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総務省、心臓ペースメーカーへの影響を防止する指針にスマホを追加

 総務省は、心臓ペースメーカーなどの植込み型医療機器に対する電波の影響を調査し、改定した指針を公表した。調査では新たに、W-CDMAとIEEE 802.11nの組み合わせを調査、改定された指針では、これまで「携帯電話端末」としてきた対象に、スマートフォンなどの無線LANを内蔵した携帯電話端末も含めることとした。

 総務省による、電波の植込み型医療機器(心臓ペースメーカー、植込み型除細動器)への影響調査は毎年実施されており、新しい通信方式を順次追加・調査した上で、調査結果の公表や指針の改定を行っている。現在、携帯電話端末については、過去の調査において最長3cmの距離で一部の植込み型医療機器が影響を受けたことがあったため、指針では装着部位から15cm程度離すこと、としている。

 今回行われた2014年度の調査では、携帯電話端末の電波と無線LANを同時に利用できる端末としてスマートフォンなどを対象とし、W-CDMAとIEEE 802.11nの組み合わせで調査された。なお、LTEやIEEE 802.11aなどほかの通信方式および周波数帯はこれまでに調査され、結果も公表されている。

 今回の調査では、W-CDMAは800MHz、1.5GHz、1.7GHz、2GHzが対象で、IEEE 802.11nは2.4GHzと5GHzが対象。これらの組み合わせで影響の有無が調べられた。調査の結果、スマートフォンの実機を使った調査で、影響を受けた植込み型医療機器は無かった。

 実機よりも厳しい条件になるスクリーニング測定では、W-CDMAの800MHzとIEEE 802.11nの2.4GHzの組み合わせ、およびW-CDMAの800MHzとIEEE 802.11nの5GHzの組み合わせにおいて、心臓ペースメーカーの28機種中3機種に、最長1.5cmの距離で影響がみられた。影響の度合いはカテゴリーレベル2で、これは、動悸やめまいなどの持続的な影響が出るものの、距離を置くなど患者自身の行動で現状を回復できるものと定義されている。また、心臓ペースメーカーの心電位感度は最高感度の設定で調査されており、設定に従って1~2段階、感度を落とすと電波の影響が無くなることが確認されている。

 なお、スクリーニング測定で影響の見られた心臓ペースメーカーの3機種について、IEEE 802.11nのみの電波では影響がみられなかったことなどから、電波の組み合わせが原因ではなく、W-CDMAの800MHz帯の電波による影響が支配的であると考えられるとしている。

 植込み型除細動器(32機種)については、実機およびスクリーニング測定でも影響はみられなかった。調査結果の詳細は総務省のWebサイトで公表されている。

 調査結果を受けて改定された、2014年(平成26年)5月付の指針では、携帯電話端末の定義に「スマートフォン等の無線LANを内蔵した携帯電話端末を含む」という一文が括弧書きで追加されるなどしている。

太田 亮三