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グーグルの最新AI「Gemini」がスマホアプリとして登場――BardはGeminiに改名、最高モデル「Gemini Ultra」も有料サービスで登場

Androidは専用アプリ、iPhoneは「Google」アプリで

 米グーグル(Google)は、同社の最新AIモデル「Gemini(ジェミニ)」を利用できるAndroid向けアプリを発表した。iPhone(iOS)では専用アプリはないが「Google」アプリから利用できる。

 アプリでの利用は、8日から英語版が登場する。そして、日本語版と韓国語版が、来週から順次利用できるようになる。

 「Gemini」アプリ(iOSではGoogleアプリ内)は、AIモデルとして「Gemini Pro」を用い、無料で利用できる。その一方で、より高性能な生成AIモデルである「Gemini Ultra 1.0」を利用できるサブスクリプションサービス「Gemini Advanced」も用意される。

Bardは「Gemini」に

 なお、これまでグーグルの生成AIによるチャットサービスは「Bard」という名称で提供されてきたが、今回のアプリ提供を機に「Gemini」へ変更される。Geminiという名前は、AIモデルの名前であると同時に、ユーザーとやり取りするフロントエンドサービスの名称にもなる。ブラウザから利用できるようになっていた「Bard」だが、そのURLは「gemini.google.com」に変更される。

Googleアシスタントの代わりに利用することも

 さらにAndroid版の「Gemini」をインストールしたあと、ユーザーが選択すれば(オプトインすれば)、これまでのGoogleアシスタントのようにGeminiを利用できるようになる。アプリをタップするだけではなく、Googleアシスタントを呼び出すボタンの長押しで「Gemini」を呼び出せる。

 Android版の動作環境は、4GB以上のメモリー(RAM)を搭載するデバイス。

 なお、スマートディスプレイの「Nest Hub」での利用については、今後、タイマー設定、通話、スマートホームデバイスの制御など、Googleアシスタントの多くの音声機能を、Geminiアプリを通じて利用できるようになるほか、さらに多くの機能がサポートされる予定。

Geminiでできること

 Gemini(旧Bard)では、これまで通り、チャット形式でユーザーが投げかけた疑問に答えたり、GoogleマップやYouTubeなどのサービスと連携して検索結果を示してくれたりする。

「デートの計画づくりを助けて。サンフランシスコで今週金曜の夜8時に空いてる寿司屋を見つけて」と問うと……
Googleマップで店を示してくれる

 プロンプトとして英語で作ってほしい画像を命令すると、画像を生成することもできる。

 繰り返しになるが、これまでブラウザで利用していたところ、アプリから利用できるというのが大きな変化だ。

Gemini Advanced、Google Oneの新プランとして

 Geminiシリーズで最上位の能力を持つ「Gemini Ultra 1.0」を利用できるサービスとして提供されるのが、「Gemini Advanced」だ。

 利用するためには、グーグルのサブスクリプション「Google One」の新プラン「Google One AI Premium Plan」(月額2900円、米国では月額19.99ドル)を契約する必要がある。なお、新プランでは2カ月の無料トライアルも用意され、2TBのストレージ、最大5人での共有など既存の「Google One プレミアムプラン」(月額1300円)と同じ特典を利用できる。

Google Oneの違い(画像内の価格は米ドル表記)

 Gemini Advancedでは、コーディング、論理的推論、ニュアンスを含む指示の理解など処理できるタスクの能力が大幅に向上するという。昨年12月に「Gemini」が発表されて以降、Gemini Ultraは安全性などが検証されてきたが、今回、初めて一般ユーザーでも「Gemini Advanced」というかたちで利用できるようになる。

 たとえば、個人的な家庭教師として使うと、学習にあわせた段階的な説明、クイズ・議論を作成してくれる、といった使い方ができる。

 また、新しいコンテンツの生成、トレンド分析、オーディエンス拡大に向けた改善などのブレインストーミングなどにも活用できる。

 日本を含む150以上の国と地域で、まず英語版として利用できる。ほかの言語への対応は今後、順次拡大していく。

Duet AI with Google Workspaceは「Gemini for Workspace」に

 100万人以上に利用されているというGoogle Workspaceの「Duet AI for Workspace」は、「Gemini for Workspace」という名称に切り替わり、Google One AI Premium Planのユーザーは、Gmail、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、MeetでGeminiを活用できるようになる予定。

 今後数週間で、「Duet AI in Google Cloud」は「Gemini in Google Cloud」になり、企業に対して生産性の向上、コード作成の高速化、サイバー攻撃からの保護などを提供する。

「これは最初の一歩に過ぎない」

 グーグルでは今回の改定を「The Gemini era(ジェミニの時代)」と題してアピール。担当者は「私たちがいかに、大胆にイノベーションへ取り組み、AIを進化させ、展開しているか。それを象徴するエキサイティングなステップ」と説明。また、グーグルにとって「ジェミニの時代」で次のステップに踏み出したこと、最も高性能なAIモデルを製品として投入するという場面であり、「これは最初の一歩で、始まりにすぎない。会話型のマルチモーダルで役立つ真のAIアシスタント」と位置づける。

なぜiPhoneとAndroidて提供の形が異なるのか

 Androidでは専用アプリ、iPhoneでは「Googleアプリの機能のひとつ」として登場することになったが、その違いについては、ユーザーがより利用しやすい機会を創出するために生まれたという。

 Androidの場合、Googleアシスタントを呼び出す仕様が用意されており、アプリをタップせずとも電源ボタンの長押しなどで今後「Gemini」をすぐ利用できるようになる。iPhoneではそうした仕組みがないため、多くのユーザーがいるGoogleアプリから利用するかたちになった。

 担当者は「Geminiは単なる最先端テクノロジーではなく、エコシステムのシフト。その能力の一部は認識力。かつてよりもはるかにAIの能力は向上しており、より多くの意図を理解し、処理でき、難しい議論のなかで言葉を見つける手助けをしたり、視覚的な手がかりを推論したりできるようになった」と、生成AIが急激な成長を遂げているとする。

 そして、今回のアプリ化によって、「多くの人々が初めて生成AIを使う機会になると期待している。これまでに見たことがないようなレベルの有用性と新しいコンピューティングのかたちを生み出して、私たちのアイデアに命を吹き込み、想像力を高めてくれる。世界中のより多くの人たちが利用することに、この上ない喜びを感じている」と興奮ぎみに語っていた。