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KDDIの26年3月期Q1は増収減益、主要事業は成長で期初想定通りの進捗
2025年8月1日 21:03
KDDIは1日、2026年3月期第1四半期決算を発表した。連結業績は増収減益のスタートとなり、売上高は1兆4363億円(前年同期比+3.4%)、営業利益は2725億円(同-1.6%)、当期利益は1711億円(同-3.3%)を計上した。
連結営業利益の減少については、一過性の影響によるものとしつつも、主要事業は成長を続けており、期初の想定に対しては着実に進捗していると説明。パーソナルセグメントベースのモバイル事業は、前年同期比で+19億円となり、引き続き期初予想の+30億円を目指すとしている。
一方で、過年度の販促費による影響が-214億円、その他のステークホルダー還元や楽天ローミングによる減収が-29億円あったが、これらは想定内とし、主要事業の進捗は順調としている。
パーソナルおよびビジネスセグメントを合算したモバイル収入は5506億円で、前年同期比+76億円。モバイルARPUは4340円と+60円。
累計契約数は9544万件で、主要回線数は4224万2000回線、そのうちスマートフォン稼働数は3290万6000回線となり、前年同期から約45万回線増加した。
パーソナルセグメント単体のモバイル収入は4905億円で、前年同期比+23億円と着実に成長。新料金プランの好調なスタートや、ARPUの順調な伸長、ブランド間の移行改善や解約率の低下が要因として挙げられている。
新料金プランでは、「au 5G Fast Lane」「au Starlink Direct」「au海外放題」などが好評で、「auバリューリンクプラン」や「使い放題MAX+」を選ぶユーザーが約8割にのぼるという。また、UQ mobileではデータ利用量の増加を受けて、月35GBの大容量プラン「コミコミプランバリュー」を選ぶユーザーが約4割を占めている。
サービス改定とあわせて実施したマルチブランドの再設計も、期待どおりに機能しているという。UQ mobileからauへの移行は前年同期比で1.4倍に増加し、auからUQ mobileへの移行は大きく減少。解約率は、auが引き続き低水準を維持し、UQ mobileも改善。主要回線の解約率は1.27%、うちスマートフォンに限ると1.23%だった。
質疑応答
――今年後半から来年にかけての通信環境について、他社の映像セットプランやKDDIの既存プラン料金改定が市場の流動性やARPUにどう影響するか、また今後の競争環境の見通しについて教えてください。
松田社長
通信市場は、大容量・中容量・小容量と多様なニーズがありますが、全体としては十分にコントロールできていると考えています。新たに発表した「バリューリンクプラン」では、「au 5G Fast Lane」「au Starlink Direct」「au海外放題」などの価値が評価され、想定以上の加入をいただいています。
また、auとUQ mobileを機能面で明確に分けたことで、ブランド間の移行がフラットに近づいているのも良い傾向です。
解約率に関しては、ここ3~4カ月、セット割での加入に注力しており、エンゲージメントの高いユーザーを重視しています。ミニミニプランは廃止し、2つのプランに集約しました。というのも、ミニミニプラン利用者のうち50歳以下の約半数が1年以内に解約している実態があり、今後は長期利用につながる工夫が必要だと考えています。UQ mobileではトラフィックが20%近く増加したため、「トクトクプラン2」を5GBに増量しました。
新プランの反応は非常に良好で、現時点で大きな解約の動きは見られません。また、映像セットプランについては、当社にも「サブスクぷらすポイント」としてアラカルトプランを全て含んだ料金プランがあり、20%の還元も可能です。これが競争力となり、秋から年末にかけての競争期を迎えるにあたって強みになると見ています。
――金融決済分野について、ドコモが銀行機能を自社に取り込むなど、競争の構図が変わりつつあります。今後の競争環境について、どのように捉えていますか。
松田社長
ユーザーのニーズに応えることが根底にあり、引き続きパートナー企業とともに取り組んでまいります。
取締役執行役員常務 勝木朋彦氏
ご指摘のとおり、NTT様が銀行事業に参入されたことで、通信と金融を組み合わせた経済圏競争が主戦場になりつつあると認識しています。KDDIは長年、金融分野に先行して取り組んできており、その戦略は正しかったと考えています。
今回は、国内最大級のネット証券であるSBI証券様と業務提携を発表しました。背景には、今年1月に長年パートナー関係にあった三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と、auじぶん銀行とauカブコム証券の資本関係を見直したことがあります。今後はお互いの注力領域で事業強化を図り、MUFGとの協業も加速していく方針です。
