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「スタートアップは課題発見力が高い」、NTTがグループ全体で東南アジアのスタートアップ協業を推進へ

 NTTは、NTTグループ共同でスタートアップ協業推進プログラム「NTT Startup Challenge」を開始した。海外のスタートアップとの新規事業を創造するための協業推進プログラムで、NTT東日本、NTT西日本、NTTドコモ・グローバル、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NTTドコモ・ベンチャーズ、NTTファイナンスが参画する。

 また、プログラムの一環として、東南アジアのスタートアップ企業を募るイベント「NTT Startup Challenge Final Day」をインドネシアのジャカルタで開催する。

具体的な取り組み

 たとえば、東南アジアのベンチャーキャピタルと共同でアドバイザリープログラムを開催したり、主要スタートアップイベントへのパートナー参画により知名度向上を図ったりする活動を行っているほか、2020年までNTTコミュニケーションズが実施していた同様のプログラム「NTT Com Startup Challenge」のネットワークを活用し、各社と個別にマッチングをする取り組みを実施している。

 「NTT Startup Challenge Final Day」では、東南アジアのスタートアップ企業を募り、ピッチコンテストやマッチングイベント、パネルディスカッションが開催される。現地の社会課題やビジネスモデルの理解、市場コミュニティへのアクセスなどを目的としているほか、参画企業各社の事業機会創出や人材育成などが期待されている。

 現時点でおよそ300社のスタートアップから応募があるといい、9月初旬の締め切りまでに約400~500社からの応募が見込まれている。コンテストでは、この中から10社がファイナリストとしてプレゼンテーションが行われ、入賞者が決定するかたちとなる。

 また、パートナーとして、シンガポールの独立系ベンチャーキャピタルであるKK Fundなどが参画し、コンテストの審査員などの形で参加する。

東南アジアに焦点を当てた理由

 今回東南アジアに焦点を当てた理由を「市場規模」や「スタートアップエコシステムの成熟」、「地政学、文化的親和性」の3点を挙げる。

 ASEAN諸国には、7万人の巨大市場を有しており、シンガポールやインドネシアでは、日本のユニコーン数と時価総額を超えるものになっているなど、日本よりもスタートアップエコシステムが成熟している。あわせて、日本と東南アジアの国々との間には特段の係争関係もなく地理的な近接性がある点も、東南アジアでのイベント開催の理由の1つだという。

 なお、NTTコミュニケーションズでは、2020年までにも東南アジアで同様のスタートアップ支援、発掘の取り組みを実施してきており、今回の取り組みはこれまでの取り組みを再びなぞるだけでなく、グループ共同での取り組みを行い拡大させていく格好となる。ジャカルタでは、これまでの中で一定の認知度を獲得でき、既存のネットワークが活用できるとし、11月のイベントはジャカルタで開催することにつながった。

 また、現在東南アジアでは、農水産業やヘルスケアなど未解決の多くの社会課題が存在しているが、「ベンチャーキャピタル冬の時代」と言われるほどスタートアップの資金調達環境は厳しいという。

 一方で、グループ各社が東南アジアへの事業展開意欲が大きいといい、これらの要素が重なったこの段階で、アセットを持つ同グループが、社会課題解決に貢献できると考え、この時期の開催とされた。

 コンテストの受賞者とは、協議の上スタートアップが求めるアセットの提供などで支援する。

大企業にはないスタートアップの能力

 社会課題の解決について、「課題を解決する能力」よりも「適切なタイミングで適切な課題を発見する“課題発見力”」が重要だと言われている。スタートアップは、その国の社会課題をいち早く発見して、それをビジネスモデルとしてマネタイズしており、同グループとスタートアップが組むことで、より幅広い課題に迅速にアクセスできるようになると指摘。

 同グループが全体でグローバル展開を進める足がかりの一つとして、海外のスタートアップの能力を活かしつつ、自社のアセットと組み合わせて、効果の最大化を図るものと見られる。