ニュース

KDDIが24年度にも2.3GHz帯サービスイン、放送との干渉防ぐしかけ

 KDDIは、5G通信の新たな周波数帯である2.3GHz帯(n40)を活用したサービスを2024年度にも開始する。通信の安定化や速度の向上などのメリットが期待される。

世界で使われる2.3GHz帯

 2.3GHz帯は、ミッドバンドとも言われる周波数帯で40MHz幅の広い帯域を備えながらも広いエリアをカバーできるなど、携帯電話事業者にとって使いやすい特性を兼ね備える。携帯電話向けとしては、国外で幅広く使用されておりKDDIの示す資料によれば39の国と地域で69の事業者に割り当てられている。

 日本では2022年に開設計画の申請を受け付け、KDDI(沖縄セルラー)からのみ申請があり同年に総務省が認定した。これまでに5G基地局がなかった場所でも、5Gを利用できるようになることから、通信速度向上などのメリットが期待される。

 一方で、日本では同周波数帯を放送事業者が利用していることから干渉を回避するための技術や仕組みを開発した。

ダイナミック周波数共用で干渉を回避

 2.3GHz帯により収容数が向上するため、ユーザーにとっては通信の安定や速度向上といったメリットが見込める。その一方で日本における2.3GHz帯は放送事業者が中継素材の伝送に活用している周波数帯でもある。このため、携帯電話事業者と放送事業者が同時に利用すると干渉が発生するという課題があった。

 このため、KDDI総合研究所は同じ場所でも同じ周波数を共用できる「ダイナミック周波数共用」(DSS)を、KDDIでは基地局を自動で制御する仕組みを開発した。放送事業者が素材伝送を行う場所をデータベースに入力することで、基地局の干渉量を計算して携帯電話用の電波を停波する。放送事業者の入力から45分以内の停波が可能といい、緊急の中継などにも対応できるという。

 放送事業者と共同で停波の範囲や計算方法、停波手順、緊急時の連絡手段など運用ルールを作成し、ダイナミック周波数共用を実現した。この試みは日本国内では初となる。

 KDDI 技術統括本部 ノード技術本部 モバイルアクセス技術部長の太田龍治氏によれば、利用頻度や場所は放送事業者の都合により変わるため一概には言えない。停波した場合でも4Gの周波数でカバーできることから、そのエリアで携帯電話がまったく使えないということはないとする。ただし5Gでの通信ができなくなるため、通信速度は遅くなることが考えられる。

 通信のキャパシティとしては1.4倍ほどの増量が見込めるという。当初は地方での整備が優先され、その後に都市部の必要な場所で整備を進める。

24年度にも一般ユーザーが利用可能に

 2.3GHz帯は、KDDIのみが開設計画を申請しており、2022年5月の決算会見でKDDI 髙橋誠社長が「正直、うちもビックリした」と驚きをあらわにしていた。太田氏はこれまでの実感として「2.3GHz帯は伝播特性も良く40MHz帯の帯域幅も使えるのでメリットしかないと考えている」と語った。

 ダイナミック周波数共用は日本では初の取り組み。同氏は「人手を介さずに電波発射を変えられるチャレンジングな技術開発も行ってきた。運用には耐えられると確信している」と自信をのぞかせた。

 携帯電話の通信量は年々増加しており、5Gを支える周波数が重要という。2.3GHz帯でより快適な通信を実現するとした。2.3GHz帯の運用は7月3日からスタートしており、技術的な検証を実施している。

 一般のユーザーが使えるようになるのは2024年度の予定。同社では2026年度末までに全国で8300局以上の基地局を展開する予定としている。