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5G時代を支えるソリューション、シスコが描くこれからの開発戦略とは
2021年12月16日 00:00
シスコは、同社の5G開発戦略について、メディア向けに説明会を行った。
説明の場には、シスコシステムズ合同会社 専務執行役員の濱田義之氏、シスコシステムズ合同会社 執行役員 サービスプロバイダー アーキテクチャ事業担当の高橋敦氏、シスコシステムズ合同会社 情報通信産業事業統括 SE マネジャーの山田 欣樹氏ら3名が登壇した。
5G戦略の4つの重要ポイント
高橋氏は、「5Gコア」「5G IoTサービス」「5Gプライベートネットワーク」「固定無線アクセス」の4つをシスコの5G開発戦略における重要なポイントと位置づける。
シスコではこれまでも、モバイルコアを開発してきたが、今後の5G時代では設計を見直し、ひとつのコアで複数の世代のネットワークを収容することで、4Gなどからのスムーズな世代交代や5G SAへの移行をサポートするという。
また、ローカル5Gについても「シンプル・セキュア・シームレス」なネットワークを構築できるソリューション開発に注力しているという。ユーザーとの対話の中で、ローカル5G、Wi-Fi6、有線含めたマルチアクセスな環境で共通のポリシーとアイデンティティを適用した環境がローカル5Gの普及に必須とされているとした。
こうしたことに加えて、マルチアクセスにおけるセキュリティの担保も重要で、サービスプロバイダー、アーキテクチャー、エンタープライズネットワーキング、セキュリティを統合したソリューションの開発が進められているという。
環境に配慮したソリューション
同時に「Beyond 5G=6Gといわれるが、サステナビリティも重要」という高橋氏。2050年にはインターネット関連の設備が世界の電力の20%を消費する可能性があるという調査結果もあるといい、同社の5Gショーケースでもたびたび議題に上がると明かす。
シスコでは2040年に温室効果ガス実質ゼロに向けて、「再生可能エネルギーの利用加速」「循環型経済の推進」「革新的な製品開発」の3つを目標に掲げる。
その中でも「革新的な製品開発」においては「イノベーション」「先端テクノロジー」「アーキテクチャー変革」の3つの観点で環境保護を意識した製品をリリースするとしている。
同社がすでに展開している「Cisco Silicon One」では11種類のシリーズを展開。同製品では、設計をイチから見直し、性能や機能、効率の観点で革新的とイノベーションをアピールする。
同チップを採用するルーター「Cisco 8201-32FH」では、消費電力はさることながら、ラックユニット占有数も1/48と省スペース化・軽量化されており圧倒的な効率化を実現したと高橋氏。
また、従来は伝送装置が統合された形だったため、サービスを展開するごとに伝送装置を配備する必要があり、コストなどの問題があったが、現在ではマルチベンダー化が進んでおり、シスコではトランスポンダーを小型化することで、省スペース・省電力を実現した。これらはアカシアの買収などによる技術の進歩という。
一方、IPと伝送の両レイヤーを統合することで、複雑かつ冗長なネットワークをシンプル化する「Routed Optical Networking」という新アーキテクチャーを推し進める。これにより、装置点数を大幅に削減し、IPoEoF(IP+Optical)のソリューションやE2EでのIP化により自動化を適用しやすくなるという。運用コストや設備投資を削減でき、結果的にCO2の削減にもつなげられると高橋氏は語った。
こうした最新技術を導入した製品は同社の5Gショーケースで実際に見ることができるようになっている。
5Gの活用を支えるソリューション
同社の5Gショーケースでは、その取組みとして15のソリューションを用意。パートナー数としてはインテルやNEC、パナソニックなど12の企業と手を結んでおり、ローカル5Gにおける免許も取得している。
シスコでは、5Gの基地局を自社で展開していないものの、ミリ波では米JMA Wireless、SUb6帯では米エアスパン製の機器を使用し、ローカル5Gにおいてミリ波とSub6の両方の商用免許を取得している。
アプリケーションやユースケースにより最適な周波数で運用するとしており、ミリ波とSub6の両方でのテストにも対応。Sub6では、100MHz幅を2つ免許取得しており、周波数をまたいだハンドオーバーや2つのシステムを同時に検証もできるという。
将来的には2つの帯域幅を活用したキャリアアグリゲーション(CA)の検証なども可能になるという。
さらに5Gショーケースにおいては、パナソニックとともに映像や音声の伝送がどこからでもできる、5Gを活用した放送のIP化ソリューション、NECとはローカル5G分野で製造や交通などさまざまな領域で検証を進めているという。
5Gショーケースの中で用意されるソリューションの一例としては、フルスタックオブザーバビリティがある。複数のソリューションを組み合わせて実現しているもので、アプリケーションからネットワーク、インフラ、セキュリティまですべてをリアルタイムで監視。さらに、問題を特定してそれらを解決するところまで可能という。
また、攻撃される箇所の増加やその特定の困難さなど5G特有のセキュリティ面においても対応するソリューションを用意。シスコが提唱する「Security by Design」では、ネットワークの要件定義から実際の運用段階まですべての場面でセキュリティを組み込むことで、セキュリティレベルの向上や運用負荷の低減につなげられるとしている。
このほか、自宅や会社、どこにいてもチャットを介してネットワーク運用が可能になる「ChatOps」も紹介。運用に関わる人員すべてがチャットでつなげ、作業記録などはチャットに残る。
何らかの障害が発生した場合、現場にいるエンジニアと解決手段をチャットで共有し、遠隔の人員と共同で解決に取り組むといった運用が可能になる。
山田氏は「5Gを活用したデジタル変革には、高速通信だけでは不十分。セキュリティ、可視化、自動化は不可欠。さまざまなユースケース創出とそれに合わせたアプリケーション開発も同時に進める必要がある」と語る。
同社では、5GショーケースのE2Eの5G環境を用いてパートナーや顧客とともに新しい価値創出を目指すとしている。