリティの更なる強化は進めています。

 それがかなりソフトウェアで解消できる部分があると思っていて、今のところは、価格に反映しなくてはいけないようなコストアップにはなってないです。

――契約数のスピードが落ちていないが、価格を抑えられる要因のひとつか?

三木谷氏
 もちろんそうです。ある程度、価格弾力性(価格変動に対する需要の変化の度合い)はありますから。

――3GB以下(で月額1078円にする基準)を辞めることは考えているのか?

三木谷氏
 今のところはありません。もっとアグレッシブ(積極的)にいきたいというのもありますし。

 今回の「楽天最強U-NEXT」のように、価値を高めて、その分を……ということは、今後、少しずつやっていくかもしれないです。

――ホッピング(短期での契約・解約を繰り返す利用形態)の対策は?

三木谷氏
 AIを使いながらデータを分析して、そういう傾向と見られる契約に対しては、あまり顧客獲得コストを使わない。別にホッピングされてもコストがかからなければ問題ないんです。

 レギュラーコストがかからないような、インセンティブの仕組みとか、そういうことを考えます。

iPhoneのeSIM専用化に手応え

――新しいiPhoneが発売されたが、手応えは?

三木谷氏
 iPhone、よく売れていますね。予想以上です。

――今回、eSIM専用になっています。混乱は?

三木谷氏
 楽天モバイルは、もともとeSIM重視ですから大丈夫です。



「最初から24時間というわけにはいかないかもしれない」

――衛星通信サービスの進捗とは?

三木谷氏
 衛星の、AST(AST SpaceMobile)との連携は、2026年、最初から24時間フルサービスというわけにいかないかもしれませんが、予定通り始められる予定となっています。

――衛星サービスと、O-RANの親和性はどう考えているのか。

三木谷氏
 結局、周波数帯域(の課題)があります。キャパシティ(通信容量)の話も、たとえばアップリンクとダウンリンクのシンクロナイゼーション(同期)をやめるとか。そういったことができるんですよね。あるいは干渉を抑えるための仕組み作りとか。

 ハードウェアベースのRANでもできるとは思うんですけれども、やはり柔軟性という意味であれば、バーチャライゼーション(仮想化)した方が良いということだという風に思っているので、そういう意味では、O-RANと衛星というのは親和性が高いかなと思っています。

 ASTについては、我々が主要プレイヤーの一つとして入って始めたプロジェクトです。参画する世界中のキャリアのユーザー数を合算すると、20億人か30億人になります。

 各社の国・地域で繋がらないエリアがあり、ユニバーサルサービス(誰でもどこでも公平に利用できること)にとって、とても重要です。今の形式の優位性は高いのかなと考えて、信じて取り組んでいます。

ネットワーク品質の向上策

――通信品質について、最近、速度などが以前と比べて落ちているのでは? といった指摘もある。

三木谷氏
 データ的にはそんなことないんですが、一部では混雑が発生し、適切な対策が必要です。たとえば渋谷の交差点ですとか。

 地下鉄については、一部でまだ5MHz幅のところがあるんですけれど、それも来年の春までに、20MHz幅までアップグレードして、4倍のキャパシティ(通信容量)になります。必死でやっていますんで、信じて応援してください。よろしくお願いします。

――ありがとうございました。