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安定した通信を実現する「フットプリント固定技術」の実証、災害対策やHAPSに活用見込む――ソフトバンクなど

 ソフトバンクとHAPSモバイルは、ハンドオーバーを減らし安定した通信を実現する「フットプリント固定技術」を採用した高高度係留気球基地局の実証実験に成功した。

実験で使用された気球

 ソフトバンクとHAPSモバイルが開発している、シリンダー形状の多素子フェーズドアレイアンテナ「シリンダーアンテナ」が搭載された気球「ST-Flex」で実証に成功した。

 フットプリント固定技術は、シリンダーアンテナのデジタル制御で送受信信号の振幅や位相を制御する「デジタルビームフォーミング制御」を活用し、機体の旋回に合わせて電波を発射する方向をコントロール。機体の動きによる通信エリアの移動で生じるハンドオーバーをなくし、安定した通信を実現する。

シリンダーアンテナ

 実証に用いられた気球は、ソフトバンクとアルタエロスエナジーズが開発したもの。3本の係留索をAI制御しており、従来よりも高い最大高度305mでも安定して係留でき、より広いエリアに通信を提供できるほか、自動操縦での人員コスト削減に寄与し、最大で60kgの通信機器を搭載できるという。

 北海道の大樹町多目的航空公園での実証実験では、「ST-Flex」を高度249mに係留して通信した。見通しの良い環境では最大で数十kmの通信エリアを確保でき、風で気球の位置や姿勢が変化しても、端末側のハンドオーバーは確認できず、受信レベルの変動も抑えられ、安定した通信が可能だったという。

 HAPSなどの航空機を活用したプラットフォームでは、機体の旋回で通信エリアが移動するため、ハンドオーバーが発生し通信品質が不安定になるという課題があった。今回、実証に成功したフットプリント固定技術でより安定した通信が期待できる。

 ソフトバンクでは、今回の実証実験を通して得たノウハウやデータを災害時の通信エリア復旧やHAPSの通信プラットフォーム構築への活用を検討しているという。