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「Google for Japan」開幕、日本がリードするグーグルの最新技術を紹介

 グーグル(Google)は19日、同社の最新機能や日本国内での取り組みを紹介する「Google for Japan」を実施した。同社から19日に発表された機能や未来に向けて研究開発中のものを含めた最新機能を中心に、日本におけるAI/生成AI「Gemini」に関する取り組みなどが披露された。

イベントのテーマ「AIの力で解き放とう、日本の可能性」

グーグルの日本法人代表 奥山真司氏

 グーグルの日本法人代表 奥山真司氏は、2年前に実施した同様のイベントに触れ「生成AIは2年前には想像できなかったことを可能にしている」とし、同社がAIの研究開発を10年以上行い、また投資をしてきたとし、AIの民主化に貢献したと説明。

 また、日本は2001年に同社が初の海外拠点を構えた場所であり、最も重要なマーケットの一つと指摘。日本のユーザーのAIへの期待度も非常に高いとし、労働人口の減少など日本の社会問題に対してAIは大きな力を発揮するとコメント。イベントのテーマを「AIの力で解き放とう、日本の可能性」とし、AIを活用した新機能やAI技術をより活用できるような取り組みを進めていく姿勢を示した。

日本がリードするAI機能

ナレッジ&インフォメーション部門のシニアヴァイスプレジデント プラバッカー・ラガバン氏

 グーグル ナレッジ&インフォメーション部門のシニアヴァイスプレジデント プラバッカー・ラガバン氏は、同社の使命を「世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできて役立つようにすること」とし、この使命はAIをすべての人に役立つものにすることで、さらに前進するとアピール。実際に同社では約10年前に「AIファースト企業」へと舵を切ったといい、AIの進歩を加速させて、業界全体に影響を与えてきたとアピールする。

 同社の生成AI「Gemini」は、すでに20億人以上のユーザーがいるグーグルのさまざまな製品で利用できるほか、150万人以上の開発者も利用している。同社では日本を非常に重要な市場であると位置づけ、「Gemini」の優れた機能を、いち早く日本に導入しているとし、AIを活用したグーグル製品を紹介する。

AIによる概要表示

 Google検索に、AIによる概要表示「AI overviews」が米国での一般提供が始まっている。検索用にカスタマイズされたGeminiモデルを活用し、検索結果の概要をAIが自動で生成し、ネットサーフィンの出発点として役立つ機能だという。

 ラガバン氏は、「ユーザーの検索結果に対する満足度を高め、より多様なウェブサイトへの訪問を促す効果がある」とコメントし、さらに改良を加えて、2024年末までに日本を含む10億人以上のユーザーに提供するとした。

Geminiアプリ

 Geminiアプリは、グーグルの最新AIモデルに直接アクセスできるアプリで「日本語は初期からサポートされている言語の一つ」と日本市場の重要性をアピールする。

 Geminiアプリでは、仕事上のアドバイスや翻訳、クリエイティブな会話、新しいトピックの検索などひらく用途で利用できるという。

 また、5月には日本語のベストパフォーマンスモデルと評価された最先端モデル「Gemini 1.5 Pro」が導入されている。世界で最も長い100万トークンのコンテキストウィンドウを備えており、最大で1500ページの情報から要約や詳細な回答、要素の比較などをしてもらえる。

 「日本のユーザーはチャットボットに高い品質を求めているため、日本市場でのGeminiの開発に大きな期待を寄せている」とラガバン氏はコメント。テキストだけでなく、画像や音声、動画も理解できるマルチモーダルなAIモデルとして、直感的に操作できるという。

「Project Astra」もとい「Life」は日本にも導入予定

 マルチモーダルAIモデルであるGeminiの特徴を活かした機能として、ユニバーサルAIエージェント「Project Astra」の開発を進めている。

 AIがユーザーの世界を理解し、会話形式でリアルタイムに反応するインターフェイスで、現在Geminiモデルを元にしたエージェントの開発を行っている。AIエージェントが周囲の状況を理解し、現在の場所などの質問や、画像にタイトルを付けたり、物体の変化を認識したり、ある物体からことわざを挙げてもらったりできるという。

現在の場所を予測
ある物体からことわざを挙げる
画像にタイトルを命名
物体の変化を認識

 「Project Astra」の機能は、まだ初期段階だとしながらも、機能の一部が今後Geminiの課金プラン「Gemini Advanced」の新しい体験機能「Life」として日本に導入される予定だという。

日本市場に特化した新機能

 これらのグローバルな機能に加え、2年前に日本の開発チームへの投資を強化したという。ラガバン氏は「日本市場向けに最高の体験を構築するため、地域の知見や文化への理解を活かして、日本独自の体験を開発している」と紹介。これらの知見は、グローバルでも共有され、製品の改善にも役立てられているという。

 日本市場での改善例として、Googleアプリでは、日本語での検索方法が改善され、より直感的な操作方法で検索できるようになった。質問を入力すると、次の単語やフレーズを予測し、候補が表示されてタップできる機能(iOS版アプリで対応、Android版アプリにも近日対応予定)が備えられている。

 また、AIが関連性の高い質問を予測し、表示する機能では、日本語検索ユーザーの60%以上で関連する質問を検索するようになったという。

 デスクトップ版Google検索では、「フィード形式の閲覧機能」を日本で初めて導入。ニュースや株価、天気などの情報を手軽に確認できるようになった。日本特有の事情として、複雑な通勤経路に対応した情報機能をGoogle検索やGoogleマップに導入されている。これらの機能の一部は、日本から他国の製品へ導入されているという。

