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Apple、iPhone/iPad向け最新OS「iOS 8」を今秋リリース
連続性をテーマにiCloudやOS Xとの連携も強化
(2014/6/3 07:16)
Appleは2日(現地時間)、開発者向けカンファレンス「WWDC」の基調講演で、iOSの最新バージョンとなる「iOS 8」や、パソコン用OSであるOS Xの最新バージョン「OS X Yosemite」などを発表した。提供時期は今秋。ハードウェアの新製品は発表されていない。
iOS 8はデザイン上の変更は少なめだが、いくつかのアプリや機能が強化されている。また、サードパーティの開発者向けに多くの機能が解放され、これまでになかったアプリが開発可能になっていることも大きな特徴となっている。
iOS 8とOS X Yosemite(ヨセミテ)はともに今秋、一般向けに提供される。いずれも対応デバイスなら無料で入手できる。iOS 8はiPhone 4s以降のiPhoneと、第5世代以降のiPod touch、iPad 2以降のiPadで利用できる。開発者向けにはベータ版が本日から公開される。
本稿ではWWDCの基調講演およびAppleの公式サイトで公開されたiOS関連の主な新機能や変更点を紹介する。なお、ここで紹介する機能は開発中のもので、変更される可能性があるほか、日本では導入されなかったり導入が遅れたりする可能性もある。
メールアプリやメッセージアプリ、写真アプリなど標準アプリを強化
iOS 8では標準アプリのいくつかが強化される。「メール」アプリは作成中メールのウィンドウを画面外に一時待避させ、ほかのメールを閲覧できるようになった。メールのリストをスワイプして既読やフラグ操作をできるようにもなっている。
WebブラウザのSafariはiPad版におけるタブの表示が変更され、サムネイル一覧が表示されるようになっている。ブックマークの表示もOS X版のSafariに近いサイドバー形式となる。
「メッセージ」アプリも強化される。短い音声メッセージやビデオを簡単に送受信できる機能が追加され、ロック画面から受信した音声を聞いたり、すぐに音声で返信したりできる。「メッセージ」上でのグループチャットはスレッド単位での管理になり、スレッド参加者の位置情報の共有や、共有された写真の一覧表示、スレッドごとの通知の有無の設定、スレッドへの招待およびスレッドからの退席などが可能になっている。
「写真」アプリは編集機能が強化されており、明るさなどをより細かく調整することが可能になった。また、iCloudのフォトストレージ機能も強化され、無料で5GBまでの容量が提供される。写真の検索機能も追加された。
「カメラ」アプリには一定間隔で撮影した静止画を動画にする、いわゆるタイムラプス撮影機能が追加される。
通知センターやタスクスイッチ画面、Spotlight、家族向け機能の強化
アプリ以外の、基本的なiOSのUIとしては、通知センターが強化され、サードパーティがウィジェットを提供できるようになる。メッセージなどは通知ウィンドウから簡易返信することも可能になっている。
ホームボタンをダブルタップして表示させるタスクスイッチ画面には、アプリのサムネイルに加え、Favorites(よく使う項目)とRecents(最近使った項目)の連絡先がアイコンで表示されるようになった。
検索機能の「Spotlight」も強化されている。従来は端末内のローカルデータの検索が中心だったが、iOS 8ではWikipediaやニュース、マップ、iTunes Store上のコンテンツも検索できるようになる。Safariのアドレスバーから検索するときも、Wikipediaの検索が行なえる。
文字入力に使うソフトウェアキーボードについては、予測変換機能が強化されている。予測変換の強化については、日本を含む14カ国向けに最適化される。大きな変化としては、新たにサードパーティが文字入力ソフトウェアを提供できるようにもなっている。
家族向け機能として、「Family Sharing」という新機能も紹介された。6人までのユーザーを家族として設定しておくと、家族間でiTunesで購入した音楽や映画、書籍、アプリを共有できるようになる。ただし公式サイト上での但し書きによると、すべてのコンテンツが共有可能対象にはならないという。
また、子どもがコンテンツを購入するとき、親に許可を申請し、親が許可すると親の決済で子どもがコンテンツをダウンロードする、という仕組みも導入される。Apple IDは13歳以下の子ども作成が可能となる。
さらに家族間でのフォトストリーム共有やスケジュール共有、位置情報の共有/検索の機能も追加される。
iOSとMacを連携させる「Continuity」や「iCloud Drive」
同時に発表された。パソコンのMac用最新バージョン「OS X Yosemite」とiOSが連携する機能が「Continuity」(連続性)として紹介されている。
WWDCの基調講演では、Mac上のアプリでドキュメントを編集しているとき、近くにあるiOSデバイスに連携アイコンが表示され、そのアイコンをタップすることでiOSデバイスでドキュメントの編集を継続できるというデモンストレーションが紹介された。逆にiOS側からMac側に作業を移行することもできる。この連携にはiCloudアカウントやストレージを利用している。
こうした移行の機能は、公式サイト上では「Handoff」として紹介されている。公式サイト上によると、MailやSafari、Pages、Numbers、Keynotes、マップ、メッセージ、リマインダー、カレンダー、連絡先などのアプリがHandoffに対応するほか、サードパーティがHandoff対応アプリを開発することも可能だという。
