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ソフトバンクG、22年度は9700億円の損失――AIで「攻めと守り」の両立目指す

 ソフトバンクグループは、2023年3月期決算を発表した。売上高は6兆5704億3900万円。2022年度の利益は9701億4400万円のマイナス益となった。

 2022年度を「守りの年」として位置づけていたソフトバンクグループ。ソフトバンクグループ 取締役専務執行役員 CFOの後藤芳光氏は2022年について、ロシア・ウクライナ戦争や米中問題などリスクを挙げつつも「想定の範囲内のこと」と評価。一方で、金融不安については想定外のリスクだったと語る。

 一方で、昨今話題になっているAI技術の進歩を示して攻めの姿勢も見せていくと、同社の今後の姿を語った。

9700億円の赤字に

 2022年度のソフトバンクグループの連結売上高は、6兆5704億円。投資損益はマイナス8351億円、純利益はマイナス9701億円と赤字決算だった。

 ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)は5兆3000億円の損失を記録。2021年度の3兆6000億円のマイナスよりもさらに悪化した。累計投資損益はマイナス85億ドル(約1兆1400億円)。後藤氏は、残り運用期間でどう回復するかが課題と認識を示す。四半期ベースでは、回復傾向にあるとも捉えられ「水面ギリギリまで回復してきた」(後藤氏)と現況を語った。

 SVF1とSVF2を比較すると、SVF1については投資額に対しての成果がプラスの状況。対してSVF2は「まだ今は厳しい状況」と後藤氏。3年前からスタートし、500億ドルほどの投資が行われているが、現時点での成果は320億ドルほどにとどまっている。SVF1の未公開投資先には、Armも含まれており期待感を示した。

 2022年度の全体のポートフォリオとしては、価値が増加した企業は前年度比で半減。原因は企業の業績悪化や市場要因、金利動向などがあるという。厳しい環境化を踏まえて、投資額としては2021年度の1/10にまでおさえた。

 一方で、同社全体を見渡すとアリババ株取引で4兆6000億円の利益を計上しており、連結ベースでは、前年対比で大幅な改善と評価しつつも「SVFを含めた投資戦略のあり方を振り返る必要がある。これからの戦略について攻めのあり方を考えなければいけない」とも語った。

 純利益としては改善に向かっているという後藤氏。厳しい状況だった2021年度の第1四半期と第4四半期と比較して、アリババ関連での利益を除いてもトレンドとしては、良い方向に向かっていると語る。

NAVは減少も短期では改善傾向

 同社が経営上の重要指標とみなしているNAV(時価純資産)は14兆1000億円と22年3月時点から4兆円強の減少。一方でLTV(純負債)は約20%から11%にまで減少し、短期的な支払い能力を示す手元流動性は5兆1000億円となった。

 前年比でNAVが減少した理由としては、株価影響が大きく響いた。ポートフォリオ評価が下がったことによる株価の低迷が影響したという。一方で、22年度第4四半期単体で見た場合、NAVは2022年12月末時点の13兆9000億円から増加しており、後藤氏は「急激に改善している」とした。

 Armについては、上場を控えたなかでその現況のみが語られた。

AIの発展で攻めと守りの姿勢目指す

 こうした現況を踏まえたうえで、後藤氏は今後の同社について「ディフェンス(Defence)一辺倒だった1年から最初のアルファベット2文字を『OF』(Offense)に変えられるか」と攻めに転じる姿勢を示す。

 後藤氏は、市場動向や金利動向などを示したうえで、現在の世界の不安定さをロシア・ウクライナ戦争、中国問題など地政学リスクにあり「解決方法も見えない以上、強く憂慮すべき」と語った。

 その一方でSVFが集中して投資するAIなど、技術の進歩がめざましい点についても触れる。同社がかつてかかげた「30年ビジョン」のなかで示す時代が近づいてきたとしてAI時代が本格到来したという後藤氏。AIには生産性向上や社会課題解決など、無限の可能性があるとも語り「使っていくことが大事」として生成AIをソフトバンクグループとして活用していくと宣言。

 「すべての投資が成功するわけではない。しかし投資機会を逃すわけにはいかない」と後藤氏。AIなどの技術革新への理解を深め、マーケットのボラティリティに対しての耐久力をもちつつも、技術進化への投資機会を逃さないことで「攻めと守りを両立する」姿勢を築いていく。