ナウキャストとハッシュタグ検索

 日本主導で開発された新機能としてラガバン氏は、AIで予測した正確な気象情報「Nowcast(ナウキャスト)」機能と、「ハッシュタグ検索」機能を紹介する。

ナウキャスト機能

 ナウキャスト機能は、日本の気象会社「ウェザーニューズ」と連携し、AIモデル「Met Net」を活用しカスタムビルドの新しい天気予報モデルを開発し、活用されている機能。日本の天候を理解し、予測することで、予測速度と精度では、業界標準を上回る精度だとラガバン氏は話す。

 5分ごとにAIが予測し、今後数時間の降水量の予測を、Google検索などで確認できるようになる。ナウキャスト機能は、7月から順次日本で展開される。

ハッシュタグ検索機能

 ハッシュタグ検索機能は、ハッシュタグのキーワードを入力すると、SNSやYouTube、ブログ記事などから新しくトレンドになっているコンテンツを検索できる機能。検索結果はリアルタイムに変化するといい、SNSのハッシュタグ検索と同じ感覚で利用できる。

 ハッシュタグ検索は、日本で提供を開始している。

日本の国としてもAIビジネスを後押し

 一方、ビジネス面でのAI活用はどのように進めていくべきか。

 古賀篤内閣府副大臣は、「急速に発展するAIは国際社会にとっても重要な課題」とし、2023年に世界初のAIに関するルール「広島AIプロセス」を提唱し、現在52カ国が賛同するなど取り組みを進めている。また、国内では4月にAI事業者ガイドラインを発行し、国際的な動向を踏まえながら制度検討を進めているとしている。

古賀篤内閣府副大臣

 一方で、AIリスクだけでなく、イノベーションの促進も必要だとし、安心安全の確保と競争力の強化を一体的に推進している。日本のAIビジネスやAIを用いたDXはまだまだこれからで「AIのリテラシー向上、AI人材の育成、成功事例の拡大など、多くの課題がある」との考えを示し、引き続き内閣府でも取り組みを進めるとした。

グーグルの産学連携の取り組み

Google for Startups Japan アジア太平洋日本地区マーケティングエグゼクティブスポンサー バイスプレジデントの岩村水樹氏

 Google for Startups Japan アジア太平洋日本地区マーケティングエグゼクティブスポンサー バイスプレジデントの岩村水樹氏からは、東京大学松尾研究室と連携し、2027年までに全国47都道府県で生成AIモデルの実装とAI人材の育成を目指すことが発表された。

 日本では、AIを使った製品やサービスにメリットを感じたり、ワクワクする人が多い一方、日本の可能性を引き出すためには、製品やサービスを提供するだけでは不十分だとし、誰もがAIの恩恵を受けられるようにするためには、デジタルスキルを持つ人材の育成が不可欠だと指摘する。

 同社では、「すでに提供している独自のトレーニングプログラムをさらに充実させること」と「研究機関との連携をさらに発展させること」をAI人材の不足という課題解決にむけて取り組む2本柱に据え、さまざまな分野でのAI社会実装を支援していく。

「Google AI Essentials」の日本語版コースを提供開始

 取り組みの一環として、仕事でAIを活用するユーザーに向けた独自の資格認定プログラム「Google AI Essentials」の日本語版コースを提供開始する。

 約10時間で学べるコースで、本来は約50ドル程度必要なプログラムだが、先着1万人に日本リスキリングコンソーシアムを通じて無料で提供するという。

教育現場におけるGemini活用を推進する「Gemini Academy」

 「Gemini Academy」は、教育現場でGeminiの活用を支援するプログラムで、日本では3月から試験提供されている。

 パイロット版に参加したユーザーからは「基本的な操作方法やAIにできることが理解できた」「業務時間が大幅に削減され、他の業務に時間を充てられるようになった」「Google Workspaceとの連携が便利」「AIの回答が体系的で、学びが深まる期待が持てる」「研修を受けてAIへのハードルが下がった」といった声が聞かれるという。

 2024年後半には、大学生向けの「Gemini Academy」プログラムを公開するとしており、日本の教育現場におけるAI活用を包括的にサポートしていくとしている。

 また、Googleのスタートアップ支援プログラム「Google for Startups」では、AIを活用しイノベーションを推進、支援する「AI Academy」を今秋に開始する。Google社員によるメンターシップ、Google Cloudの無料利用枠、プロダクトサポートなどが提供されるといい、大学教育から日本のAI人材育成の支援をしていく格好だ。

東京大学との取り組み

 AIの取り組みについては、政府の後押しがあるものの「実際にはまだ一部の企業や組織に限られているのが現状」と指摘。今回の取り組みでは、地域特有の問題の解消に向けて、松尾研究室の卒業生とグーグル社員が協力し、生成AIプロダクトの構築と、そのプロダクトを活用できる人材育成を無償で実施する。

 広島県と大阪府から開始し、今後全国の自治体へ広げて行くという。

Google製品の未来を展示

 イベント会場では、19日に発表されたばかりの新機能や、Geminiをビジネスに活用する取り組みなどが展示されていた。

Geminiアプリ
Geminiアプリで画像から物語を作成する
フルワイヤレスイヤホンのペアリング方法を、イヤホンの画像から検索できる
Project Guideline
スマートフォンのカメラで地面のラインを読み込み、ユーザーがラインの上を進めるように音で誘導する機能。ラインから外れるとラインのある方向の誘導音が大きくなり、カメラからラインが見えなくなると止まるように警告する