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ドコモ・バイクシェアの新型モビリティ、歩道禁止と免許必須にするねらいとは
2025年2月19日 15:11
ドコモ・バイクシェアは19日、新型の電動モビリティの実証実験を2025年春に開始すると発表した。あわせて、電動モビリティも公開された。
新型の電動モビリティは、特定小型原動機付自転車(特定小型原付)の区分に該当するが、一部の特定小型原付に備わっているいわゆる“歩道走行モード”は搭載せず、歩道走行ができないほか、自動車運転免許を保有しているユーザーに限り利用できる。
ほかのモビリティシェアサービスでは、免許不要でテストに合格すれば乗れるという形式があるなかで、同社では一定基準を独自に設けたサービス提供を実施していく。
歩道走行禁止の電動モビリティ
今回導入される電動モビリティは、一見すると自転車のような形状。定格出力350Wで重さは28.6kg。最高速度は20km/h。人と貨物あわせて最大120kgの耐荷重をサポートする。前後の車輪にドラムブレーキを備えている。
ハンドルには、アクセルレバーとブレーキレバー(左右)、ウインカーのスイッチ、速度計と電池残量を示すディスプレイが用意されている。
自転車のペダルにあたる部分はステップになっており、ユーザーは走行中ステップに足を置くかたちになる。サドルポストの高さは調整できるが、自転車のようにペダルを漕ぐわけではないので、自転車ほどサドル調整は必要ないように見える。前輪には、サスペンションが備わっており、段差もスムーズに乗り越えられる。
実際に乗車してみると、ハンドルを一気に回しても急加速せず、おだやかに加速していく。かといって加速しづらいわけではなく、ちょうどいい加速感で出発できる。筆者は今回、平地での試乗だったが、坂道であっても「十分なパワーがあるので、ある程度の坂道でも十分加速できる」(ドコモ・バイクシェア 代表取締役社長 武岡雅則氏)という。
貸出/返却や車両の施錠を担うユニット部分は、今回車両本体に内蔵されている。ユーザーは、利用開始から利用中の車両の施錠、車両の返却まで、基本的にスマートフォンアプリで操作するかたち。実証実験では、バイクシェアのアプリとは別のアプリが用意され、そのアプリで利用登録から実際の利用までを担う。利用には、運転免許証の登録と本人確認(eKYC)、交通テストが必要となるため、ユーザーの混乱を避けるため別アプリになったといい、今後バイクシェアのアプリとの統合や連携なども検討される。
法令遵守の徹底と安定性、安全性を追求
ドコモ・バイクシェア 代表取締役社長の武岡雅則氏は、新たなニーズに対応する新型電動モビリティだとする一方「モビリティを入れただけで解決することはない。街や人から受け入れられる存在にならなければ、日常の移動手段にはならない」と、今回の導入では“安全性”を重視したと説明する。
今回の電動モビリティは、ドコモ・バイクシェアとハセガワモビリティ、YADEAの3社が共同開発したバイクシェア独自モデルの機体で、法令遵守や安定性、安全性などを鑑みた設計をしている。武岡氏はさまざまな形状のモビリティがある中「最も快適で走行性があって長距離の移動にも耐えられる」と自転車の形状に似た今回の機体を選定したとコメント。
ソフト面での安全対策としては、モビリティに乗る人と、乗らない人(周囲の人)に対しての安全性を作り上げる工夫をしたと話す。
特に、法改正されて間もない“特例特定小型原付”では、最高速度が時速6kmに制限されたモードでのみ歩道走行が認められている一方、通常のモードのまま走行してしまうユーザーや、車道の右側を通行してしまうユーザーなど、交通ルールを知らない、守らないユーザーが散見される。
ドコモ・バイクシェアでは、歩道を走行できるモードを非搭載にすること、免許を必須とすることで安全性の向上を図る。武岡氏は、免許必須について「運転技術ではなく交通知識を求めている」と説明。電動モビリティでは自転車以上に“車両”の色が強くなっているとし、「自動車やバイクのように車道の中できちんとした交通知識を持った方が利用する状態を前提としたい」とコメント。アプリ内の交通安全テストも、「何回か解けば合格するようなものではなく、体感的に理解できるようなものを用意したい」とした。
東京以外のエリアを選定中
実証実験を実施するエリアについては、当初は東京以外のエリアへの展開を検討している。武岡氏は「東京ではもうすでに何万台も自転車が配置されており、そこに少ない規模で入れてもなかなか効果が見えにくい」とコメント。適度なエリアに一定規模の電動モビリティを導入し、ユーザーが選択できる環境を目指し、エリアの検討を進めている。道路状況や交通事情など、さまざまなシーンを想定し、実際に“街の移動手段”としてなじめるかどうか見極めるのも、今回の実証実験のねらいでもあると話す。
ヘルメットについては、安全面においては重要である一方、貸出用として設置した場合、衛生面での不安で使われなかったり、ユーザーのサイズに合ったヘルメットが用意できなかったりと、ポートへの設置には課題がある。同社では、ヘルメットのプレゼントキャンペーンや、貸出拠点を設けるなどにより、ユーザーのヘルメット着用を促していくとしている。
なお、利用料金については、電動アシスト自転車と同様の利用時間による従量課金制が検討されている。自転車と価格体系は異なる物の「車体の調達価格が(自転車と比較して)倍増しているわけではないので、利用料金が倍になるようなことは考えていない」(武岡氏)と話す。
貸出ポートは、物理的には現在ある自転車用のポートがそのまま活用できるようになっている。ただし、ポート設置に対して地権者への説明と同意が必要であるため、本格展開時に“どちらか片方だけのポート”となる可能性もある。
今回の電動モビリティの名称はまだ決まっていない。自転車やオートバイと異なる特徴を適切に表現し、かつ交通手段の一員としてなじむ呼び方が必要だと武岡氏は指摘。街では道路交通法が遵守されていないモビリティも使用されている光景もあることから、これらとも差別化でき、かつ歩道走行禁止など安全面でも誤解を与えない名称を考えていくとした。
説明会では、安全性の向上とともに、社会になじみやすいモビリティとしての重要性が特に強調されていた。武岡氏は「エリアを定めて広く普及させることで、安全対策や考え方の受け入れられ方、足りているのか、何が足りないかを見極めていきたい」とし、商用サービス展開への意気込みを見せた。