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メタバースでアバターの肖像権やアイテムの所有権はどうなる? KDDIなどが課題整理のガイドラインを発表

 KDDIや東急、みずほリサーチ&テクノロジーズ、渋谷未来デザインによる団体「バーチャルシティコンソーシアム」は、「バーチャルシティガイドライン Ver.1」を策定した。

 ガイドラインという名前だが、その内容は「こうあるべき」というよりも、「今はこれが課題」という論点を整理する内容に仕上げられた。

 たとえば、メタバース内で所有するアイテムについて、現状の法律では、いわゆる所有権がないという。そこでガイドラインではメタバースでの所有権の法整備をもとめ、課題を提言している。このほか、ユーザーが作り出すコンテンツの著作権がどう保護されるのか、そしてアバターの保護や肖像権、パブリシティ権のあり方などにも触れている。そして、都市連動型メタバースについては、現実の街並みの再現性や改変についての考え方などがまとめられている。

バーチャルシティガイドラインの主な内容

 これまでKDDIや渋谷未来デザインなどでは、渋谷を仮想空間上に再現した、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」を構築。さまざまなイベントを実施しており、累計100万人がイベントを体験してきた。このバーチャル渋谷は、実在する都市を再現した、ということで、現実の利害関係者と連携した上で構築されたもので、「都市連動型メタバース」のひとつとされている。

 ガイドラインの策定にあたり、経済産業省と渋谷区がオブザーバーとなり、バーチャル渋谷の運営などから、注意すべき点、検討する項目を絞り込んできた。「バーチャルシティガイドライン」は、バーチャル渋谷での知見をもとにしたものであり、都市連動型メタバースを運営するための考え方を整理し、課題をあらためて提起する内容となっている。

セカンドライフとこれからのメタバースの違い

 仮想空間のサービスとして、「セカンドライフ」のようなサービスも提供されてきたが、KDDI事業創造本部の中馬和彦副本部長は、セカンドライフのようなサービスをメタバース以前の存在とした上で、2017年ごろから広がっている、ゲーム内の仮想空間のようなサービスは「プレメタバース」として、セカンドライフとの違いが「マルチデバイス対応」「超多人数同時接続」にあると指摘。先述した「バーチャル渋谷」も、フォートナイトなどと同じく「プレメタバースにあたる」(中馬氏)。

 その上で、2020年代の広がりが期待されるメタバースは、さらに「別の仮想環境との相互運用性」「仮想環境内での自律的経済圏が存在する」という2つが新たな要素になる、と解説する。

 中馬氏は、遠くない未来に「リアルよりもメタバースで過ごす時間が長くなる時代がやってくる」との予測を示す。そして、メタバース内でのアイテムの製造や売買、所有権などを含めた権利関係がまだまだ整理されていない現状を紹介する。

 メタバースでは、ユーザーがさまざまなコンテンツを作り出すことが期待されており、だからこそ、その権利をいかに保護するかが重要なポイントになる。今後、さらに表現力が向上していくと、リアルと変わらない臨場感が実現する。さらには権利を保護し、収益化につながれば自律的な経済圏になることも期待されている。

 中馬氏は、「渋谷は国際都市。まず日本国内でルールを作るということだが、相互接続性は国外を含めてオープンに議論したい」と述べ、国内外のメタバースプラットフォームの存在を踏まえた議論が必要との見方を示す。

 今回のガイドラインは、課題が整理された内容。あわせて「バーチャルシティ宣言」も発表。宣言とガイドラインを踏まえ、2022年度には、フェーズ2として、今回の課題提起を踏まえて「あるべき姿」を提言するVer.2のガイドラインの策定をめざす。