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デジタル庁の「マイナカード対面確認アプリ」、そのしくみと使い方

 8月、デジタル庁は、携帯電話の契約時などの本人確認で、店舗側が利用することを想定した「マイナンバーカード対面確認アプリ」の提供を開始する予定だ。

 本人確認をする際に利用するもので、一般のユーザーが触れる機会はないが、それでもどういった情報を読み取るのか、気になる人もいるだろう。今回は、「マイナンバーカード対面確認アプリ」活用の流れなどをご紹介する。

店頭での流れ

 「マイナンバーカード対面確認アプリ」は、携帯電話回線の契約などの手続きで、民間企業の窓口で用いられる。スタッフのスマートフォンにダウンロードして利用するものだが、アプリ自体は一般に公開される。

 利用時には、カメラで顧客のマイナンバーカードを撮影すると、OCRで「照合番号B」が読み取られる。「照合番号B」とは、マイナンバーカードの券面に記載されている所有者の生年月日(6桁)+有効期限(4桁)+セキュリティコード(4桁)をあわせた、14桁の数字だ。

照合番号Bを用いる

 もし、撮影する場所が暗すぎてカメラで読み取れない、といった場合は、アプリ上で「照合番号B」を手入力する。

 そのあと、スマートフォンにマイナンバーカードをかざして、マイナンバーカードのICチップの内容を表示する。もし照合番号Bの情報と、マイナンバーカードのICチップ内の情報が異なれば、エラーが表示される。

 その上で、手続きを担当する店舗スタッフが、目視で画面上の情報と、申込手続の書類に記された本人の情報を照らし合わせる。同時にマイナンバーカードの写真と本人の顔も見比べる。

店頭での流れ

アプリはマイナンバーカードのみ対応

 読み取ったあと、スマートフォン内には、「確認した日時」と、照合番号Bのうち「有効期限」「セキュリティコード」あわせて8桁の数字の2つが保存される。個人情報である生年月日は保存されない。

 これらの情報が記録されることで、導入事業者はあとから「このときの手続きはマイナンバーカードで本人確認したか」といったことを確認できる。

 スマホには最大1000件、保存される。期間の制限はないが、上限に達すると古いものから自動的に削除となる。

 また、スマートフォン内のデータを、パソコンなどに移動させることはできない。機能拡充は検討されていないとのことだが、デジタル庁では今後の意見を見ていくという。

携帯電話の契約ではマイナンバーカード以外も

 今春、偽造されたマイナンバーカードの券面だけを見て、他人に携帯電話回線が不正に取得される、といった事件が発生した。そうした状況を踏まえ、政府では6月、携帯電話契約の本人確認を含めた「国民を詐欺から守るための総合対策」を策定した。

 その方針では、対面での本人確認はICチップ情報を読み取ることになっている。今回の「マイナンバーカード対面確認アプリ」は、マイナンバーカードのみに対応するものだが、まさにそうした新方針に民間企業側が対応しやすいよう用意されたもので、無償で提供される。

 ちなみに対面での本人確認のICチップは、運転免許証や在留カードなどでも利用可能。在留カードの読取りアプリは、すでに法務省入管庁が提供しており、そちらを活用できる。運転免許証については、デジタル庁では今後、警察庁などと連携し、必要に応じて開発に取り組む。

 また、オンラインショップのような非対面での手続きでの本人確認は、マイナンバーカードに一本化される。

パスコード要らずでマイナンバーカードを本人確認に

 たとえば、携帯電話会社では、もともと回線契約にあたり、ユーザーから氏名・住所などの個人情報を得ている。

 これまでは券面を見るだけだったところ、偽造が困難なICチップの情報を読み取れるようにすることで、より厳格な本人確認を実現して、不正利用を防ぐというのがアプリ登場の背景にある。

 照合番号Bと呼ばれる情報を使うことで、ユーザーは店頭でマイナンバーカードのパスコードを入力することなく、スタッフに渡すだけで済むようになるのも、特徴のひとつだ。

 また、もし偽造されたマイナンバーカード風のカードを提示されたとしても、ICチップが読み取れなければ、不正契約を防げる。スマートフォンを活用することから、携帯電話ショップだけではなく、ショッピングモール内のポップアップストアなどでも本人確認しやすくなる。

 とはいえ、今回のアプリだけで犯罪につながる不正契約を完全に防げるとは言えないだろう。考えたくはないが、たとえば万が一、スタッフとして勤務する人物に悪意があり、不正な契約に至ってしまう事例が今後発生すれば、さらに厳格な審査になるなど、別の方策の検討になると見られる。

 ともあれ、8月には、現場での実証が利用規約、マニュアルなどが策定され、8月下旬にはiOS版とAndroid版が揃って登場する予定だ。デジタル庁では、携帯3社や銀行3行、古物商2社にヒアリングしてアプリの開発に取り組んだが、さらに幅広い業種での活用も見込む。携帯電話の回線契約をはじめ、より安心して各種サービスを利用できる環境整備につながることを期待したい。