その上で、証券領域については新たな提携先の拡大を進め、auじぶん銀行の成長を最大化する考えです。SBI証券様との提携はその一歩であり、今後も他の証券会社との連携拡大を視野に入れ、様々な可能性を検討してまいります。
――決算において営業利益を押し下げた販促費について、73億円は一過性とのことですが、残りの141億円は継続的なものなのでしょうか。
松田社長
73億円は一過性のもので、昨年度第1四半期に販促関連で計上した引き戻し益の反動によるものです。今後同様の費用は発生しません。
それ以外の部分については、「スマホトクするプログラム」に関連する費用が主な要因です。行使率や転売収支の動向を踏まえ、必要な引当や洗い替えを行った結果であり、今期に限ったもので、今後も続くとは見込んでいません。
――5月の決算発表で、料金プランの刷新により営業利益が300億円上乗せできるという見通しがありました。現在もその見通しに変化はありませんか。
松田社長
はい、大部分が本日より開始となる新プランの改定に伴うものです。「バリューリンクプラン」もテレビCMなどでしっかり訴求しており、引き続き加入を促進していくことで、300億円の上乗せを実現してまいります。
――モバイル収入は下期に成長するとのことですが、具体的な要因は。また、競合の料金改定の影響はどう捉えていますか。
松田社長
本日開始の料金改定を含め、下期に向けてしっかり300億円の営業利益増を目指していきます。
料金競争の影響については、UQ mobileの解約率は減少傾向にあります。ただし、小容量プランでの新規獲得がやや鈍化している点は課題です。ミニミニプラン利用者のうち、50歳以下の半数が1年で解約していることがわかっており、今後は5GBの特別プランで受け皿を整えていく方針です。
――5G SAの進捗と今後の展開、また法人需要への対応について教えてください。
松田社長
5G SAについては前向きに取り組んでおり、Sub6もすでに整備済みです。今後もネットワークの面的展開を進め、フロントランナーであり続けたいと考えています。
SAは法人ニーズにもマッチしています。技術的には、5Gのみを掴む構成のため、NSAのように4Gのアンカーを探す必要がなく、動作がシンプルになります。これにより遅延も短縮され、OpenSignalのデータでもその効果が示されています。運用面でもSAは効率的であり、積極的に展開していきます。
人口カバー率は現時点で90%以上に達しており、残りのエリアも順次広げていく予定です。
――ミニミニプランの解約率が高いとのことですが、今後の見直し方針について教えてください。
松田社長
5月時点で、UQ mobileの既存プランの見直しを検討しているとお伝えしましたが、現時点では詳細をお話しできる段階にありません。準備が整い次第、正式に発表いたします。
――「au Starlink Direct」でAndroidからの写真・動画送信が可能になったとのことですが、これはデータ通信開始が間近という理解でよいですか。
松田社長
もともとGeminiなどでは写真データの受信がありましたので、回線としてはすでにデータ通信が可能な状態です。Googleメッセージ上で写真・動画を添付できるようになりつつあり、今後はアプリベンダーとの協議を進めながら、天気アプリや登山アプリなどでもデータ通信に対応できるよう調整しています。
8月末、つまり夏休みの終わりまでには、データ通信を正式に提供できるように準備を進めています。ぜひご期待ください。
――スマホ新法のガイドラインが公表されましたが、KDDIとしてはどう捉えていますか。
松田社長
スマホ新法が12月中旬から施行されることは認識しています。当社は直接的な対象ではありませんが、お客様の混乱を懸念しています。施行後も、ユーザーの声をしっかり届けていくことが重要だと考えています。
たとえば「チョイススクリーン」では、これまで選ばなかった選択肢を選ぶよう促される仕組みになります。理解がある方には良いですが、そうでない方にとっては混乱が生じる可能性があり、CS対応の増加も想定しています。そのようなフィードバックを積極的に行っていきたいと思います。
――SBI証券との提携でリアルタイム口座振替が可能になりますが、今後他の証券会社との連携も進める方針ですか。
松田社長
はい、「マネーコネクト」として、他の証券会社とも同様の連携を進めていく予定です。
――AIについて、投資額や売上・利益目標など、具体的な数字はありますか。
松田社長
昨年度、4年間で1000億円をAIに投資する計画を発表しました。現在はその構築段階にあり、大阪・堺の土地をシャープ様から取得し、サーバー群の導入を進めているところです。
今期から本格稼働する予定で、AIサービスとしての収益化も視野に入れています。学習用途に加え、推論用途でも活用し、事業として成立させていく必要があります。現時点では数字をお示しできませんが、準備が整い次第、改めてご報告いたします。






