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IIJ、増収増益の22年3月期――楽天モバイルの0円廃止に勝氏「良い方向への第一歩」

 インターネットイニシアティブ(IIJ)は13日、2022年3月期決算を発表した。売上高は2263億4000万円、営業利益は235億5000万円。当期利益は156億7000万円で前年同期と比較して増収増益の結果となった。

左からIIJ CFO 渡井昭久氏、同 Co-CEO&COO 勝栄二郎氏、Co-CEO 鈴木幸一氏

法人向け、ネットワークサービスが好調

 増減収の要因としては、モバイル事業が回線数は伸びたものの単価の低下により前年同期比68億1000万円の減。ネットワークサービスでは81億9000万円の増、システムインテグレーションが120億5000万円の増という結果だった。

 営業利益としては、ネットワークサービスが前年同期比84億5000万円ともっとも大きく伸長しており、全体の成長を牽引した。うち、2/3程度は法人ビジネスによるもので、インターネット接続サービスやIIJモバイル、アウトソーシングサービスのうち、セキュリティ、WANサービス(閉域網ネットワークサービス)が伸びたという。

 全体の売上に占める、月額サービスによる部分は全体の83%で、安定的に成長していると説明。このうち、モバイルサービスを除いた法人向けの売上の伸び率は前年同期比で10.3%と大きく伸びているという。

IIJmio

 個人向けモバイル事業のIIJmioの売上は203億7000万円。22年3月期末時点での回線数は109万回線だった。インターネットイニシアティブ 専務取締役CFOの渡井昭久氏は「全体として非常に順調に推移している」と評価した。

 IIJmio回線数は、前四半期比で1万7000回線増で、売上額は前年同期比で26億3000万円の減。「新プランを確実に増やしており、四半期ごとに純増基調をつくれている」という。同社が2021年4月に開始した「ギガプラン」の契約者数は66万7000に達している。

 そのほか、法人モバイルもネットワークカメラや決済端末など、IoT需要の増加で137万4000回線(前四半期比5万4000回線増)となり、売上としては102億6000万円で前年同期比で24億5000万円増だった。

 ほかのMVNO事業者へ回線を提供する、MVNE事業の回線数は103万3000回線。回線数としては、上期で停滞したものの第3四半期から見て伸びに転じており、渡井氏は卸価格の改定により、MVNO事業者が新プランを出したことで同社事業の伸びにつながったとした。

 一方で、モバイル事業全体では407億2000万円と前年同期比で14.3%の減収となった。これについて、渡井氏はMVNE事業者への卸価格やIIJmioでの新プランによる値下げの影響が大きいと説明。

 同氏によれば、2023年3月期も同様の傾向が続くとしており、法人事業では伸びるとしつつもモバイル事業全体では、22年3月期に比べて減収要因は収まってくるが、大きな伸長は厳しいとの見方を示した。同社では、2023年3月期には前年度以上となる5万6000回線増を目標とする。

 IIJの資料によれば、2022年度のNTTドコモが提示したモバイルデータ接続料は、2万327円で前年同期比28.4%減となっている。

質疑応答

――楽天モバイルが0円プランを廃止したが、IIJmioの追い風になるか?

勝氏
 0円でサービスを提供することに無理があったのではないか。その意味では良い方向への第一歩と思う。具体的な中身を見なければ分からないが、新しい方向としてはいいのではないか。

――元総務相審議官の谷脇氏を副社長に迎える狙いは? IIJが元官僚を幹部に迎える意味を教えて欲しい

鈴木氏
 官僚経験者だからということではなく、この分野で優秀な方が少ない。日本のインターネットは政府が主導してこなかった。米国では国防総省が主体となり冷戦下で、政府が中心になり国防上や米国が覇権をとるという明快な目標があった。

 日本の場合は「おもしろそう」と思った人たちが集まってやってきた。日本国政府もアメリカの政策について理解が浅く遅れを取っていた。谷脇氏は非常に優秀。将来、ITをどう捉えていくかという見識を持っている方がIIJに加わることは重要と考えている。

――0円だから楽天モバイルという方が一定数いたと考えられる。IIJmioへの影響はあるか?

勝氏
 (13日の)午前中に発表されたばかりなので、具体的な中身がわからずなんとも言えない。一時、IIJmioやMVNO事業者の競争環境が厳しかった。2021年の4月に発表したIIJmioの「ギガプラン」で純増に転じ、競争力が増したと思っている。我々が回線を提供する、MVNO事業者も新プランを発表しており、(MVNO業界の)競争力は増してきている。

 そういう意味では、以前は楽天モバイルは非常に強敵だったと思っているが、我々としても競争力を回復していると考えている。

――iPhoneなどの大幅な値引きが行われていた。大手が料金も値下げする中で脅威だったと考えられるが、影響はあったのか?

勝氏
 我々は、割引の許される範囲の中で割り引いている。その中でMNP転入者にiPhoneなどを1円で売り出すのは競争条件上問題ではないかと総務省などに報告している。