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IIJ、23年3月期は増収増益でスタート――音声eSIM実現に向けドコモと協議

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は、2023年3月期第1四半期決算を発表した。売上高は581億9000万円で営業利益は50億2600万円。前年同期比で増収増益の滑り出しとなった。

左からIIJ 渡井氏、勝氏、鈴木氏

増収増益のスタート

 売上高は前年同期比で9.8%、営業利益は15.3%の増収増益で、当期利益としても43億9000万円と22年3月期の35億1000万円から25.2%の増益となっている。

 IIJ 専務取締役 CFOの渡井昭久氏は「計画通りの順調なスタートを切ることができた」と評価した。

 ネットワークサービスとシステムインテグレーションがそれぞれ増収したため、結果として粗利の増加につながり増益の結果をもたらした。ストック売上が収益全体の85.7%を占めており、堅調な業績向上に貢献。ネットワークサービス売上は228億6000万円で前年同期比9.4%増、一方でモバイルサービス売上としては103億7000万円で前年同期比2%減だった。

IIJmioは回線増

 個人向け携帯電話サービスの「IIJmio」の売上高は53億1000万円と、前年同期比で8000万円の減収だった。新プランへの移行が響いたかたちだが、回線数としては112万6000回線と前四半期比で3万6000回線の増だった。

 渡井氏によると、規模は小さいとしながらもeSIMによるバックアップ回線需要も徐々に増えつつあり、回線の増加につながった。2022年第4四半期と比較すると、回線数の伸びは倍増したという。

 また、法人モバイルでの売上は、26億3000万円で前年同期比2億9000万円増。回線数は145万7000回線だった。

 MVNE事業での売上は、24億3000万円で前年同期比4億2000万円の減収。MNO傘下のMVNOの移行の影響などがあり回線数は減少したが、一般事業者については増加傾向にあるとした。

質疑応答

――IIJmioが好調だが、楽天モバイルの値上げの影響は大きいのか? KDDIの通信障害の影響は?

勝氏
 楽天モバイルが0円プランを廃止したため、そこからの乗り換えがIIJに来ている。それがひとつの大きな理由だと思う。KDDIの通信障害により携帯電話(回線)をもうひとつ持ちたいという需要が出てきている。障害の翌日に8倍ほどeSIMが売られており、こういうニーズはこれからも強くなっていくと考えている。

――eSIM需要が強いということだが、IIJのeSIMはデータ専用。音声のeSIMに向けての見通しは?

勝氏
 音声は、ライトMVNOとしてできないかをNTTドコモと協議しているところ。いつできるかは不明だが、協議は開始している。

――KDDI通信障害によるIIJへの影響範囲は? 200円の返金を決めた理由は?

勝氏
 (IIJの回線は)ドコモのほうが相当多い。具体的な数は公表していないが、影響回線数はドコモよりは(KDDIのほうが)相当少ない。IIJのデータ通信料金はKDDIと比べると低いが、KDDIが200円を返金するということで足並みをそろえて、200円とした。

――お詫び返金による業績への影響は?

勝氏
 圧倒的にドコモ回線が多いので、返金についてはそれほどの影響はないと考えている。

――返金は独自の施策なのか? KDDIからの補償が原資となるということではないのか

勝氏
 我々としては、できるだけ早く実現したかった。そういう意味では独自の措置。ただしMVNO事業者として、KDDIとは補償について協議を始めている。

――KDDIの通信障害がIoTにも及んだことで、マルチキャリア対応やバックアップ強化へ動く可能性がある。今後、この辺のサービスの動きがどうなると考えているか?

勝氏
 複数のキャリアを組み合わせて使うことがますます傾向としては強くなっていくと思う。企業側から見れば、致命的であることもあるので、そういう意味ではデュアルSIMなどの(需要)傾向が強くなっていくのではないか。IIJにとっては追い風になると考えている。