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ソフトバンクがPayPayドームのホークス開幕戦で「Bluetooth LE」を活用したARナビ/同時演出の実証実験、欠点を“補う”技術実証

 ソフトバンクは、4月3日と4日に福岡PayPayドームで開催された福岡ソフトバンクホークスのホーム開幕戦で、複数のセンサーを活用したAR(拡張現実)ナビゲーションと、複数のネットワークを活用したリアルタイムAR演出の実証実験を行った。

 これまでのARナビゲージョンの不得意な点や、同時に大勢のユーザーが同時にコンテンツを体験する際のネットワーク問題などの解消を図った取り組みで、開発が進めばより精度の高いARナビゲーションや、スタジアム内の多くのユーザーが一斉に応援コンテンツを楽しむことができるようになるという。

マルチセンサーを活用したARナビゲーション

実証の内容

 今回の実証では、エントランスからドームのVIPルームに相当する客室までの誘導に、ARグラスを活用したナビゲーションシステムで実証を実施。

 ユーザーは、エントランスから自身の客室まで、ARグラスを通じて案内を受けることができる。道中には、ホークスのキャラクター「ハリーホーク」が登場するARコンテンツが楽しめる。

VPSとBLEを併用したシステム

 ARナビゲーションシステムでは、通常のカーナビなどと同様にリアルタイムの「位置情報」が活用されている。屋外であれば、GPSを利用できるが、屋内ではGPSによる衛星測位が難しい。

 そこで、周りの環境をカメラで読み取り、特徴点をもとに現在位置と方向を検知するVPS(Visual Positioning Service)技術の開発が進められている。一方で、今回のような客室までの通路のように、似たような景色が続く場所では、特徴となるものを検知しづらく、現在位置の測位が難しいケースもあるという。

 今回の実証では、この欠点を補うべく、「Bluetooth Low Energy」(BLE)が活用されている。BLEでは、ビーコンから位置情報を特定できるデータを受信し、ビーコンとの距離などから、位置情報を特定できる。

 BLE単独での位置情報取得では、ビーコンの数で精度にばらつきがあったり、ユーザーが向いている方向がわからなかったりするが、VPSと組み合わせることで、お互いの長所を活かした位置測定ができるようになるという。

施設のポリシーなどに沿ったARナビ

 今回実証を行った場所では、施設から景観を損なわない取り組みが求められていたといい、VPSでの位置測定の助けになるようなポスターや特徴的なオブジェクトなどは配置せずに実証が実施された。

 BLEのビーコンは設置されているものの、目立たない場所に設置でき、建物の意匠を壊さずにARナビゲーションを導入できる。

リアルタイムAR演出

5回裏終了時に一斉にAR演出

 実証では、ARグラスをつけて観戦しているユーザーが、5回裏終了後のタイミングで同時にARコンテンツが再生され、リアルタイムで演出を楽しめる。

リアルタイムゆえの課題

 ARグラスに向けて一斉にAR演出指示を出す際、その一瞬に大量のユーザーにデータを送受信するため、ネットワークが飽和してしまう。そうなると、一部のユーザーに演出指示が届かない場合があり、ユーザーの中で演出が発動するユーザーと発動しないユーザーが存在してしまう。

 このネットワーク飽和の問題を解消するため、この実証でもBLEが活用され、4G/5GネットワークとBLEの2つを活用してネットワーク負荷の分散を図られている。

 ユーザーのスマートフォンに、あらかじめ演出データをダウンロードしておき、演出のタイミングでは、演出指示のデータを送信することで、ネットワークの負荷を抑えながら、リアルタイムで演出できるようにする。

 BLEでは、ビーコンから50m程度までしか送受信できないため、送受信できる範囲が限られる。今回の実証は、4G/5Gネットワークを完全に代替するのではなく、負荷の分散が図られたものとなっている。

スマートスタジアムに向けた取り組み

 PayPayドームでは、これまでもスマートスタジアムに向けて、自由視点映像などさまざまな取り組みが進められている。

 ARグラスを活用した取り組みは、ほかにも「手書き応援メッセージ」や「選手応援ボール」がある。手のジェスチャーをカメラが読み取り体験できる演出で、手書き応援メッセージでは、ユーザーが空に書いた文字などを元にした演出、選手応援ボールでは応援したい選手をジェスチャーで選択し演出が楽しめる。