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楽天グループ21年通期の売上は1.7兆円も赤字1947億円、三木谷氏「楽天モバイルの赤字は22年1Qがピーク」

楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏

 楽天グループは、2021年12月期の決算を発表した。連結業績では、売上収益は前年比+15.5%の1兆6817億5700万円、営業利益は-1947億2600万円となった。第4四半期の売上収益は前年同期比+15.9%の4812億円、Non-GAAP 営業利益は前年比-528億円の-761億円となった。楽天モバイルに関する先行投資がかさんだのが主な要因としている。

 本記事では、主にモバイル関連事業の内容を取り上げる。

【お詫びと訂正】
 記事初出時、タイトルおよび第1段落で「営業収益」を営業利益と記述しておりました。お詫びして訂正いたします。

人口カバー率96%達成、赤字のピークは22年1Qを見込む

 楽天モバイルの4G通信サービスの人口カバー率は、4日時点で96%に到達した。

 楽天モバイル代表取締役社長の山田 善久氏は、「総務省へ提出した開設計画と比較し、約4年の前倒しとなっており、完全仮想化技術や協力会社様とのパートナーシップや楽天の総力を結集して取り組んだことで、成し遂げられた成果であると考えています」とコメント。基地局を構成する機器についても、エリアやユースケースに応じたさまざまなプロダクトを活用し、「OpenRANとしては世界でも有数のネットワークを構築しました」(山田氏)という。

 これらの自社エリア拡大に伴い、楽天回線での通信料の割合が継続的に上昇しているという。

 さらに、楽天モバイルのMNOとMVNO回線合計の契約数は550万契約を突破、中でも他社からのMNPによる乗換えユーザーの割合が増加していると山田氏は説明する。

 山田氏によると、「MNPによる契約は、平均データ利用量、ARPU、LTVが高く、解約率が低い傾向」であるとし、MNP転入割合が増えることは、業績向上にとって重要だという。

 今期のモバイル事業を振り返ると、課金対象ユーザーの増加や端末売上の増加、楽天シンフォニーの売上計上などで前四半期比で増収(653億400万円、前年同期比+47.8%)となったものの、自社エリア拡大に伴う減価償却費やネットワーク関連費用の増加により営業損失は前年同期比-421億円の-1186億5300万円となった。

 三木谷氏は、今後はローミングエリアの自社回線切り替えによる費用削減や、課金ユーザーの増加により、2022年第1四半期を赤字のピークと予想。第2四半期以降の回復を見込んでいるとした。

楽天シンフォニー、AT&Tも興味を示す

 楽天シンフォニーについて、楽天モバイル代表取締役副社長兼CTOのタレック・アミン氏は、「RCP」(Rakuten Communication Platform)に関するドイツのキャリア1&1との契約成立(2021年8月)や楽天モバイルの4G人口カバー率96%到達などで「順調に進捗している」とコメント。次世代オンサイトプラットフォーム「Symware」も注目を集めているという。

 楽天シンフォニーについてアミン氏は「イノベーティブな3社を完全子会社化し、2000人規模にまで体制を強化」し、2000人の従業員の90%は研究開発に従事していると説明。

 2022年は、日本とドイツでの事業に注力し、ほかの国にも事業展開していくとした。「Symware」についても、複数のクライアントに展開していくといい、複数の契約獲得を目指す考えを示した。

 楽天シンフォニーの事業に関しては、楽天グループ代表取締役会長兼社長の三木谷 浩史氏も「AT&Tやテレフォニカとか、いろいろな会社でいろいろな話をさせていただいてますけど、彼らはいろんなOTTのサービスをやっていきたいという願望はあるんですよね」と興味を示している複数社の実名を挙げ、「プラットフォームを採用していただくと共にですね、いわゆるサービスの提供もしていって、彼らと一緒に伸びていくっていうことをやっていきたいなっていうふうに思っております」とコメントした。

5Gへの今後のビジョン

三木谷氏

 三木谷氏は、楽天モバイルの5G通信について「Sub-6やミリ波などの帯域をいかにうまくやっていくかということが重要で大きなポイント」としたうえで「他社との大きな違いは、楽天モバイルがほとんど自分たちのテクノロジーでコントロールしていること。ビームフォーミングやMassiveMIMOなどをソフトウェアで管理することでターゲッティングされた接続ができるようになる」と説明。

 楽天モバイルでは、全国に4000のエッジコンピューティングセンターを日本に開設したといい、ほとんど遅延のない最高のネットワーク品質を目指せるとの考えを示した。

 また、完全仮想化により「万が一の時は、AIが判断してネットワークの構成を変えるとか、キャパシティが足りなくなってきたらAIが自動でキャパシティを増やすとかが実現できてかつコストを下げてエンドユーザーに還元できる」とコメントした。

 楽天モバイルの5G通信サービスの展開について三木谷氏は「他社さんと遜色ない周波数帯域を獲得しておりますし、東名阪においてもフルパワーで5Gが使えるようになります」とし、今後の契約数増加に伴うキャパシティ増にも耐えられる考えを示した。

今後の通信エリア整備計画

 三木谷氏は、今後の通信エリアの整備について「99%以上までは自前のネットワークで建てていく」とした。「(人口カバー率)の99%台の中盤から後半」(三木谷氏)となる過疎地や遠隔地に対しては、ASTの低軌道衛星を活用した非地上ネットワーク(NTN、Non Terrestrial Network)によるエリアカバーを目指すとした。

 NTNでは地上での基地局整備が困難な離島や、災害時に地上の基地局の代替手段として活用が期待されている一方、キャパシティが小さい課題もある。三木谷氏は、駅前やスタジアムなどキャパシティが大きい部分は、5Gのミリ波などでカバー。三木谷氏は「大阪駅前で、楽天モバイルの5Gを体感していただければ驚愕してもらえると思う」と5Gによる通信容量に自信を見せ、臨機応変に対応していく姿勢を示した。

 なお、プラチナバンド取得については「現状取得しているバンドでも智恵と工夫でかなりカバーができている」としながらも、今後の方針については明言を避けた。

2021年通期決算ハイライト