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通信以外の付加価値をeSIMに、NTT Comが「アプレット領域分割技術」開発

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は、eSIM内の通信プロファイル領域とアプレット領域を分けて管理できる「アプレット領域分割技術」を発表した。これを利用したサービスとして、トレンドマイクロと共同でセキュリティ機能を実装したeSIMを開発。22年度中のサービス化を目指している。

SIMに価格以外の価値を提供

 従来のSIMでは、契約情報が格納される通信プロファイル領域とアプレット領域が分離されずに存在する。これにより、通信事業者以外には閉ざされるかたちとなり、パートナー企業が機能開発を行う場合、通信事業者と連携する必要があるため開発に時間がかかるなどの課題があった。

 今回開発された、NTT Comの独自技術ではこれら2つの領域を分けて管理できるため、パートナー企業は通信事業者から渡された鍵を使うことで、通信以外の機能を実装する際、これまでよりもスムーズに開発できるようになる。

 NTTコミュニケーションズ 5G IoTタスクフォース 担当部長の内山貴允氏は「(従来の仕組みでは)せっかくのアプレット領域が活かされない。IoT時代ではアプレット領域が強力な武器になる」と開発の経緯を語る。

 通信機能を備えたSIMであれば、価格のみが選ばれる基準となるが、それ以外の付加価値を提供することで、価格以外の魅力を提供できるようになるとしている。また、今回はあくまでeSIM用として展開されるが、技術上は通常のSIMカードでも利用可能という。

 NTT Comでは、「eSIMアプレットSDK」としてパートナー企業向けに開発キットも提供する。

増大するセキュリティリスクに対応

 「Re-connect X」として、コンセプトを描くNTT ComではさまざまなIoTソリューションを展開している。

 NTTコミュニケーションズ 5G・IoTタスクフォース タスクフォース長の吉宮秀幸氏は今回の施策を、同社が提供するIoTソリューションを柔軟な組み合わせで利用できる「コンポーザブルなプラットフォーム」のひとつとして位置づけ、「eSIMを活用した新たな技術を導入し、さらなる高機能で利便性が高いIoTソリューションを提供する」と語った。

 今回、その取り組みの一環としてトレンドマイクロとの協業でセキュリティ機能を搭載したeSIMが発表された。SIMを通じてネットワーク上でセキュリティ機能の後付けを実現し、機器のスペックによらない一元的なセキュリティ対策を実現できる。2月からトライアルを開始し、2022年度中の商用サービス化を目指していくという。

 NTT Com内山氏は今後、IoT機器の利用がより増えることで、セキュリティリスクも合わせて増大すると分析。

 現にサイバー攻撃の約半数はIoT機器を狙ったものだという。一方で多くの企業がIoTのセキュリティ対策が重要視されながらも、それに対する人材不足やIoT機器ならではのセキュリティ課題などがあることから、人手不要の対策が求められるだろうという。

 同社では、さまざまなIoTデバイスが混在することで管理方法が複雑化、仕様上セキュリティ対策ができない、解析されるおそれがあるといったことをIoTセキュリティの課題として挙げている。

IoTセキュリティ課題を解決

 今回発表されたeSIM内蔵のセキュリティ機能は、機器そのもののスペックは関係なく、外部からの解析・改ざんされる可能性も低いとしており、従来の課題を解決している。

 eSIMに搭載のセキュリティ機能はトレンドマイクロの「Trend Micro Mobile Network Security(TMMNS)」のコンポーネントである「TMMNS Endpoint Protection」を組み込んでいるほか、「TMMNS Network Protection」と連携し、それぞれの機能を利用できる。

 SIMカードの抜き取りやほかのデバイスでの使用といった不正を検出すると接続を解除したり、意図しないポート開放の通知、不正通信検出・ブロック、マルウェア感染検知・通信制限といった機能が利用できる。

 4Gと5G、ローカル5Gに対応する。運用者からは、IoT機器がどのような状況かを視覚的に確認可能。なんらかの異常を検知すると、赤く表示されるという。従来はIPレイヤーの状況確認が主だったが、今回はSIMカード・デバイスの固有IDや基地局の情報も表示できる。

 トレンドマイクロ コネクティッドビジネス推進本部 本部長代理 兼 ネットワークセキュリティ推進部 部長の津金英行氏は「脆弱性が懸念されながら長期間放置されるIoT機器のセキュリティ課題を解決、運用者の負荷軽減につながる」と語る。

トライアル・共創パートナーを募集

 NTT Comでは今後、トレンドマイクロと共同で2022年度までに今回発表されたセキュリティ機能搭載のeSIMをサービス化するとともに、さまざまな付加価値を提供するeSIMをパートナー企業と共創していくとしている。

 同社では、セキュリティ機能を搭載したeSIMのトライアル参加企業と合わせて、eSIMの共創パートナーとなる企業の募集を本日14日から開始した。