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信号機に5G基地局、JTOWERやNECなどが交通インフラDXのコンソーシアム設立

 JTOWER、住友電気工業、日本信号、NECの4社は信号機の高度化など交通インフラのDXを進める産学官連携の「交通インフラDX推進コンソーシアム」を設立した。今後、信号機への5G基地局設置、自動運転などの社会実装を目指す。

前列左から梅田礼三幹事、植原啓介副会長、村井純特別顧問、大口敬会長、早川晶幹事会議長、加藤一郎幹事。後列左から長谷川隆普及促進委員長、髙石秀明幹事、春田慎治幹事、石丸弘之技術検討委員長

次世代の交通インフラを確立へ

 同コンソーシアムは、JTOWER、住友電気工業、日本信号、NECの4社が中心となって立ち上げたもの。参加者にはほかにもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルと携帯大手4社に加えて、日本自動車工業会、パナソニックコネクト、東京大学、慶應義塾大学など全29団体がある。

 会長の東京大学 大口敬氏は「安心安全な交通インフラ、その効率的な活用、災害や気候変動などに強いまちづくり、豊かに暮らせる持続可能な交通社会の実現を目指す」とコメント。それらを実現するためには「柱の高度化」「交通管制・信号情報の配信」「データ利活用ニーズへの対応」が必要と説明する。

 信号機を活用したDX検証の例としては、総務省による「PRISM事業」があり、信号機への5G基地局設置や信号機の集中制御化の促進が検討された。同事業はすでに終了したものの、信号機から収集したデータの活用に対する社会ニーズや社会価値創出、社会課題解決などへの有効性の検証などの必要性が認識され、同コンソーシアムの設立に至った。

産学官と国民連携で

 特別顧問を務める慶應義塾大学 村井純氏は、DXには体制とルール、技術が必要と説明。その上で「産学官に国民を含めた4者でそれらを開拓する必要がある、そのためのコンソーシアム」と語り「日本から世界の(社会課題解決の)モデルケース」となるプロジェクトになればと期待感を示した。

 同コンソーシアム 副会長の慶應義塾大学 植原啓介氏は「標準化団体による仕様を社会実装し、価値を生んでいくことが使命」と語り「さまざまな分野の方に協力してもらい、社会のデジタル化を強固にしていきたい」とコメントした。

5G基地局設置は早期に実現を

 同コンソーシアム 幹事会議長のNEC 早川晶氏は、コンソーシアムの活動について説明。

 交差点などの公共空間の柱の高度化による柔軟性。拡張性を持ったDX基盤の整備に向けた検討・整理といった柱の高度化、交通管制・信号情報配信の活用に向けた検討・整理、交差点などのデジタル化により得られるデータのり活用ニーズに対応するサービス・アプリケーション高度化、プラットフォーム基盤の整備に向けた検討などを実施していくという。

 技術検討委員長の住友電気工業 石丸弘之氏は、コンソーシアムの今後の活動予定について説明。設立当初は、委員とメンバーともに募集を行いつつ、必要に応じて会合を実施。2022年度中には、ニーズの確認、関連施策などの調査、省庁や自治体との調整を含めて事業モデル案やロードマップ案を作成する。また、具体的な技術としても、要件の洗い出しや制度・運用上の課題の整理を目指す。

 同コンソーシアムで検討される技術には、信号機へ5G基地局を設置することによる5Gエリア拡大や交差点の映像を分析。倒れている人を検知するといったものから、自動車の自動運転、人出や交通量のデータ収集などさまざまなものが挙げられている。

 石丸氏は同コンソーシアムで目指す新サービス・アプリケーションについては「自動運転は期待値の高い分野ではあるが、(そのほかの技術についても)かなり幅広に検討していきたいと考えている」と説明。具体的な社会実装時期は、ものによって異なるとしつつも信号機への5G基地局設置については、少なくとも来年度までに実施していきたい構えを見せた。

 交通管制のネットワーク化・信号情報の配信についても、早期の実現を目指したいとしたほか、データ利活用やデジタルツイン化などはそれらよりも中長期的な視点で進めていく必要があるとの見方を示した。

前列左から、JTOWER 田中敦史氏、慶應義塾大学 植原啓介氏、同 村井純氏、東京大学 大口敬氏、日本信号 流郷一宏氏、NEC 受川裕氏。後列左からNEC 長谷川隆氏、住友商事 梅田礼三氏、NEC 早川晶氏、本田技研工業 髙石秀明氏、住友電気工業 石丸弘之氏