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携帯料金値下げの影響は260億円、インフラ整備へ影響の可能性も――ソフトバンク、22年3月期Q2は増収減益

 ソフトバンクは、2022年3月期第2四半期決算を発表した。売上高は2兆7242億円で前年同期比12%増、営業利益は5708億円で3%減益の増収減益となった。

 発表の場には、ソフトバンク 代表取締役社長執行役員兼CEOの宮川潤一氏が登壇した。発表の中で、宮川氏からは、携帯電話料金の値下げによるインフラ整備への影響についても言及された。

携帯料金値下げ、品質は?

 政府主導の携帯電話料金の値下げ政策により、ソフトバンクでは半期で260億円の影響が出たという。

 総務省の資料によれば、日本(東京)の携帯電話料金は、ロンドンやニューヨークなど世界6都市と比較して、第2位の安さになったという。これに対して宮川氏は「通信品質を考慮すれば、トップの安さだ」と指摘する。

ソフトバンク 宮川氏

 海外では、日本よりも安い料金で通信サービスが提供される一方、日本ほどエリア整備がなされていなかったり、エリア内でも接続が途切れたりといった例が散見される。

 携帯電話料金は低廉化したものの今後、日本においても海外同様に「安い代わりに不安定」という環境になってしまうのだろうか。

 宮川氏は「(さらなる低廉化が)日本の目指す方向というのであれば、それについていく」としながらも、「業界を引っ張る諸外国はそういう流れにはない」と日本との乖離を指摘する。

 「これから日本が通信の開発で遅れてしまうのでは」と懸念を示した。「4Gまで整備してきたインフラと5Gは、数も使用される電力量も異なる。そういう構造物のことを考えると、5Gを4Gよりも安い料金で支えられるか心配。しかし工夫してやっていきたい」とした。

値下げによる基地局整備への影響

 通信料金の値下げによって、今後の基地局整備への影響は起きないのだろうか。宮川氏は「ちょっと影響するかもしれないな、と最近思っている」と明かす。

 「どのくらいの数(基地局)を建てて、どんな運営体制でやるのかということを開設計画で出している。プランの料金の計算もしており、収益のバランスが崩れるのであれば、何か(のコスト)を抑える必要がある」とコメント。

 5Gの立ち上げ期である今は「一番厳しい、悩ましい時期」とも語り、ほかの分野でリストラなど、ネットワーク設計に影響のないかたちでコスト削減できることは徹底的にやっているとした上で「(値下げ圧が)5年も10年も続くようなら、インフラ整備の在り方は、どこかで見直さなくてはいけないと思う」と中長期的な見通しを示した。

 加えて、ネットワークの維持には、24時間365日体制でネットワーク監視や故障した機械を場合によっては現地まで出向いて直すなど、運用のコストがかかることを紹介。

 その上で「こうしたコストをまかなえなくなるような、料金プランに踏み込むつもりはない。ユーザーにも維持コストは公平に負担してもらい、そのうえで(データ通信など)使用量に応じた料金の違いがあるというのがベスト」と、新しい料金体系のためのトラフィック分析をしていることなども明かしつつ、今後の料金プランを考えていきたいとした。

増収減益の第2四半期

 2022年3月期第2四半期の売上高は、2兆7242億円。前年同期の2兆4284億円から2958億円増、12%増という結果で半期ベースとしては過去最高の数字となった。ヤフーやLINE、コンシューマーなどすべてのセグメントにおいて増収を果たしており、宮川氏は「LINEの子会社化や携帯端末の販売が回復した」と要因について述べた。

 一方で、営業利益は3%減の5708億円となったことに対して「期初目標の9750億円に対しては60%まで来ている」として通期目標の達成は可能と自信を覗かせる。

 減益の原因としては、携帯電話料金の値下げがあり、上期の合計で260億円減となったという。前年は半額サポートのソフトバンク負担額の見積りの変更により一過性の収益があったこともあり、コンシューマーセグメントでは前年同期比でおよそ400億円減益となった。

 ヤフー・LINEと法人セグメントは、いずれも増益となったが、コンシューマーの減益をカバーするには至らなかった。

 純利益としては、3073億円と前年同期比で2%の減益だった。宮川氏は「通期目標の5000億円に対してはおよそ60%。達成可能な圏内に入ってきた。まずまずだと思っている」と語った。