通話については特別扱いとなっており、MacからiPhoneを経由して、音声通話の発着信が可能になっている。またメッセージについても、従来は不可能だったSMSの送受信が、iPhoneを経由する形で、Macから操作可能になっている。
iCloudのストレージ機能も「iCloud Drive」として強化される。MobileMeからiCloudに変更されたとき、汎用のストレージ機能が省略され、iCloud対応アプリのファイルしかiCloudには保存できなくなったが、任意のファイルをiCloud上に保存する「iCloud Drive」という機能が追加される。この機能はiOS機器とMacに加えWindowsパソコンからも利用できる。iOSではアプリごとのファイル管理ではなくなったため、複数のアプリからひとつのファイルを扱うことが可能になる。
開発者向けにさまざまな機能を解放
iOS 8ではサードパーティ向けにさまざまな機能が解放され、これまで作れなかったアプリが開発できるようになっている。
たとえば文字入力キーボードについて、iOS 8ではサードパーティが開発できるようになる。キーボードについては通信を行わないなど、セキュリティ・プライバシー面で強固な制御も加えられる。
アプリ間で情報をやりとりする連携機能も、強化される。iOSでは各アプリが独立した「サンドボックス」で動作し、OSとしかアクセスできない構造だが、iOS 8ではアプリとアプリの連携をOSがサポートする機能が追加される。
加えて、通知センターのウィジェットや共有オプション、カスタムアクション、写真のフィルタもサードパーティが開発できるようになっている。基調講演ではSafariでWebを閲覧中、Bingのカスタムアクションを使い、日本語のWebページを英語に翻訳するデモンストレーションが披露された。
さらに、新たな取り組みとして、「HealthKit」と「HomeKit」という2つの機能も紹介された。
「HealthKit」は運動や睡眠、心拍、食事、薬など健康状態に関するさまざまなデータを統合的に管理する機能。これらのデータは標準アプリで管理できるだけでなく、サードパーティ製アプリからもアクセスできるのが特徴。
これまで、こうした健康管理などのデータは各アプリごとで異なるフォーマットでデータを管理していたが、「HealthKit」においてデータフォーマットが統一されることで、異なるサードパーティのアプリでの連携が容易になる。たとえば医療ケアのサービスを利用する際、フィットネスアプリなどで「HealthKit」に蓄積したデータを、他のサービスやアプリで利用する、といったことが可能になる。
さらに「HomeKit」というフレームワークも提供される。ネットワーク対応の電球や玄関の鍵、ドアカメラといったネットワーク対応の機器は、これまでは製品ごとに独自の通信方式を使っていたが、これらに対し、Appleが共通の通信方式を提案することになる。
このほかにも、指紋認証センサー「Touch ID」や写真のフィルタ、カメラのマニュアル撮影、iCloudの連携機能などの新しい規模の大きなAPIがサードパーティに公開される。
ゲーム開発向けには、2Dカジュアルゲーム向けの「SpriteKit」、3Dカジュアルゲーム向けの「SceneKit」、A7チップに最適化され処理が高速化する「Metal」といった技術も提供される。Metalについては数社のゲーム開発会社が協力しており、基調講演ではEPIC Gamesがデモンストレーションも行なった。
このほか、開発環境の大きな変化としては、新規の開発言語として「Swift」がAppleから発表された。基調講演ではSwiftを使って簡単なゲームのコードを書きつつ、リアルタイムでゲームの動作画面を表示し確認するというデモンストレーションも紹介された。
Swiftは従来からiOSおよびOS Xのアプリ開発に使われていたObject-Cと共存が可能で、同一プロジェクト内にコードを混在させることも可能だという。登録した開発者は、現在公開中の開発環境「Xcode 6」のベータ版でSwiftを使ってアプリ開発が可能。iOS 8およびOS X Yosemiteリリースのタイミングで、Swiftで作ったアプリをApp Storeで配信できるようになる。
App Storeにも変更があり、サードパーティの開発者が開発中のベータ版アプリを提供することが可能になった。このほか、複数アプリの一括購入や、アプリの紹介画面で動画の掲載も可能になる。
iOSとの親和性が高まった「OS X Yosemite」
同時に発表されたMac用のOS X Yosemiteは、従来よりもiOSとの親和性が高まっている。
まずアイコンなどのデザイン面で、OS X YosemiteはiOS 7で採用されたフラットデザインにイメージが近づけられた。Spotlightなどの機能もiOS 8同様に強化されている。
また前述の通り、近くにあるiOS機器との連携機能が強化されており、Macから通話やSMS送受信を行なったり、各アプリでの作業を簡単に受け渡したりできるようになった。有効なWi-Fiがないとき、近くにiPhoneがあれば自動でiPhoneのテザリング機能を起動できるようにもなっている。
OS Xの通知センターのウィジェットや共有オプション、カスタムアクションについても、iOS 8同様にサードパーティに解放されるほか、SpriteKitやSceneKitもOS X Yosemite向けに提供されるなど、開発環境の親和性も高くなっている。さらにiOS機器を仲介し、iOS機器向けゲームコントローラー(Made For iPhone規格)をMacから利用することも可能となる。
なお、OS X Yosemiteでは、一般ユーザーも参加できるパブリックベータの提供も予定されている。