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“将来のAI人材発掘へ”ソフトバンクが生成AIを学べる教育プログラムを提供、「ChatGPT活用法」で地域貢献

 ソフトバンクは、中学校や高校向けに提供している教育プログラム「AIチャレンジ」について、生成AIに関する内容を学べる「生成AI活用入門教材」を新たに開発した。9月下旬からの提供に先立ち、教材の実証実験を8月に、茨城県立竜ヶ崎第一高等学校(茨城県龍ケ崎市)で実施した。

 今回の「生成AI活用入門教材」では、生成AIとは何か? から生成AIの仕組み、実際の生成AI活用法までがまとめられている。一般の教師でも講義ができるように、教材ではスライドごとにキャプションがあるほか、どのように講義するかがわかる動画が用意されている。

 実証実験では、ソフトバンク CSR本部 関東・甲信越地域CSR部参与の五十嵐 祐二氏が登壇し、高校1年生向けに約2時間講義を行った。

教壇に立っているのは、ソフトバンク CSR本部 関東・甲信越地域CSR部参与の五十嵐 祐二氏

 教材の製作を担当したソフトバンク CSR本部 CSR企画統括部 CSR推進部の宮北 幸典氏によると、中高生向けに作成した教材で、同社の取り組みである「AIチャレンジ」の中から、生成AIに関する内容をより深めたプログラムになっているという。

 Web検索とChatGPTの違いについて、検索では、自分にあうものを探しに行くものであるが、生成AIでは、美容室のように1人ひとりが欲しい形で提供されると違いを説明。

 続いて、生成AIを利用したチャットサービスのひとつである「ChatGPT」を取り上げた。ChatGPTについて五十嵐氏は「超大規模なデータで超大規模な演算をして事前学習した大規模言語モデルを利用」と説明。

 また、混合しがちな「ChatGPT」と「GPT」の違いについて説明する場面もあり、単純に使い方を教えるだけでない教材に仕上がっている。

生徒に配布されたワークシート

GPTの得手不得手、GPTは「語調を学習」

授業中の風景

 教材では、GPTの成り立ちについても学習できる。GPTがどういったものかを知ることで、GPTを活用すべきシーンを探ることができたり、欠点や不得意なことを別の方法で補うことができたりする。

 ChatGPTでは、質問に関する回答を蓄積し分析することで、同様の質問があった際に回答する。普遍的な事実などでは有効に働く一方で、常に情報の更新が必要な内容や、計算式を解かせるといった質問では、不正確な回答や回答できない場合がある。

 五十嵐氏は、「適切な質問や指示を与えることで、自分がほしい情報を引き寄せられる」としたうえで、ChatGPTでは「文章を作ったり」するのが得意な一方で、最新の情報や内部的な情報、正確性が問われる内容、数学の計算などは苦手であるとした。

 計算式を解かせる質問では、ChatGPTは式を計算をするのではなく、確率で答えを出しているので、必ずしも正確な情報を出そうとはしていないと指摘した。たとえば、「1+1」の答えが3であるという情報がGPTの学習データで多ければ、実際に質問したときに「1+1=3」と回答してしまう可能性がある。

授業では、実際に生徒がChatGPTを活用するセクションが設けられた

 そこで五十嵐氏は、もっともらしい嘘を見抜くファクトチェックをすることが重要とコメント。

 講義内では、実際にChatGPTに「龍ケ崎市について」「自転車で2人乗りはできるか」といった質問を投げかけた。前者の質問に対しては「龍ケ崎市は千葉県の都市」と回答、後者は「法律の制限がある場合があるが基本的には問題ない」と、事実と異なる内容や、要領を得ない回答が帰ってきた。

PepperにChatGPTを搭載するイメージ。Pepperの声で回答が得られる(写真の回答は、一部事実と異なる内容がある)

 ChatGPTは、学習データの中で可能性が高いものを、もっともらしい文章で回答することから、回答された情報の鮮度や正しいものか、あらためてWeb検索するなどでファクトチェックするのがよいと解説。

 また、個人情報を入力してしまうと、その情報が学習データとして活用されてしまう可能性があるため、質問文章に個人情報を入力しないよう促した。

将来のAI人材への布石に

五十嵐氏

 教材作成に携わった宮北氏は、今回の教材の構成について「冒頭でAIの歴史や基本をおさらいすることで、ChatGPTの名前の意味を理解できたり、より生成AIへの理解が深まるようにしている」とコメント。

 また、いわゆる“AI人材発掘”にも貢献しているのでは? との問いかけには「新しいAI社会で活躍できる人材になってほしいと思ったときに、新しい技術をどういうインターフェイスで搭載できるかという発想に持って行ってほしいと思い、教材では、チャット型以外にもロボットを経由して質問と回答を行う方法などを取り入れた。より活用の幅やいろいろな年齢層の方に使ってもらえる技術だと思うので、ぜひ繋げていってほしい」と、将来のクリエイターへの期待がうかがえた。

授業の後半には、生徒から募集した生成AIの活用アイデアを、ChatGPTが評価するセクションが実施された

 今回の授業以外にも実際に先生として登壇している五十嵐氏は、実際に授業を受ける学生について「生徒からの反応はすごくいい」と好感触だという。授業後のアンケートでも、さまざまな意見や気づきをもらえることも多いと良い、「生徒たちは、AIとともに社会に出て行かないといけないという自覚があるのではないか。そういったAI社会に向かって次のステップへ踏み出せるようになるのが今回の取り組みの狙い」とコメントした。