通信料下がるも端末売り上げ回復

 コンシューマー事業の売上高は、1兆3784億円。携帯電話料金の値下げによる影響を受けたものの、端末の売り上げが回復したことにより前年同期比で6%増収となったという。

 営業利益としては、3647億円。通信料の値下げに加えて、半額サポートのソフトバンク負担額を修正した前年の反動を受けた結果となった。

 スマートフォンの累計契約数は、6%増の2650万契約。宮川氏によるとワイモバイルが成長をけん引した。5G契約については3ブランド合わせて1000万超と、1/3以上が5Gユーザーとなった。

ソリューションが大きく伸長

 法人事業では、前年同期比で5%の増収となり、特にソリューションが10%増と大きく伸びた。宮川氏は「半導体不足でiPadが手に入りづらく、モバイルの獲得に影響が出ている」と世界的な半導体不足の影響が出ていることを語った。

 一方で、基地局整備などには今のところ影響しておらず「以前はすぐに入った部品の入手に時間がかかる」程度という。ただし、この状況がこれからも続くとなると、将来的にはなんらかの影響が出る可能性があるとも明らかにした。

 ソリューションの継続収入は、21%増。法人事業は順調で宮川氏はまだまだ成長できるとコメント。

 ヤフーとLINEは、LINEの子会社化やメディア事業の好調により35%増収。営業利益は1155億円で、LINEの子会社化で120億円ほどの費用が発生したものの、18%の増益となった。EC取扱高は昨年、新型コロナ渦による特需で大きく伸びた分野だが、今期はそれをさらに上回り10%増だった。

PayPayは順調に成長

 PayPayのユーザー数は4300万人超。PayPayのスーパーアプリ化で重要と位置づけられる、決済回数は半期で16.6億回と前年同期比で81%増となった。

 宮川氏によると、10月の決済回数だけで3億回を超えているという。取扱高は半期の合計で2兆4000億円で前年同期比68%増だった。

 10月から始まった事業者側の手数料有料化で2割ほどの事業者が解約するのではといったことが言われていたが、宮川氏によると解約率は全体の0.1%。月平均決済取扱高から見ても、全体の4000億円に対して解約による影響はおよそ4億円と、全体的な影響は軽微だとした。

 加入することで、顧客分析のツールや決済手数料の低減などの措置が受けられる「PayPayマイストア」の立ち上がりは順調という。加盟店の総数は非公開としつつ、10月時点での累計申込数は、8月から比べて12倍に成長したという。

質疑応答

――先日、NTTドコモで障害があった。3年前のソフトバンクでの障害時には他社とローミングできればという話もあったが?

宮川氏
 ドコモでの障害は、(他社でも)起こりうる物だと思う。IoTデバイスが原因だったが、ローミングしようとすると、コスト的に厳しいのではと思う。コア側で起こる障害は、同じミラーを持ちましょうというのは難しい。キャリア同士の情報交換で高めていくことが大事かと思う。

――5GのSAはなぜ「Air ターミナル」から始まったのか? 今後はどう広がっていくのか

宮川氏
 たまたまAirが作れたタイミング。チップセットの関係が大きい。スマートフォンのSA対応は、チップが順調に出てきたら春までにはやりたい。SAのコアネットワークはこれで出来上がったので、今後はいろいろなデバイスに横展開していきたい。

――NTTドコモとNTTコミュニケーションズが事実上統合するが、法人事業での影響はあるのか。ソフトバンクの強みは?

