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ソフトバンクG、4776億円赤字もSVFは6四半期ぶりのプラス益

 ソフトバンクグループは、2024年3月期第1四半期決算を発表した。売上高は1兆5575億円、純利益はマイナス4776億円の赤字決算でのスタートとなった。

ソフトバンクグループ 後藤氏

赤字決算も回復傾向か

 24年3月期第1四半期の売上高は1兆5575億円。純利益は4776億円のマイナスだった。

 為替差損が大きく響いたかたち。ただし、前年同期の2023年3月期第1四半期は3兆1627億円の赤字を計上しており、今期は未だ赤字であるものの2兆6851億円の回復を示している。投資損益はマイナス6990億円。前年同期の2兆8344億円マイナスから2兆1355億円増で、こちらも徐々に回復の兆しを見せた。

 ソフトバンクグループ 取締役専務執行役員 CFOの後藤芳光氏は、マイナス益であるとしつつも「本当に大きな回復」とコメントした。

SVFのポートフォリオは改善傾向

 投資損益に占めるSoftBank Vision Fund(SVF)の投資損益(連結消去)は、マイナス130億円。前年同期の2兆9191億円と比較して改善傾向にある。後藤氏は、投資損益の6990億円のうち、5534億円は資金化が完了したアリババ株の下落であると説明。株はまだ持っているものの、デリバティブ関連利益7699億円が見込めることから、連結での投資損益では事実上のプラス益転換を果たしていると強調した。

 NAV(時価純資産)は15兆5000億円。LTV(純負債/保有株式価値)は8%、手元流動性は5兆8000億円といずれも3月末時点から改善を見せた。後藤氏は、LTVが低いことについて「投資会社として反転攻勢の姿勢を打ち出す」として今後積極的な投資を行う構えを見せる。

 2024年3月期第1四半期におけるSVF1の投資損益は9億ドル、SVF2は3億ドルのマイナス。SVF2は、環境悪化などの影響が大きく、投資期間もまだ短いこともあり、投資額が成果を上回っている。後藤氏は追加で新規投資も行い、パフォーマンスを改善したいとした。SVF1には現在、上場に向けて準備が進むArmも含まれることからさらに成果は増えることが見込まれる。6月末時点での累計投資成果はSVF1が1020億ドル、SVF2が332億ドル。SVF全体では10億ドルのプラス益で、6四半期ぶりにプラスに転じた。

 SVF1とSVF2、中南米諸国に特化したLatAmファンドを合計したポートフォリオを3月末時点と6月末時点を比較すると、価値が下がった会社は微減、価値が上がった会社は微増した。後藤氏は「ひとつの潮目の変化なのかもしれない」と期待感を示す。

引き続きAI関連投資へ注力

 今後の活動の一端として、以前から実施している投資先企業の日本進出のサポートなどを続けていく方針が示された。今後の投資先としては、引き続きAIに注力。物流領域でのAI利用に注目する姿勢が示された。

 具体的な投資先名としては自動倉庫のプラットフォームを手掛けるSymbotic、在庫補充やフルフィルメント自動化ソリューションのBerkshire Grey、コンビニの飲料補充ロボットを開発する日本企業のTELEXISTENCEなどが挙げられた。

 上場を控えたArmについては、多くのコメントは避けられたが、遠くないうちに情報を伝えられるとも語られた。

ソフトバンクは法人税を払っていない?

 最後に後藤氏は、巷でよく囁かれる「ソフトバンクは税金を払っていない説」に反論。「相当、税金払っている会社なんです」と説明した。

 同氏が示したスライドによると、ソフトバンクグループ(連結ベース)で支払った法人所得税はこの5年間で2兆6124億円。後藤氏は「グループ(持株会社)が払っていないだろうと現実を見ないでお話される方がいる」と指摘。

 2022年度の例では、国内で4697億円の法人所得税が発生。うち2555億円はソフトバンク(KK)やヤフーなどの事業会社から支払われた。ソフトバンクグループは持株会社であり、その子会社・関連会社などは利益に応じた法人所得税を収めている。

 ソフトバンクグループが受け取る配当金は、二重課税となることから原則として非課税になるという考え方。資料によれば、2022年度は国内で2142億円相当をソフトバンクグループや国内の中間持株会社が支払ったことになるとされた。

 さらに示された資料では、2018年度-2022年度の法人所得税支払額でソフトバンクグループはトヨタ自動車、NTTに次ぐ3位になるとされた。