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日本郵便、英数字7桁で伝えられる「デジタルアドレス」の提供を開始 公式APIもリリース
2025年5月26日 14:14
日本郵便は26日、自分の住所を英数字7桁で伝えられる「デジタルアドレス」の提供を開始した。あわせて、郵便番号などから住所を取得できる「郵便番号・デジタルアドレスAPI」の提供もスタートした。
住所の記載・入力、引越し時の変更が楽に「デジタルアドレス」
「デジタルアドレス」は、都道府県から町域、建物情報などを含む住所全文を、7桁の英数字で構成されたコードとして個人ごとに取得・利用できるサービス。本人の申請ベースでIDと住所の組み合わせ単位に発番され、郵便番号7桁制度と併存して運用される。
7桁のデジタルアドレスを入力するだけで、あらかじめ登録した住所と紐づけられるため、長い住所の手書きやWebサイトでの入力の手間を削減できる。また、デジタルアドレスは住所そのものではなく、個人に紐づく識別コードのため、引越しなどで実際の住所が変わっても、同じデジタルアドレスを使い続けることができる。
ユーザーは、ゆうIDに登録している自身の住所をデジタルアドレスへ変換し、削除や再取得も可能。ただし、再取得の際は以前と同じデジタルアドレスを再度取得することはできない。さらに、7桁という構造上、地理的な場所や同居者情報は直接含まれておらず、プライバシーにも配慮。デジタルアドレスから名前を特定したり、逆に名前や住所からデジタルアドレスを検索することもできない仕組みになっている。
ユーザー側のメリットとして、長い住所や漢字が難しい住所でも7桁入力するだけで済み、PCやスマホでの入力も自動化が可能。日本語に不慣れな在日外国人や高齢者にとっても、住所入力が簡単になるメリットがある。また、省略されがちなマンション名なども含められるため、住所情報の精度が向上し、正確な配達の実現や、ドローン・無人配送といった多様な受け取り方法の普及にも寄与すると期待されている。
引越しの際も、日本郵便に転居届を提出すればデジタルアドレスの紐づけ先も更新され、デジタルアドレスを各種サービスに連携しておくことで、住所変更の手間を大幅に軽減できる。
事業者側にも多くの利点がある。申し込み時の住所入力ミスや手書きの読みづらさ、マンション名などの記載漏れを防止し、正確な住所を取得可能になる。また、住所の表記ゆれ対応や名寄せも行いやすくなり、住所の管理・変更対応にかかる工数を削減できる。住所情報の最新化やデータ活用も進めやすくなる。
さらに、用途ごとに発行・管理するのも容易で、法人の取得や部署ごと、キャンペーン用、返品先用など、用途別のデジタルアドレス払い出しも可能。住所共有も簡単になり、位置情報を付与することで、入口や駐車場などの詳細情報も共有でき、地図サービスやSNS、ガイドブックなどへの記載を通じて、来店促進などにも活用できる。将来的には、頭文字3文字を選べる「ブランドデジアド」による企業のブランディング展開も予定している。
サービス開始の背景には、日本郵便が配達原簿や転居届等によって「日本一住所に詳しい存在」でありながら、郵便法の制約により住所をビジネス利用できないことや、郵便物の減少による収益減への対応、物流2024・2025問題などの事業環境の変化がある。
ユーザーからは「住所の記入や入力が面倒」「住所を教えたくない」「転居時の住所変更が煩わしい」「置き配をしたいが、個人情報が丸見えになるのは困る」といった声が寄せられている。特に、ECサイトでの住所入力が「面倒」と感じる人は61.4%、病院やホテルでの手書き記入は75.7%、引越し時の住所変更では85.1%にのぼるなど、住所にまつわる不便さが多く存在する。
事業者側でも、「住所間違い」「転居情報の未更新」「名寄せの煩雑さ」「正確な位置情報の不足」といった課題があり、デジタルアドレスはこれらの課題解決を通じて、「より簡単に、よりセキュアに、より便利に」住所を扱える社会を目指している。
無料で利用可能な「郵便番号・デジタルアドレスAPI」も提供
デジタルアドレスの提供開始と同時に、「郵便番号・デジタルアドレスAPI」も提供を開始。このAPIは、郵便番号またはデジタルアドレスから最新の住所情報を取得できる日本郵便公式のAPIで、事業者向けに無料提供される。漢字、カナ、ローマ字表記に対応し、フリーワード検索も可能。
API活用により、マスターデータのメンテナンスや更新の手間・コストを削減でき、ローマ字対応によって在日・訪日外国人向けのサービスにも展開可能。さらに、Web入力の利便性向上、住所の名寄せ・最新化の促進にも貢献する。
今後の展望として、日本郵便はデジタルアドレスを郵便・物流事業の高度化や社会インフラ化、新たなイノベーション創出の基盤として位置づける。デジタル庁が進めるアドレス・ベース・レジストリと連携し、正規化された住所がデジタルアドレスを通じて活用される社会を目指す。
サービスはまず、郵便局アプリでのゆうパック送り状作成などから利用を開始し、順次社会全体へ浸透させていく。手紙からメール、電話からチャット、現金から電子決済へと社会の当たり前が変わってきたように、住所の「当たり前を変える」挑戦として位置づけている。