宮川氏
 正直に言って「超脅威」。もともと大きすぎるといって分割したものが、再び同じ形に戻りつつある。時代の流れで仕方ないということだが、競争政策においてはある程度のハンデがあり、議論があってもよかったのではないか。

 しかしもう始まったこと。お客さんの前ではバトルだが、健全な競争であるのでウェルカムだ。日本が成長するには、DXで新たな構造づくりに突入する。そこにはいろいろな英知があってもいい。ソフトバンクだけではなく、NTTにも頑張ってもらって、切磋琢磨する中で新しいビジネスモデルが生まれる環境があるべき姿。

 ソフトバンクの強みなら、早期から取り組んできたので、ある程度の知見があるつもり。ソフトバンクビジョンファンドでもより最先端を行く会社があり、そういったビジネスモデルと融合しながらやっていける。我々も負けないよう頑張っていく。

――ドコモはMVNOを店頭で扱う。基本0円のpovo2.0もあるが、LINEMOの方向性を教えてほしい。

宮川氏
 単体の数字は非開示としたい。LINEMOは月額990円のプランを出してから勢いづいている。どう育てていくかというと、ワイモバイルもあり正直ウケはそちらのほうがいい。ワイモバイルをもっと強化していきたい。

――法人事業が好調とのことだが、どの分野なのか?

宮川氏
 引き合いが多いのは、RPAなど作業自動化支援。加えて、LINEがグループに入ったのが大きく、LINEを経由して自社サービスで顧客と直接やりとりするという、LINEをインターフェイスにしたいというのも多い。

――半導体不足で基地局整備に影響は?

宮川氏
 致命的な不足はない。発注したものが入るタイミングがずいぶん先になるなど少しづつ影響が見えつつある。作業が止まったということはないが、その影が見え始めたなというところ。細かな部品などが入らなくなってくるなどだが、実際に実害があるのはiPadが入らないくらいだと思っている。

 今年だけで言えば、本当にiPadぐらい。かなり前から(部品を)発注していたので影響はない。iPhoneも必要な分の在庫は確保した。こんな状況が続けば来年くらいでどこかで影響が出るかもしれないが今のところは大丈夫。

――コンシューマー事業は端末販売の増加ということだが、コロナ渦だった去年の反動か?

宮川氏
 その通り。

――ワイモバイルが好調というが、減収要因にもなると思うが、ソフトバンクへのアップセルの動きは?

宮川氏
 双方向の動きがあるが、ソフトバンクからワイモバイルやLINEMOへという方が多い。5Gユーザーはトラフィックが多くなるので、使われる量の中で定額制を選ぶ人がソフトバンクへ戻ってくる。

 本当は1:1で回ってもらえると減益とならないが、今はワイモバイル側へ移動する方が多い。

――PayPayの黒字化の見通しは?

宮川氏
 いつとは言えないが数年以内には確実に黒字化できる。決済手数料有料化も達成し、ある程度獲得コストとの見合い。コントロールしようと思えばできるところの近くには来ている。もう少し拡大路線をとってから、しっかりとした回収時期に入りたい。この1年間でなにかあるかということはなく、まだ攻めていく。数年先には黒字化に向かって進みたい。

――PayPayは決済手数料がメインの収益源となるのか?

宮川氏
 決済手数料はある程度はメインになる。アリペイの場合はローンもあるが。マイストアでは店舗のデジタル化ということで、違ったキャンペーンや販促に対しての利益などが見込まれ、複合でやっていく。

――携帯電話市場の流動性が上がっているが、今後の見通しは?

宮川氏
 解約率は3キャリアとも上がっている。こうした状況が続くのではと思っているが、ソフトバンクとしては純増にこだわっていく。市場ではとことんユーザーを獲得できるよう頑張っていく。

 5G時代には、スマートフォンのほかにIoTデバイスも増えていく。法人のみではなくコンシューマーにも出てくると思う。スマホを中心としたものもあれば、ネットワークダイレクトのものも。そうなるとスマートフォンの累積ユーザー数などとは違う開示方法が必要になると思う。

 新しいマーケットは、SAが整備されてサービスの組み立てが変わってくる。スマートフォンでも接続優先順位をつけたり、トラフィックを出さないデバイスが出てきたりとそういう工夫で新しい料金・サービスを作っていきたい。

 一度下げた料金はなかなか上げづらい。ワイモバイルからソフトバンクに戻ってくるユーザーもいるが、トラフィックの多い5Gデバイスなので自然と無制限プランに近いサービスにまた寄ってくる時代になる。リッチコンテンツをしっかり出すことでマーケットが広がる。

 まずは5Gのネットワークをしっかり作る。今年中には全キャリアでSAが準備され、スライシングなど新しいサービスも出る。2年~3年で全く違う料金モデルと思うので手遅れることなくリードしていきたい。